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ジョニー・デップ裁判:アンバー・ハード、娘の父親はイーロン・マスクか

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
アンバー・ハードとイーロン・マスク(写真:Splash/アフロ)

 ジョニー・デップとの離婚後にアンバー・ハードが授かった娘の父親は、イーロン・マスクだったのか?ヴァージニア州で行われている名誉毀損裁判で、デップのために証言する予定の人物が過去に書いた手紙に、そう示唆する記述があった。

 手紙は、ジェニファー・ハウエルという女性が、2020年7月25日、ハードの妹ウィットニー・ヘンリケスに宛てて書いたもの。西海岸時間午後12時58分とタイムスタンプが押されているところを見ると、メールで送ったものだろう。これはちょうど、デップが自分のことをDV男扱いしたイギリスのタブロイド紙に対して起こした名誉毀損裁判が、目の前に迫っていた時期。ヘンリケスが裁判で偽証をしないよう、強く勧める目的で書かれたものだ。

 デップとハードがカップルだった頃、ヘンリケスはハウエルが創設した非営利団体で働いており、姉妹のような関係だった。後に詳しく触れるが、イギリスでの裁判でも、今回のヴァージニア州での裁判でも、デップが所有するペントハウスの階段で起きたある出来事が焦点のひとつになっている。その出来事の後、ヘンリケスはペントハウスを出て行き(ヘンリケスもペントハウスのひとつに住まわせてもらっていた)、ハウエルの家に泊まらせてもらった。そうやって本人から直接何があったのかを聞いていたハウエルは、ヘンリケスが姉のために偽証をすることをなんとしても止めさせたいと思ったのだ。

 この手紙で、ハウエルは、デップの弁護士アダム・ウォルドマンに、自分の知ることを正直に話したと明かしている。ハードに不利な情報を弁護士に伝えたことを自覚しているハウエルは、手紙の中で「あなたが私を一生嫌い、二度と口をきいてくれないと思うと、すごく悲しくなります。私は、あなたを解放するために、あなたとの友情を犠牲にしようとしているのです」と意図を説明している。

 そしてハウエルは、ウォルドマンとの会話の中で証言したことをいくつか箇条書きにしたのだが、その中に、ハードとマスクの関係についてのことがあったのだ。たとえば、マスクはハードにテスラの車をくれたが(『Teslas』と『s』が付いているところを見ると、一台ではなく複数のようだ)、それらに盗聴器が付いているのをハードが発見したこと。「彼は暴力的で、自分をコントロールしたがるとアンバーが言っていると私は聞きました」と、ハウエルは書いている。その後に、「ふたりは一緒に作った受精卵の権利をめぐって法的に闘っているとも聞きました。彼はそれらを破棄したいのですが、アンバーは子供を産めるように保存したいのだそうです」とあるのだ。これらの会話は、2019年2月に、ヘンリケスの家で、ヘンリケスと彼女の母(ハードの母でもある)と話した時に出てきたことだそうだ。

 ハードが母になったとインスタグラムで公表したのは、2021年7月1日。赤ちゃんは女の子で、産まれたのはその3ヶ月前とのことだ。その投稿で、ハードは「4年前、私は子供を持つと決めました。自分のやり方でやろうと」「ベビーベッドを持つのに結婚指輪は必要ないというのが普通になる時が来ることを願っています」と書いている。

 このメッセージの中にはないが、後の報道で、代理母を使った出産だったことが明らかになった。しかし、精子提供者が誰だったのかは、今に至るまで秘密として通されてきている。もちろん、必ずしもハードがマスクと作った受精卵を使ったのかどうかの確証はないが、たしかに興味深い。

 ハウエルはまた、その時の会話で、ヘンリケスの母が「イーロンに比べればジョニーは天使、聖人だった」と述べていたのも覚えている。母はまた、「ジョニーとアンバーが復活すればいいのに」「あのふたりの間には真の愛がある」と語り、ハウエルを驚かせた。

母になったことを発表するハードのインスタグラム
母になったことを発表するハードのインスタグラム

階段の出来事、姉妹の言い分

 さて、本題であるべき「階段での出来事」に移ろう。これが起きたのは、2015年の3月。ハードによれば、これはハードがデップを殴った唯一の出来事。後にも先にもそれ1回で、彼女は妹を守るためにやった。

 ハードが証言するところによると、この日、ハードとデップは激しい喧嘩をし、ハードはデップから逃げて別のペントハウスに行き(デップは5つのペントハウスを所有しており、そのうち3つは上の階でつながっている)、階段の途中にいた。そこへデップが追いかけてきて、ハードの髪をつかんで顔を殴った。それを見たヘンリケスがデップを止めようと間に入ってくると、デップがヘンリケスにも暴力を振るおうとしたので、ハードはデップの顔を殴った。ハードは、「ケイト・モスと階段のことを思い出し、妹を階段から突き落とすのではないかと思ったから」と、デップがモスと付き合っていた頃にモスを階段から突き落とそうとしたと示唆することも言っている。(モスの名前が出たとたん、デップとデップの弁護士は『やった』という表情を見せた。ハードが名前を出してきたせいで、モスを証人として呼べる道が開けたからだ。モスとデップは別れた後も良い関係にあるという。アメリカ時間本日23日、今週、モスがデップのために証言することが確認された)。

 ヘンリケスの証言はこうだ。その時、ヘンリケスは階段の上のほうを向いて立っており、目の前にハードがいた。そこへ下からデップが上ってきて、ヘンリケスの背中を叩いた。それを見たハードが「私の妹をぶたないで」と言ってデップを殴った。するとデップは片手でハードの髪をつかみ、もう一方の手で顔を何度も殴った。駆けつけてきたデップのボディガードが止めに入り、ヘンリケスはハードと一緒に部屋に逃げ込んで、ドアに鍵をかけた。ドアの外から、デップが「お前らが大嫌いだ。どちらも嫌いだ」と叫びながら物に当たるのが聞こえてきた。

 デップが暴力を振るったという部分は共通するものの、彼女らの言い分は微妙に違う。

「ウィットニーはアンバーをとても恐れている」

 だが、ハウエルは、ヘンリケスへの手紙でこう書いているのだ。

「階段でのあの出来事は、あなたが私の家に引っ越してくるきっかけのひとつになりましたね。あなたは、私と(非営利団体で働く)スタッフに、『アンバーがジョニーに暴力を振るうのを止めようとして、危うく階段から落ちそうになった』と言いました。ジョニーがアンバーを殴った、あるいは彼が何らかの形でアンバーに危害を加えようとしたとは、一度も言っていません。もしもジョニーがアンバーに暴力を振るっていると聞いたなら、私はソーシャルワーカーか誰かに通報し、あなたのお姉さんを守ろうとしたでしょう」。

 手紙にはまた、ヘンリケスが彼女の家に引っ越してきた時、自分の父に「ウィットニーは姉をとても恐れている。だからわが家に住ませてあげることにした」と説明したともあった。

 ハウエルは、イギリス、ヴァージニア州、それぞれの裁判所に提出した供述書でも、階段の出来事について同じように述べている。さらに、一緒に住んでいる間、ヘンリケスが何度も「なぜジョニーはアンバーの暴力に耐えているのだろう」と言い、自分も子供の頃から姉の暴力に苦しめられてきたと語ったとも証言した。ハウエルはヘンリケスから、エレベーターの中でハードが赤ワインの入ったグラスをヘンリケスに投げつけてきたという話も聞いているという。

 最後の週を迎えたヴァージニア州での裁判で、ハウエルがいつ証人として呼ばれ、陪審員たちに自分の話を伝えることになるのかは、わかっていない。この後、デップの側からは、ハウエル、モスのほか、ワーナー・ブラザースのDC作品製作のプレジデントであるウォルター・ハマダ、ハードから寄付を約束されながら果たしてもらえないままでいるロサンゼルス子供病院の関係者が証言すると見られている。最終弁論は、アメリカ時間27日。残された時間がどんどん短くなっている。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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