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世界をつなぐ、ローポインター!「High8」予選会が開催される!

佐々木延江国際障害者スポーツ写真連絡協議会パラフォト代表
群馬マジックVS川崎WSCローポインターどうしのボールの取り合い

 ハンブルグで世界選手権が始まった車いすバスケットボール。8月18日、世界に通用するローポインターの強化、育成を担う「High8選手権大会 関東ブロック予選会」が横浜市(横浜ラポール)で開催された。

 18回目の全国大会を来年1月に控え、定着した活動だが、実は、日本にしかないユニークな取り組みでもある。

 車いすバスケットボールで最も重要なルールは、障害の程度でクラス分けし、障害に応じたポイント(=持ち点)による5人のプレーヤーの合計が最高14.0ポイントになるようチームを組み、戦略を立てること。

 つまり切断やポリオなどの障害の軽い選手(ハイポインター)と、脊髄損傷などで腹筋を使うことができない重度障害の選手(ローポインター)がともに出場。5人の組み合わせが勝ち敗けの鍵を握る。

 それに対し「High8」は、チームの合計ポイントを最高8ポイントまでにしたバスケットボール。男子は1.0~2.5点のローポインターの選手が対象。男女混合、女子のみのチームもある(女子については本来の持ち点から0.5ポイントマイナスしてチーム編成できるというルールになっている)。

女子はハイポインターの山崎佳菜子(4.5)が出場できる。川崎WSCと群馬マジックの試合。
女子はハイポインターの山崎佳菜子(4.5)が出場できる。川崎WSCと群馬マジックの試合。

 「全員に光ってほしい。上手い選手は、自然に光が当たる。そうじゃない選手にも光を当てることで、日本の選手全体の強化をしたい」と、大会を準備する関東車椅子バスケットボール連盟の高橋俊一郎会長は話す。

 「High8」の選手はハイポインターのようなパワフルな動きはできない。試合の中では地味な存在である。しかし、ローポインターを試合に入れることは車いすバスケットボールの大事なルールであり、いかにその力を発揮することができるかが試合の要となる。

 本番の日本選手権は、来年1月26~27日に、初めて横浜ラポール(障害者スポーツセンター)を離れ、観客席のある藤沢市の体育館で開催される。

ローポインターにとっても2020東京は大チャンス!

 2020東京パラリンピック開催が決まり、パラ競技全般への普及が進んでいる。

 一見マニアックなクラス別大会にみえる「High8選手権大会」だが、車いすバスケットボールが元々脊髄損傷者のスポーツとして始まった(当初の車いすバスケットボールには切断者は含まれていなかった)ことを考えれば、競技を確立したローポインターの存在と可能性を見つめ直す素晴らしい機会であることは明らかである。

 ぜひ、アジア地域、世界などにも広めて、さらにローポインターが活躍する可能性に挑戦してほしい。

シュートを狙うローポイントの選手。川崎WSCと群馬マジックの試合で
シュートを狙うローポイントの選手。川崎WSCと群馬マジックの試合で

 世界で活躍するHigh8出身選手と言えば、まず4大会連続でパラリンピック出場、北京パラリンピック日本選手団の主将を務めた・京谷和幸(1.0/千葉ホークス)がいる。現在、日本代表コーチとして世界選手権に帯同している。そして、藤井新悟(1.5/宮城MAX)、豊島英(2.0/宮城MAX)、永田裕幸(2.0/埼玉ライオンズ)、藤澤潔(2.0/埼玉ライオンズ)、鳥海連志(2.5/パラ神奈川SC)など、車いすバスケットボールに関心を持って検索すれば数々の有名選手を見つけることができる。

ローポインターにとってバスケットまでの距離は遠い
ローポインターにとってバスケットまでの距離は遠い

 「High8選手権では、技術を習得するだけでなく、世界レベルの選手と一緒にプレーができ、モチベーションが高まる。励みにもなるところがいいと思う。試合を間近で見てくれたら、障害のある人も、観る人も考えが変わるように思います」と、高橋会長。

 高橋さん自身も例外ではなく、18歳で怪我をして、試合を見て、「すごい!」と思い、競技を始めたローポイントプレーヤーである。この日は出場がなく、運営やスポンサー企業の接待に奔走していた。ガッツのある戦いぶりを見せた「群馬マジック」に所属している。

高橋さん(前列左)が所属するクラブチーム「群馬マジック」試合を終えて
高橋さん(前列左)が所属するクラブチーム「群馬マジック」試合を終えて

 高橋さんと群馬マジックは、9月に高崎アリーナで開催される「日本選抜車椅子バスケットボール選手権大会」のホスト地域のチームとして出場する。今年で29回目を迎える大会で、日本選手権(トップリーグ)に出場できなかった次の16チームのための大会である。

 「日本選手権の次のチームがいる、ということを知らせたい!」と、高橋さんは話していた。選手目線での普及のために、大会を考案し、様ざまな形での車いすバスケットボールの魅力を伝えている。

国際障害者スポーツ写真連絡協議会パラフォト代表

パラスポーツを伝えるファンのメディア「パラフォト」(国際障害者スポーツ写真連絡協議会)代表。2000年シドニー大会から夏・冬のパラリンピックをNPOメディアのチームで取材。パラアスリートの感性や現地観戦・交流によるインスピレーションでパラスポーツの街づくりが進むことを願っている。

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