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ジョニー・デップ裁判:高まるハードへの不支持。クリス・ロックもジョークのネタに

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
涙顔で証言をしたアンバー・ハードだが、世の中の支持は下がっている(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 ジョニー・デップとアンバー・ハードの名誉毀損裁判が後半に差しかかった。デップはすでに証言を終え、ハードはまだ証言の途中。だが、それぞれの言い分を聞いた今、世間ではデップへの支持がますます高まっている。

 ツイッターでは、「#JusticeForJohnnyDepp」(ジョニー・デップに正義を)に加え、「#AmberHeardIsAPsychopath」(アンバー・ハードは頭がおかしい)、「#AmberHeardIsALiar」(アンバー・ハードは嘘つきだ)などのハッシュタグがさかんに飛び交い、ハードを「アクアマン2」から降板させるオンラインの嘆願書に集まった署名の数は、今週、400万を超えた。「アクアマン」シリーズを製作配給するワーナー・ブラザースは依然、ハードを映画から削除する動きを見せていないものの、報道によると、彼女の出演シーンは10分ほどになったとのこと。また、あるデップのファンは、最近、ワーナー・ブラザースとジェームズ・ワン監督がハードのインスタグラムのフォローをやめたことを発見した。

 このファンはワンがハードをフォローしているのを見て、ワンに「この裁判で出てきたすべての証拠をしっかり見てほしい」とメッセージを送ったのだという。主演のジェイソン・モモアがまだハードをフォローしていることについて、このファンは「ジェイソンは優しすぎるから。でも彼もまもなく続いてくれることを願う。アンバー・ハードは毒」とツイート。また、別のファンは、ガル・ガドットもハードのフォローをやめたとツイートで報告している。

 一方、コメディアンのクリス・ロックは、ロンドンでのショーで、「女性を信じなきゃ。すべての女性を信じなきゃ。アンバー・ハード以外は」と、ハードをネタにした。続いて彼は、ハードがデップへの嫌がらせとして人間の糞をデップが寝る側のベッドの上に置いたことに触れ、「彼女は何(どんなドラッグ)をやっていたのかね?彼のベッドの上でうんこをしたんだよ。一度でも他人のベッドでうんこをしたら、その人はすべてにおいて有罪だ。でも、その後もあのふたりは一緒だったんだよね?セックスが相当に良かったのかな。僕も頭のおかしい女と付き合ったことがあるけど、これはすごいよ」と言っている。

ハードはPR会社をクビにしたばかり

 こんな世間の流れに、ハードは相当腹を立てているに違いない。彼女はつい2週間ほど前、メディアがデップ寄りの報道をすることに不満を覚え、それまで雇っていたPR会社と契約を解除し、新たな会社と契約を結んだばかりなのである。

 先に雇っていた会社プリシジョン・ストラテジーズは、オバマ元大統領のアドバイザーを務めた女性が創設した会社で、危機対策においては最も強いPR会社との評判がある。新たに雇ったシェーン・コミュニケーションズは、デップが元ビジネスマネージャーを訴訟した時、そのビジネスマネージャー側のPRをした人たち。つまり、デップに敵対した経験をもつ人たちだ。

 彼女がPR会社を変えたのは、ちょうど自分の証言が始まろうとしていた時。それまではデップが証言台で自分の側の話をし、やっと自分の話ができるという状況になったというのに、そのタイミングで自分を支えてくれた人たちを切り、新しい人に頼るというのは、大胆なことである。実際、裁判の途中でPR会社を変えるのは、かなり珍しいことらしい。だが、今の様子を見るかぎり、その人たちをもってしても、世の中の人を自分に従わせることは難しかったということだ。

ジョニー・デップとエレン・バーキンは、「ラスベガスをやっつけろ」の撮影中、体の関係を持った
ジョニー・デップとエレン・バーキンは、「ラスベガスをやっつけろ」の撮影中、体の関係を持った写真:REX/アフロ

 そんな中、ハードは、現地時間16日、証言台に戻る。この後、ハードのために証言することになっているのは、ハードの妹とエレン・バーキン。「ラスベガスをやっつけろ」で共演した時にデップと関係を持ったことがあるバーキンは、イギリスのタブロイド紙を相手にデップが起こした訴訟でも、付き合っていた頃、デップはよく怒鳴り、部屋でワインのボトルを投げたことがあったと述べた。ただし、自分に向けて投げたわけではなく、デップから暴力を受けたことは一度もないとバーキンは認めている。

 デップは、ワインのボトルを投げたことを否定。バーキンとは撮影期間中、何度か体の関係を持ったが、バーキンが正式な交際を望むのに対し、自分にはそのつもりがなかったため、彼女を怒らせたのだと述べている。相当に昔の恨みを忘れられないバーキンは、世間の意見を変えるような説得力のある証言を、ハードのためにしてあげられるだろうか。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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