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ジョニー・デップ裁判:アンバー・ハードとジェームズ・フランコの不倫疑惑は本当だった

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 ジョニー・デップの名誉毀損裁判で、現地時間17日、アンバー・ハードが再びデップの弁護士から数々の矛盾を突かれた。

 反対尋問を行ったのは、昨日と同じくカミーユ・ヴァスケス。ロングヘアに白いパンツスーツを着こなした彼女は、今日もまた、質問から逃げようとしたり、自分に都合の良いように答えようとしたりするハードに厳しく迫っている。

 反対尋問で、デップのチームが陪審員にハードが嘘つきだと証明しようとしたのは明らか。昨日は、デップの暴力で鼻がつぶれたという翌日にイベントに出席したハードの写真を見せ、デップからもらった700万ドルをハードは「寄付した」と言いつつしていなかったという事実を晒したヴァスケスは、今日、2012年のデップの誕生日にハードがプレゼントした大きなナイフを陪審員に対して見せた。2011年からデップに暴力を受けてきたと証言しているのに、プレゼントにナイフを贈るとは不自然ではないかというのだ。

 ジェームズ・フランコとの不倫疑惑も持ち出された。フランコとハードは2008年のコメディ映画「Pineapple Express」(日本未公開)で共演して友達になり、ハードがデップとカップルになってからも、「The Adderall Diaries」(日本未公開)で再共演した。「The Adderall〜」にふたりのロマンチックなシーンがあるとわかるとデップは激怒したとハードは証言している。

 ハードによれば、デップは何の根拠もなくハードの浮気を疑う嫉妬深い男。フランコをひどく嫌っていたし、「リリーのすべて」を撮影した時はエディ・レッドメインとの関係を疑ってきたと、ハードは述べている。それらの共演者と肉体関係にはないと、ハードは主張していた。

 ヴァスケスはまず、「2016年5月27日に(デップに対する)接近禁止命令を申請したのは、(デップと住んでいたL.A.のダウンタウンにある)ペントハウスの鍵を変えたかったからだとあなたは証言しましたね。覚えていらっしゃいますか?」とハードに質問。ハードがイエスと答えると、ヴァスケスは、「でも、実際のところ、あなたは5月22日に鍵を変えています。その日、ジェームズ・フランコを呼び寄せるためですね」と言ったのである。できるだけ冷静さを保ちながら、ハードが「ジェームズが来たのがいつだったか覚えていません」と言うと、ヴァスケスは、「では思い出させてあげましょう」と、ペントハウスのエレベーターのセキュリティビデオを再生した。

 そのビデオは、ハードがひとりでエレベーターに乗っているところから始まる。エレベーターの扉が開くと、彼女は出ていき、次に扉が開くと、ハードとフランコが入ってくる。最上階に到着するまでの間、ふたりはエレベーターの隅で親密そうに身を寄せ合い、扉が開くと一緒に出ていく。ビデオに押されたタイムスタンプは、2016年5月22日22時57分だ。

 この日、デップはペントハウスを出ていっており、その後すぐバンドのツアーでしばらくロサンゼルスを離れることになっていた。それを知っていてハードはフランコを家に引き込んだわけだが、万が一、デップが戻ってきても大丈夫なように、家の鍵を変えておいたのだろう。そこを突っ込まれると、ハードは、「私は彼のスケジュールをよく知りませんでした」とすっとぼけた。言うまでもないが、そのペントハウスの持ち主はデップである。ハードは、彼が買った、彼のおかげで住むことができている家で、こそこそと別の男と浮気をするために、家の持ち主の許可もなく勝手に鍵を変えたのだ。

ゴシップサイトに自らリーク?

 ヴァスケスはまた、ハードがメディアに情報をリークしていたことを示唆している。

 昨日までの証言で、外に出る時はいつもメイクをし、顔のあざを隠していたとハードは一貫して主張していた。ハードの弁護士も、女優であるハードがノーメイクで外を歩くことはないと語っている。だが、デップへの一時的接近禁止命令(TRO)を申請しに行く時にかぎって、ハードはあざのある顔で出かけ、わざわざその写真を撮っているのだ。

 証言の中で、ハードは、自分から離婚申請をした時になぜかマスコミに気づかれなかったと語っていた。「そのことにほっとしました」と言っていたものの、実は不満で、TROを申請する際には絶対にニュースになるよう計画をしたのではないかとヴァスケスは見る。ハードは前に「TROを申請する建物に入った時には誰もいなかったのに、出てきたら大勢のパパラッチが待ち伏せしていました」と証言していたが、ヴァスケスは、ハードがTROの申請になぜかパブリシストを連れて行ったことを指摘している。パブリシストは取材を受ける時に着いてくる人で、このような手続きには何の関係もない。

 さらにヴァスケスは、離婚申請をする前、ハードがデップに近い人を通じてデップに連絡を取ろうとしていた事実を出してきた。2016年の離婚時に行ったビデオでの証言の中で、ハードは「私が離婚申請をしたことを、彼に近い人を通じて私の口から知ってほしかったからです。TMZで知るんじゃなくて」と述べている。そのビデオを再生し終わると、ヴァスケスは、「ほら、バレましたよ」とでもいうような表情になった。TMZは、有力なゴシップサイト。デップがキッチンでキャビネットを激しく閉めるなど、荒々しい行動をしているビデオを掲載したのもこのサイトだ。ヴァスケスは、キッチンにいるデップのビデオをTMZに提供したのもハードだと確信しており、「あのビデオと引き換えにお金をもらったんですか?」と問い詰めた。もちろんハードはしらを切っている。

「アクアマン」の役を取れたのはデップのおかげか

 この裁判でも、それ以前にも、デップとハードが住んだペントハウスのスタッフや、DV通報を受けてやって来た警察官らは、ハードの顔にケガがあるのを目撃したことはないと繰り返し証言してきた。警察官は、彼女に暴力を受けた気配がまるでなく、彼女も捜査に協力しようとしないので、名刺だけ渡して立ち去ったと述べている(デップは、ハードの友人がこの通報をする前にウエストハリウッドにある家に向かっており、警察が来た時は不在だった)。

 反対尋問でヴァスケスはこのことにも触れ、「警察官はあなたの顔には一切ケガはなかったと証言しました。あなたもそれは聞きましたね」と言った。それを受けて、ハードは「警察官は、あれをケガだと受け取らなかったのです」と答えている。すると再びヴァスケスは「警察官は、あなたの顔に一切ケガはなかったと言っています」と言い、ハードもまた同じ答を繰り返した。このやりとりに、ヴァスケスは、やや苛立ちを見せていた。

ヴァスケスから反対尋問を受けるハード(CourtTV)
ヴァスケスから反対尋問を受けるハード(CourtTV)

 もうひとつ、ちょっと興味深いことに、デップ側はこの裁判で、ハードが「アクアマン」の役を取れたのはデップのおかげだということも匂わせている。ハードの弁護士からの反対尋問で、デップがハードのキャリアを阻害していたようなことを言われると、デップは「彼女がどうして『アクアマン』の役を取れたと思っているんですか」と苦笑いをしていた。そして今日はヴァスケスがハードに「『アクアマン』を取れたのはミスター・デップのおかげだったのですか」と聞いたのだ。その質問にハードはムッとした顔をし、「いいえ、私はオーディションを受けて自分で勝ち取ったのです」と言い張った。その後の自分の弁護士による尋問でも、ハードは、「アクアマン」のためには撮影の数ヶ月前から現地入りし、良い仕事をするために努力をしたのだと強調している。

 だが、来年公開予定の続編で、ハードのシーンは大幅に減らされた。ハードを「アクアマン」から追放しろというオンラインでの嘆願に署名が集まる中、ハードは、「完成作に自分が出ているのかどうかもわからない」と言っている。ハードによると、ギャラは1作目が100万ドル、2作目が200万ドルだったとのこと。今のハードに、このような大作の話はまるでない。この訴訟が起こってから、ハードはロレアルの広告キャンペーンにも使われなくなり、テレビドラマ「The Stand」の宣伝活動からも外された。この後に出る「Into the Fire」という低予算のインディーズ映画からは6万5,000ドルしかギャラをもらえなかったと、ハードは証言している。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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