パラリンピックへ1年、港町と世界をつなぎ30年、兵庫・神戸パラスイマーとの街づくりのいま
光州(韓国)での世界水泳200mと400mの自由形で瀬戸大也(ANA)が2冠を達成し盛り上がった7月27〜28日の週末の2日間、神戸ポートアイランドスポーツセンター(兵庫県神戸市)で第88回兵庫県水泳競技大会が開催され、パラリンピックを目指す強化指定選手のうち肢体不自由、視覚障害の18人も出場していた。
2日間の競技で、1日目・100m自由形で窪田幸太(S8・日本体育大)が、2日目・50m自由形で石浦智美(S11・伊藤忠丸紅鉄鋼)が日本記録を更新した。
港町神戸には、パラアスリートと歩んできた30年の歴史がある。
兵庫・神戸地域での障害者水泳の普及は、1989年アジアパラ競技大会(当時はフェスピックと呼ばれた)の開催に始まる。当時すでに2000年シドニー、2004年アテネパラリンピックが見えており、神戸に強いパラ水泳チームを作ろうと、アテネパラリンピックより4大会連続出場のベテラン山田拓朗(NTTドコモ)も所属する神戸楽泳会が発足した。
また4年前(2015年)、IPC(国際パラリンピック委員会)水泳部門の地域戦略で、地域大会の記録を公認していくパイロット事業の提案を受け、神戸市民水泳大会がIPC公認大会となる初めての事例をつくった。
パラ水泳強化指定選手を交えた、兵庫県水泳選手権大会
神戸市民水泳大会への参加はあったが県レベルの大会でのパラスイマーの出場は今回が初めて。会場は大勢の(健常者)スイマーでひしめく中、世界選手権へ向かうパラスイマーに注目が集まったが、選手同士は通常の大会と変わらない準備でのぞんでいた。またスタッフもスムーズな競技進行をとり行った。
大会は予選・決勝と2部形式で行われるなか、パラ選手は、予選では希望する種目に出場、決勝は独自ルールが設けられ、50mと100mの自由型のみ、WPS(ワールドパラスイミング)ランキング8位内のタイムをクリアした選手たちで行われた。
2020東京パラリンピックまで1年となり、9月にロンドンでのパラ水泳世界選手権を控える選手たちにとっては本番前最後の公式大会で世界選手権を意識した泳ぎが期待された。
そのほか若手パラアスリートの強化のためには、練習での泳ぎこみも必要だが、公式大会数が圧倒的に少ない状況を補うための機会となった。
地元兵庫出身で、アテネパラリンピックより4大会連続出場のベテラン山田拓朗はあまりいいタイムではなかった。「タイムは良くなかったですが、いくつかの課題を試すことができた。東京に向けてフォームの改造に挑戦しています」とマイペースにのぞんでいた。
世界選手権に出場する14名の選手は、9月1日からロンドン郊外のバジルドンでの合宿を経て、会場入りする。
3月に行われた世界選手権選考会で落選し国内での練習を続ける選手は、9月の世界選手権後すぐに開催されるジャパンパラ水泳競技大会(横浜)を目指している。世界の記録が更新された直後の大会であり、より世界と近い挑戦ができる。
知的障害の選手も含め、パラリンピックを目指す選手たちは、来月の世界選手権、来年3月の静岡で日本代表へ最後の挑戦が控えている。
<参考>
(*)フェスピック(FESPIC GAMES):現在の「アジアパラ競技大会」が引き継いだ、アジア地域の障害者スポーツの総合競技大会。欧米に比べて障害者アスリートの競技機会が限られていたアジア・太平洋地域でもパラリンピックをと、故・中村裕博士(大分中村病院)が提唱し1975〜2006年まで9大会がアジア各地で開催された。
記事:「神戸から、募集中!あなたの町でIPC公認・市民水泳大会を開催しませんか?」
http://www.paraphoto.org/?p=5175
日本身体障がい者水泳連盟・ホームページ
http://paraswim.jp/
取材協力:ニコンイメージングジャパン、日本障がい者水泳連盟