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リンジー・ローハンが婚約。かつての大人気女優は最近どうしていたのか

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
(写真:Splash/アフロ)

 かつて悪いニュースで世間を騒がせたリンジー・ローハン(35)に、朗報が訪れた。なんと、婚約したのだ。報告は、インスタグラム。「My love. My life. My family. My future. @bader. shammas #love」というメッセージとともに、婚約者と仲睦まじくしている4枚の写真が投稿され、そのどれにも婚約指輪がしっかり写っている。婚約者ベイダー・シャマスのインスタグラムアカウントは非公開だが、彼は、同じメッセージを伝えるローハンのツイートに、「君の目を見ている時、そこに愛を見る。君は僕のすべて。永遠に一緒」と返信、彼女への愛を確認した。

 シャマスはドバイ在住。職業は、クレディ・スイス証券のエグゼクティブ。ローハンは、ここ7年ほどドバイをベースにしてきている。昨年、インスタグラムに一度彼のことを「ボーイフレンド」と書いたが、すぐに削除するなど、ローハンはこの交際をほとんど秘密にしてきた。だが、今、晴れてふたりの関係を公にできる時がきたというわけだ。ツイッターには、「おめでとう」「嬉しくて泣いています」「お幸せに」など、多数の祝福コメントが寄せられている。豊かな才能に恵まれたにもかかわらずキャリアを凋落させてしまったローハンにようやく幸せが訪れたことを、人々は素直に喜んでいるのだろう。

大人気若手女優から「雇いたくても雇えない人」に

 この14年、ローハンは、批判されるか、哀れな目で見られるかのどちらかだった。将来有望な若手女優として大きな期待をされていただけに、それを無駄にしてしまった彼女に対する失望は大きかったのだ。

「フォーチュン・クッキー」(2003)、「ミーン・ガールズ」(2004)、「ハービー/機械じかけのキューピッド」(2005)などメジャースタジオの映画をヒットさせ、歌手としても2枚のアルバムをリリースしたのは、17歳から19歳にかけて。だが、その頃からパリス・ヒルトンやブリトニー・スピアーズらと夜遊びにふける様子がパパラッチされるようになり、2007年の「Georgia Rule」(日本未公開)の撮影中は、たびたび現場に来なかったり、遅刻したりするようになる。ローハンが疲労を理由に入院すると、この映画を製作するスタジオのエグゼクティブは激怒。ローハン本人とエージェントらに、「これまで病気やら何やらを遅刻や欠勤の言い訳にしてきたが、本当の理由は夜遊びだということくらいわかっている。無責任でプロの自覚がない」と、怒りの手紙を送った。

リンジー・ローハンとパリス・ヒルトン、2006年
リンジー・ローハンとパリス・ヒルトン、2006年写真:Splash/AFLO

 次に主演した「I Know Who Killed Me」(2007/日本未公開)では、撮影中に盲腸の手術で入院することになり、製作は中断。それは病気だからしかたがないにしても、退院後、彼女は依存症の治療に集中すると決め、いつ撮影を再開できるのかと現場を不安に陥れた。彼女が依存症の更生施設から通う形でなんとか映画は完成したが、そこまでして作られた映画は大コケし、ローハンは、最悪の映画、演技に贈られるラジー賞を受賞するはめに。それからもまた飲酒運転をやったり、その次に出演を決めていた映画もギリギリで降板したりした結果、ローハンは保険会社から嫌われ、映画の撮影に必要な保険をかけられない人になってしまう。すでに「あてにならない人」のレッテルを貼られていた彼女は、「たとえ雇いたいと思っても雇えない人」になってしまったのだ。

せっかくチャンスをくれた人をも裏切る

 そんな彼女は、活動の場をテレビに変え、ドラマへのゲスト出演やリアリティ番組の審査員など、細々と仕事を続ける。それらはかつての栄光とはほど遠く、フラストレーションを抱えたローハンは、2010年、雑誌のインタビューで「キャリアを取り戻したい。自分は才能のある女優だと知っているから」と語った。そこへ、あまりに低予算なため保険が不要だったポール・シュレイダー監督のインディーズ映画「ザ・ハリウッド」(2013)への主演オファーがかかる。彼女はこれを引き受けたが、ここでもまた、せっかくチャンスをくれたシュレイダーを裏切るような行動を取るのである。

 トラブルは、撮影前からスタート。大事なミーティングに「来ない」と言ったり、遅刻したりするローハンを見て、このキャスティングはみんなが言う通り間違いだったと気づいたシュレイダーは、彼女をクビに。だが、ローハンは彼の滞在するホテルに駆けつけてきて、廊下で泣きわめき、なんとか役を取り戻した。ここで彼女はシュレイダーにしっかり仕事をすると約束したのだが、いざ撮影が始まると、またもや遅刻の連続。朝6時に撮影が始まる前の夜に友人と酒を飲み、朝5時半まで遊んでいたこともある。最初からわかっていたセックスシーンで服を脱ぐのを嫌がり、シュレイダーが自分も裸になって「自分も脱ぐから君も脱いでくれ」と説得したこともあった。超低予算だと知っているはずなのに、寿司や日本酒やウォッカなど、友人とのランチ代600ドルをプロダクションの付けにしたこともあるという。

 そんな苦労を経て完成にこぎつけたこの映画は、残念ながら大失敗。北米興収はわずか5万6,000ドルで、全世界でも、この映画の製作予算とほぼ同じ27万ドルしか稼げなかった。この後、ローハンはホラー映画「シャドウワールド」に出演したが、2015年に撮影されたこの映画は、いくつもの理由で遅延に遅延を重ね、アメリカでは2019年にやっと公開されている。そしてこの時も、ほとんど何の話題にもなっていない。

 そんな中、ローハンは、ハリウッドを離れ、海外で活動するようになった。2014年にはロンドンで舞台劇に出演。2019年にはオーストラリアのコンテスト番組で審査員のひとりを務めている。彼女はまた、ギリシャに自分のナイトクラブをオープンし、新たなキャリアの突破口にしようとした。これはハリウッド復帰にも使えるはずだと見たローハンは、MTVで「Lindsay Lohan’s Beach Club」(2019)という、経営者としての姿を見せるリアリティ番組を開始。だが、視聴率はぱっとせず、1シーズンであっさり打ち切りとなる。このナイトクラブ自体も閉鎖となったが、その報道が出た時、ローハンは「クローズしたのではなく、移転のための場所を探しているところ」と述べている。

元婚約者とはDVが理由で破局

 キャリアでこういったことが起きている中で、ローハンは、いくつかの恋愛も経験してきた。人気絶頂にあったティーンの頃の恋人は、俳優のウィルマー・ヴェルデラマ。彼と別れた後には、ハードロックカフェの創業者の息子ハリー・モートンとの交際。トラブルメーカーと呼ばれるようになってからは、女性DJ、サマンサ・ロンソンと交際している。そして30歳だった2016年には、当時22 歳のロンドン在住のロシア人ミリオネアの御曹、エゴール・タラバソフと交際し、婚約までした。

エゴール・タラバソフと
エゴール・タラバソフと写真:Splash/アフロ

 しかし、まもなくふたりは破局。ローハンの言い分によると、どうやら原因は彼からのDVにもあるようだ。婚約解消直前には、ロンドンのアパートメントのバルコニーで、ローハンが「今、彼に暴力をふるわれたの!殺されそうになった!狂っている!もう愛していない!出ていって」と叫ぶ動画がメディアに出回っている。この時は、警察も呼ばれ、かなりの騒動になった。

 そんなことがあった後に出会ったのが、シャマスだ。一般人とあって情報はあまりないが、彼は南フロリダ大学とタンパ大学で学位を取得しているとのこと。ローハンとは2年前から交際しているようだ。その頃から、ローハンにはキャリア面でも良い動きが出ている。昨年は、実に久しぶりにシングルをリリースし、歌手の仕事に復帰した。この曲は、彼女にとって3枚目となるアルバムに収録される予定だという。さらに、現在は、これまた久しぶりに主演映画の撮影が進められている。クリスマスを舞台にしたロマンチックコメディで、ロケ場所はユタ州。タイトル未定のこの映画は、来年、Netflixが全世界配信する予定だ。

 この映画が配信される時、ローハンはすでに愛する人の妻となっているのだろうか。そして、この映画をきっかけに、彼女は映画女優としてもカムバックを果たすことになるのか。答は、その時が来るまで誰にもわからない。しかし、そうなることを願いたい。本当にいろいろあったとは言え、彼女に才能があることはたしかだし、新たなチャンスを得る権利はあるのだ。

 とにかく今は、婚約おめでとう!末長くお幸せに!

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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