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東京2020パラリンピックへの顔ぶれが、強さをみせた〜世界パラトライアスロン横浜大会〜

佐々木延江国際障害者スポーツ写真連絡協議会パラフォト代表
5月18日(土)ITU主催の横浜パラトライアスロンが開催された。 写真・大藪順子

 パラトライアスロンは、オリンピックの距離である51.5km(ロング)の半分の距離にあたる25.75km(スプリント/スイム750メートル・バイク20km・ラン5km)で行われる。5月18日(土)、早朝、横浜パラトライアスロンが開催された。この日は、エリート男女のレースもあり1日で19万5千人の観客がレース観戦に訪れた。

 6時50分に気温23度、水温21度でレースがスタート。5月のやわらかな緑が夏に向けて深まる山下公園。

 仮設の桟橋に造られたスタート地点から男女70名の障害のある選手が、9つのクラスに分かれてスタートした。

<男子>

ステファン・ダニエルがトップでフィニッシュ!

ランパートをトップで走るステファン・ダニエル(カナダ) 写真・山下元気
ランパートをトップで走るステファン・ダニエル(カナダ) 写真・山下元気

 最初にフィニッシュしたのは、カナダのステファン・ダニエル(PTS5-M)、58分54秒のタイムだった。右手に先天性の障害があり左手よりも握力が弱く、長さも短い。クリス・ハマー(アメリカ)、アレクサンダー・ヤルチェック(ロシア)ら過去にチャンピオンを経験した強力なライバルを押しのけて2度目の横浜での優勝となった。

 同じクラスの佐藤圭一(エイベックスグループホールディングス)は、7人中5位となった。冬はクロスカントリースキー、バイアスロンの選手として2種目の現役パラリンピアンである。

パラ水泳のチャンピオン、全盲のスナイダーは銅メダル

ブラッド・スナイダー(アメリカ)スイムからのトランジッション 写真・木田光重
ブラッド・スナイダー(アメリカ)スイムからのトランジッション 写真・木田光重

 男子視覚障害のクラスではスペイン、オーストラリアの強豪に続いて、アメリカのパラ水泳のチャンピオンでもあるブラッド・スナイダー(B1)が3位に入賞した。水泳とトライアスロンで東京2020への出場を目指している。「トライアスロンでは難しいかもしれないが、水泳では金メダルを狙える」と話していた。

 日本の視覚障害のクラス中澤隆(B2/サイネオス・ヘルス・タカラエムシー・インターフィールド・青山トライアスロン倶楽部)は11位だった。

車椅子はスキパーが全クラストップ

ヘールト・スキパー(オランダ) 写真・山下元気
ヘールト・スキパー(オランダ) 写真・山下元気

 全てのクラスを通じてタイムでもっとも速かったのは、58分24秒、座位のヘールト・スキパー(オランダ)だった。ハンドバイクと、車椅子レーサーを使用するのがこのクラスである。

 同じクラスの木村潤平(社会福祉法人ひまわり福祉会)は、パラ水泳からの転向でリオパラリンピックにトライアスリートとして出場、挑戦を続けている。ペナルティを取られたが「課題はあるが、失格ではない。順位も落としていない」と次への挑戦へ目を向けていた。

日本の宇田秀生が銅メダル!

PTS4の表彰式で(宇田秀生) 写真・木田光重
PTS4の表彰式で(宇田秀生) 写真・木田光重

 立位のカテゴリーでトップでフィニッシュしたダニエルより1つ重い障害になるPTS4クラスで、フランスのアレクシ・アンカンコン、中国の王家超と競い、日本の宇田秀生(PTS4-M/NTT東日本・NTT西日本)が日本人唯一の銅メダルを獲得した。バイクでは3人の中でトップタイム(30分)だった。

 「パフォーマンスは満足できるものだった。スイムでは自分のペースを守って、周りをあまり気にしないよう心がけました。バイクは前にいいターゲットがいたので目標にできました。ランは自分のペースを落とさずに、力を出し切って表彰台を目指しました。後半、足が回ってきました。沿道での家族の声が励みになりました」と話していた。

 立位・大腿切断(PTS2-W)の中山賢史朗(東京ガスパイプライン)は5位だった。

<女子>

視覚障害はスサーナ・ロドリゲスが強さ見せ、スペイン、アベック優勝!

スサーナ・ロドリゲスとガイドによるフィニッシュシーン。 撮影・木田光重
スサーナ・ロドリゲスとガイドによるフィニッシュシーン。 撮影・木田光重

 ブラインドはスペインチームのアベック優勝となった。スサーナ・ロドリゲスがオーストラリアのケイティ・ケリーを破る好タイムで優勝した。

 日本の円尾敦子(本オラクル・グンゼスポーツ)は7人中6位だった。

絶対女王・シーリー、ミスをカバーして優勝!

アリサ・シーリー(PTS2-W/アメリカ)のフィニッシュシーン 写真・佐々木理佐
アリサ・シーリー(PTS2-W/アメリカ)のフィニッシュシーン 写真・佐々木理佐

 東京2020パラリンピックへの選考レースを控え、女子では立位で最も障害の重いPTS2-Wのアリサ・シーリー(アメリカ)が、スイムでの進路ミスをカバーしながら絶対女王をキープした。

 「スイムではコースから外れてしまった。ランでは間違ったところで曲がってしまい、無駄な距離を走って戻ることになってしまった。しっかりと改善していかなくてはいけない。東京2020の目標は、リオの金メダルを守ることだ。日々そのために取り組んでいる。それが私のモチベーションであり、ゴールだ。それを実現させられるよう堅く決意している」と話してくれた。

 ライバル、同じアメリカのベテラン、メリッサ・ストックウェルは5位。日本の秦由加子(チームブリヂストン)は6位だった。

 車椅子の女子は陸上から転向した土田和歌子(八千代工業)がペナルティにより順位をおとし(4位で)3連覇を逃した。

 障害PTS4は2人が出場した女子で谷真海(サントリー)が2位に終わり、3連覇を逃した。

(取材協力:丸山裕理、潮田耕一、佐々木理佐、そうとめよしえ)

国際障害者スポーツ写真連絡協議会パラフォト代表

パラスポーツを伝えるファンのメディア「パラフォト」(国際障害者スポーツ写真連絡協議会)代表。2000年シドニー大会から夏・冬のパラリンピックをNPOメディアのチームで取材。パラアスリートの感性や現地観戦・交流によるインスピレーションでパラスポーツの街づくりが進むことを願っている。

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