役が欲しいなら、まずはコロナワクチンを打って。ハリウッドで近々、それが現実になるかもしれない。

 現在、ハリウッドの撮影現場で、ワクチン接種は必須とされていない。しかし、HBOをはじめとするいくつかの製作会社やプロデューサー組合は、自分たちの作品の現場に入る役者、クルーにワクチン接種済みであることを義務付けたいと願っており、映画俳優組合(SAG-AFTRA)に対し、その許可を求めているのである。撮影現場では、組合が認めた厳しい感染対策プロトコルが実施されているが、現場に入る人たち全員がワクチン接種済みである場合、ステップを多少簡略化することができる上、より安全になるというのが彼らの主張だ。ある作品の現場で接種済みを必須とする場合、これからワクチンを打つ人が十分間に合うだけの余裕を持って通告すること、ワクチンを打つ時間も労働時間内に入れること、また、そもそもワクチンが簡単に、すぐ打てる状況である時だけに必須とできることなどは当然条件に入れると、要請する側は述べている(現在、カリフォルニアでワクチンは十分足りていて、打ちたい人はいつでも打てるため、ここをクリアするのは難しくない)。

 俳優たちの間にもワクチン義務化を支持する人が多く、これを認めて欲しいという手紙がSAG-AFTRAのトップのもとに複数送られてきたという。Deadlineが紹介したそれらの手紙で、ある俳優は「私はワクチン必須に賛同です。接種するかどうかは個人的な選択とはいえ、CDC(アメリカ疫病予防管理センター)や医療コミュニティの言うことに従って接種を選択した人たちを危険にさらすことは間違っています」と書いている。

 SAG-AFTRA役員の間でも75%が接種を必須とすることを許可するほうに賛成したというが、現状はまだその先に進まないままでとどまったままだ。しかし、そんな中でロサンゼルスでは再び感染が拡大し、現地時間土曜日の深夜から、室内では再びマスク着用が義務づけられることになってしまった。新規感染者の99%以上がワクチンを受けていない人たちであることから、メディアや行政のコロナ対策リーダーらからは「一部の身勝手な人たちのせいで全員がまた犠牲を払うことになった」などのコメントが聞かれる。最近のこの状況の変化は、決断を後押しすることになるかもしれない。

映画祭やプレミアでもワクチン接種が参加条件に

 事実、ハリウッドがらみのイベントでは、ワクチン接種を義務付けるところが出てきている。9月に開催されるテリュライド映画祭では、参加者が事前にワクチン接種証明書を送ることを条件に含めた。証明書はパスに組み込まれ、会場に入ったり、シャトルに乗ったりするたびに毎回チェックされるという。また、Apple TV+の人気ドラマ「テッド・ラッソ:破天荒コーチがゆく」の第2シーズンのプレミア上映会では、参加者に、ワクチン接種証明書と陰性証明書両方を提出するように要請した。コロナのため昨年はヴァーチャルだったプライムタイム・エミー賞授賞式は、今年はいつも通りマイクロソフト・シアターで実施されるが、ここでも参加者にそれらの証明書を求めることになるのかどうか、今のところはわからない。

 一方で、筆者のような記者がハリウッドスターを取材する場合、現在は、ワクチン接種済みかどうかにかかわらず、全員がその都度コロナ検査を受けさせられる。それぞれのスタジオ内に検査会場があり、取材前にそこに行くように指示され、陰性だった場合のみ取材が許されるという流れだ。あるスタジオで受けた検査は15分で結果が出るもので、当日少し早めに行けばよかったが、別のスタジオでは前の日に行かなければならなかった。そうやって陰性であることがわかっていても、取材現場ではマスクを着用しないといけない。昨年3月のロックダウン以後すべてズームだった取材が、先月あたりからいよいよ対面に戻ってくるかと思われたのになかなか進まないのは、このひと手間も関係しているのではないかと思う。

 ハリウッドはリベラルで、ワクチン反対派は少数派だ。すでにワクチンを接種しているのに、頻繁にコロナ検査を受けさせられ、ソーシャルディスタンス、マスクを必要とされるプロトコルを、不便で窮屈と感じている人は少なくないだろう。まだワクチンを打たない人たちにどうやって打ってもらうかが収束の鍵と言われる中、ハリウッドが次のステップに移るのかが注目される。