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ドバイ2017アジアユースパラを終えて(1)

佐々木延江国際障害者スポーツ写真連絡協議会パラフォト代表
パワーリフティング、銀メダル・奥山一輝と銅メダル・松崎泰治 (写真・山下元気)

 12月13日(水)にドバイで閉幕した「アジアユースパラ競技大会」は、30カ国から約800人の障害のある14歳〜23歳の選手が参加して、7つのパラ競技(陸上、水泳、バドミントン、卓球、パワーリフティング、ゴールボール、ボッチャ)で熱戦を繰りひろげた。

 主催は、APCアジアパラリンピック委員会とUAEアラブ首長国連邦パラリンピック委員会。

金メダル数で日本トップ!

最終日のメダルセレモニーで、水泳日本代表チーム (写真・山下元気)
最終日のメダルセレモニーで、水泳日本代表チーム (写真・山下元気)

 日本は、水泳チームが金メダル19を含む43のメダルを獲得する強さをみせ、合計金メダル43、銀メダル29、銅メダル26=合計98個のメダルを獲得。金メダルランキングではアジア1位、2020東京パラリンピックに向け、アジア各国に「日本パラユース」のパワーを証明した。

 パラリンピック陸上で長く日本選手の指導に携わってきた日本パラ陸連理事長・三井利仁氏は、

 「2020東京パラリンピックを契機に行われた選手発掘事業の成果が見えた大会だった。(日本は)各競技団体からも多くの選手がこの大会に参加した。まず、選手の数が揃うことが大事です。今回それが達成できたと思います。また、選手たちは他国の選手との物怖じしない交流ができていたように思います。以前と変わって良かった点に思う」と、パラユース日本代表の活躍について感想をくれた。

アジア全体での現状と課題

メダル総数1位のイラン選手団。参加選手数も116人と最も多くの選手が参加した。開会式で (写真・山下元気)
メダル総数1位のイラン選手団。参加選手数も116人と最も多くの選手が参加した。開会式で (写真・山下元気)

 メダル総数では、陸上とパワーリフティングで強さを見せたイランが金メダル39、銀メダル44、銅メダル35で合計118個のメダルを獲得して1位。2位が日本、3位は中国で、金メダル27、銀メダル9、銅メダル5で合計41だった。

 参加人数は、日本からは89名、イランからは116名の選手と多くの選手が出場した。

 開催国となったUAE(アラブ首長国連邦)は31人の選手で、金メダル9、銀メダル5、銅メダル3、総合ランキング10位だった。

 一方、参加30カ国のうち、選手数が数人から10人以下の国が14カ国。また、メダルを1つもとれなかった国は9カ国あった。

大会の裏側にあった、アジアの課題

APCアジアパラリンピック委員会会長Majid Rashed氏。閉会式で (写真・山下元気)
APCアジアパラリンピック委員会会長Majid Rashed氏。閉会式で (写真・山下元気)

 実は、今大会は当初バーレーンで開催される予定だった。しかし開催10ヶ月前に、競技規模に見合う宿舎の提供と競技場のバリアフリー対応が困難という事情により開催できないとわかり、UAEが、準備期間わずか6ヶ月という中でホスト国になることを決意したという。

 2009年東京大会からは4年ごとに行われてきたアジアユースパラゲームズが、ここにきて開催の危機に見舞われていた。結果、大幅な情報の遅れや不備、開会後の競技会場の変更などがあったが、大きな事故や混乱もなく、競技団体を中心に各競技が進行し、無事に閉幕を迎えた。

 閉会式を訪れた主催者の一人、APC理事・麻生学氏(日本)は、

 「当初予定していたバーレーンでの大会ができなくなり、ドバイでの開催となりました。準備期間が短く、参加国にはご迷惑をおかけしましたが、若い選手にとって大切な機会を継続できたことを、ありがたく思っています。アジアの競技、運営のレベルもまだまだで、これから伸びていくと思います」と、一つの困難を乗り切り、安堵した表情を浮かべていた。

日本からAPCメンバーに加わる(左から)水野正幸APC副会長、麻生学APC理事。メダルセレモニー会場で
日本からAPCメンバーに加わる(左から)水野正幸APC副会長、麻生学APC理事。メダルセレモニー会場で

 アジア地域のパラスポーツ大会は2010年から「アジアパラ競技大会」としてリニューアル、それまでの「極東南太平洋障害者スポーツアジア大会(フェスピック)」のオーストラリアや南太平洋地域を入れたAPCに枠組みを更新した。中東から日本までのAPC加盟43カ国は、様々な社会背景にある。IPC国際パラリンピック委員会の協力のもと、アジアでのパラリンピックムーブメントに取り組み始めたところである。

 日本は、1964年・東京パラリンピックから、アジアの障害者の社会参加と文化形成に向け地域の障害者スポーツを牽引する立場を担ってきた。現在はアジア社会も変化し、日本は独自の課題、何よりパラリンピックそのものの成長に直面している。2020年・再び東京で開催されるパラリンピックに向け、多様なアジア地域全体のパラスポーツを振興する機会を得ている。

IPC「プラウドパラリンピアン」アジア初開催!

パラリンピアンが伝えるワークショップ「Proud Paralympian」がアジアで初めて開催された (写真・山下元気)
パラリンピアンが伝えるワークショップ「Proud Paralympian」がアジアで初めて開催された (写真・山下元気)

 主催者、競技団体、そしてIPC国際パラリンピック委員会も、大会開催を機会にしたアジア社会への普及に力を注いでいた。IPCによるアスリート教育「Proud Paralympian」のワークショップがアジアで初めて開催された。

 このプログラムは障害のある選手が先生になり、アスリートとして思考や経験を高めていく。パラリンピックムーブメントの一環として行われ、ユース代表たちが参加し有意義な学びの時間を過ごしていた。

<参考>

ドバイ2017アジアユースパラゲームズ公式サイト

http://www.aypgdubai2017.com

国際障害者スポーツ写真連絡協議会パラフォト代表

パラスポーツを伝えるファンのメディア「パラフォト」(国際障害者スポーツ写真連絡協議会)代表。2000年シドニー大会から夏・冬のパラリンピックをNPOメディアのチームで取材。パラアスリートの感性や現地観戦・交流によるインスピレーションでパラスポーツの街づくりが進むことを願っている。

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