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ジョニー・デップの裁判でわかったアンバー・ハードの金銭的要求と寄付の実態

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 ジョニー・デップとの離婚交渉で、アンバー・ハードは金銭面の要求をどんどん吊り上げていった。現地時間28日午後、デップとハードの名誉毀損裁判で証言台に立ったデップのビジネスマネージャー、エドワード・ホワイトが、舞台裏を語った。

 ホワイトは2016年からデップに資金面でのアドバイスを与え、さまざまな支払いの管理をしてきている。ホワイトがやってきた頃、デップの経済状態は本人も知らないほど悪化しており、未払い分の税金もあった。軌道修正をしてそこから抜け出すための手伝いをしたのがホワイトで、彼はハードの30歳の誕生日である2016年4月22日に行われたデップと会計士らのミーティングに参加したひとりでもある。このミーティングは午後7時半に始まり、9時半に終わったため、デップは午後8時半からのハードの誕生日パーティに遅れて行くことになった。それに対してハードは激怒し、デップは家を出ていって、次に会うまでにデップは離婚を決意している。

 離婚を切り出したのはデップだが、申請したのはハード。ハードは、デップがバンドのツアーでロサンゼルスを留守にしている間に離婚を申請し、その後、彼にDVを受けていたとして接近禁止命令を取得した。ハードを含め、女性に対して暴力をふるったことは一度もないと主張するデップは、徹底して闘うことを望んだが、弁護士チームに反対され、それからおよそ2ヶ月半後、デップがハードに700万ドルを払うことで解決をしている。しかし、ホワイトによると交渉の間、ハードの要求はどんどん吊り上がっていったのだという。

「最初は400万ドルでした。ですが、その次に500万ドルになり、550万ドルになって、700万ドルになりました。その後、弁護士代の50万ドルもミスター・デップに払ってほしいと言ってきました。それを受け入れると、今度は、結婚している間にできた共同の債務で、まだ支払われていないものを、全部ミスター・デップが払うようにと言ってきたのです。それは総額で1,350万ドルでした。さらに、その次には、それに対してかかる税金も全部ミスター・デップが払うようにと言ってきました」と、ホワイトは述べている。

 この条件で合意した後、ハードはマスコミに対し、700万ドルはすべてチャリティに寄付すると宣言した。寄付先はアメリカ自由人権協会(ACLU)とロサンゼルス子供病院で、それぞれに350万ドルを支払う。それはデップとの交渉の中でも出ていたことで、最初はデップが直接このふたつの寄付先に小切手を送ることになっていた。だが、途中からハードは、700万ドルを全部自分に払うようにと新たな要求をしてきたとホワイトは語る(それを無視してデップが直接、このふたつの寄付先に分割払いの1回目に当たる10万ドルの小切手を送ると、ハードと弁護士は激怒している)。

 ホワイトによると、デップは2017年に450万ドル、2018年頭に230万ドルをハードに払った。これに10万ドルの寄付2口が加わるので、デップは2018年頭までにハードに約束した700万ドルを払い終えたことになる。

 一方で、ACLUのCOOは、ハードからの寄付はまだ130万ドルしか届いていないと証言している。しかもそのうちの10万ドルはデップが直接払ったもので、50万ドルは当時ハードと付き合っていたイーロン・マスクがハードのために払ってあげたものだ。マスクはACLUに、ハードは今後10年かけて分割で払っていくと言ったが、ここ3年ほど新たな支払いは一切ないという。

ハードと別れてデップのワイン代はほぼゼロになった

 デップがホワイトの前に雇っていたビジネスマネージャーと契約を切り、訴訟を起こした時、プライベートジェットや不動産、ヨットなどにデップが多額のお金を費やしてきた事実が露呈された。その中には、デップが月に3万ドル(現在のレートでおよそ390万円)をワインに費やしているという事実も混じっていた。

 ホワイトも、デップとハードの離婚時には、ワイン専門店から16万ドルの請求書が残っていたと証言している。しかし、そこにはハードもかなり貢献していたようだ。ホワイトによると、ハードのお気に入りは、ヴェガ・シシリアという1本500ドルのワイン。ハードは誕生日パーティのためにこれを5本、さらに別のワインを8本注文したというのである(それでも足りなかったようで、ハードはミーティングを終えたデップに『ワインとマリファナを持ってきて』と頼んでいる)。ホワイトによれば、ハードと離婚して以来、デップのワイン代は「ほぼゼロになった」そうだ。クリスマス時期には少し買ったが、もう以前のようには飲まないのだと、彼は述べている。

写真:代表撮影/ロイター/アフロ

 そんなホワイトに対し、ハードの弁護士はアグレッシブな反対尋問を行った。質問をしておきながら、答えようとすると遮る弁護士のやり方にホワイトは明らかにフラストレーションを感じていたようだ。必死さが見え見えの様子には、デップも自分の弁護士らと顔を見合わせて苦笑していた(裁判を中継するCourt TVの司会者も、この弁護士の態度は陪審員にも不評を買うのではないかとコメントしている)。

 ハードの弁護士は、複数の不動産やヨットを買い、ハンター・トンプソンの遺灰をばら撒くために500万ドルを使ったのは、ハードではなくデップだと述べることで、デップも金遣いが荒かったということを示唆した。また、ホワイトに、「あなたはミスター・デップから1時間710ドルのギャラをもらっているのですね?」と尋ね、デップから高額なお金をもらっているから彼の味方をするのだと匂わせている。

 さらに彼は、ホワイトとデップのエージェントが交わしたテキストメッセージを証拠として見せた。そのやりとりの中で、エージェントは、デップが「パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊」のADR(アフレコ)に5時間も遅れてきたことへ不満を言っている。ハードの弁護士は、デップが「パイレーツ〜」シリーズを降板させられた原因は、今回の裁判の焦点となっている2018年のハードによる意見記事ではなく、それ以前からあったデップの行動の問題だと主張しており、それを支えるために出してきたものだと思われる。ハードの弁護士はまた、デップとハードの離婚にまつわる金銭面の話を出してきたホワイトに、「あなたは離婚専門弁護士ではありませんよね」とも尋ねた。それに対してホワイトは「いいえ、私は弁護士ではありません」と答えている。

 4月11日に始まったこの裁判は、今週で3週目を終えた。来週はいよいよハードによる証言が始まる。デップは終始落ち着いた態度で挑んだが、ハードが反対尋問にどう反応するのか注目される。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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