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米大統領選:ハリソン・フォードとマーク・ハミルが反トランプCMに出演

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
(写真:REX/アフロ)

 米大統領選が、ついに当日を迎えた。ただし、「当日」とは言っても、事実上、今日は「投票締め切り日」だ。コロナ禍の今年は、郵便投票をした人が多いだけでなく、投票所も数日前から開いており、中には24時間オープンしていたところもある。全米では、今朝までにおよそ1億人が投票済み。テキサス州などでは、2016年の投票総数以上の票が、当日を待たずして投じられている。

 それでも、これからという人もたくさんいるし、反トランプか、トランプ支持かが明確に分かれる今年の場合、数少ないとは思うが、どちらに入れるか決めていない人もいる。そんな中、反トランプの共和党支持者らが設立したザ・リンカーン・プロジェクトは、最後の一押しとして、投票日前夜、2本のトランプ批判のコマーシャルを発表した。

 登場するのは、「スター・ウォーズ」の共演者ハリソン・フォードとマーク・ハミル。別々のCMへの出演で、フォードはナレーションのみ、ハミルは顔出しもする。フォードのCMは、アメリカで新型コロナ対策を担う国立アレルギー・感染症研究所所長アンソニー・ファウチ博士を強く支持するもの。ファウチ博士の語る科学的真実が自分にとって都合が悪いと、トランプとトランプ支持者が「彼をクビにする」と言っているのを批判するものだ。CMは、「ファウチ博士は、1984年から、アメリカ国民のため、懸命に、敬意を持って、尽力されてきました。レーガン、ブッシュ、クリントン、ブッシュ、オバマ、そして今、トランプのもとで」というフォードの言葉で始まる。そこで画面はトランプ支持者が「ファウチをクビにしろ!」と叫ぶ映像を見せ、次にトランプとファウチ博士の顔写真を並べて、「明日(11月3日)、私たちはこのうちひとりをクビにできます。決めるのはあなたです」と締めくくる。

 ハミルのCMは、不在者投票を無効にしようとするトランプの動きを批判するものだ。このCMで、ハミルは、遠く離れている人たちも投票ができるようにしたのは、選挙がそれだけ大事だからなのだと歴史を振り返る。だからこそ、今、アメリカ国民のために奉仕をしてくれている軍人たちの票を無効にすることは「絶対に許されない」と、彼は強く主張する。

 さらに、投票日の朝には、マーティン・シーンがナレーションを務めるCMが追加で発表された。タイトルは「One Day」で、まさにこの日のために制作されたもの。「おはようございます。今日は、これからのアメリカの人生の始まりの日です」で始まるそのCMで、シーンは、今日この日は「この国が、自分たちのことをどう感じるのかを変える日。電車の軌道を元に戻せる日。過去9ヶ月、過去4年を消し去ることはできなくても、これからやって来る数千日を正しい方向に持っていくことができる日」だと語り、アメリカ国民に投票を呼びかけている。

 これらのCMを制作したザ・リンカーン・プロジェクトは、憲法と民主主義を守るべく、あえて民主党の候補者を支持する目的で創設された団体だ。ホームページで、彼らは、「民主党の人たちとは、政治への考え方が、多くの面で異なることに変わりはありません。しかし、愛国心あるアメリカ人にとっての最大優先事項は憲法を守ること。どちらの党に所属しているかにかかわらず、憲法への誓いを捨てた候補者を当選させてはいけません。憲法を無視する共和党の候補者でなく、憲法を大事にする民主党の候補者が選ばれるよう努力するというのは、意義のあることです」と、使命を述べている。

 本日はまた、近年、トランプ叩きの絵を数多くツイートで発表してきたジム・キャリーも、新たな作品を公開して米国民に投票を呼びかけた。その絵には「Vote(投票しよう)」とあるだけで、どちらへとは描かれていないものの、「#BidenHarris」のハッシュタグが付けられている。

 これらのメッセージが、今、投票所に並んでいる人たちや、まだ家にいて投票するかどうか迷っている人たちの心をどれだけ揺さぶるかは不明だ。だが、彼らが心を決める時間は、まだ少なからず残っている。本日の投票受付締め切り時間は州によってまちまちで、激戦州では、フロリダとジョージアが午後7時、ペンシルバニアとミシガンが午後8時、アリゾナとミネソタが午後9時。最後に締め切るのは、そう重要ではないアラスカとハワイで、午後10時である。それだけでも長い1日だが、郵便投票の開票作業を明日まで始めないところもあり、さらにアラスカは今月10日になるまで不在者投票の開票作業を始めない。史上稀に見るヒートアップした大統領選は、本当の結果が出るまで長い時間がかかる、辛抱強さが求められる戦いになりそうだ。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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