「天気の子」がアメリカで公開。批評家はなんと言っているか?

「L.A. Times」は紙面の半分以上を割いて「天気の子」を紹介(筆者撮影)

 日本公開から半年を経て、「天気の子」が北米で公開になった。英語吹き替え版と、日本語に英語字幕付き版の2バージョンの公開で、1,000スクリーン程度と、まずまずの規模だ。批評家の評価は概ね良好で、rottentomatoes.comによると、94%が褒めている。「L.A. Times」も、17日(金)の新聞で、紙面の半分以上を割いてこの映画を紹介。見出しには、「若さの危険と希望:リアリティを見失うことなく、野心的な少年とマジカルな少女を巧みに描く」とある。

 この批評記事を書いたチャールズ・ソロモンによると、今作は、「新海誠がアニメ界における新世代のリーダーのひとりであることを確認する」ものだ。「君の名は。」と今作は、どちらも「ごくありきたりに見える若い人の恋を、現実的かつマジカルなジャーニーへと導き、さらに、社会的な問題にも触れる」。”問題”のひとつはもちろん地球温暖化だが、帆高と陽菜の姿からは、将来成功できる希望を持てない時代に生きる日本の若い人たちの現実が透けて見えるとも、ソロモンはいう。「そのような複雑な事柄を新海氏はファンタジーの中で扱い、人々に考えさせるのだ。それは、もっとお金をかけたアメリカのアニメ映画がなかなかやらないこと」と、彼は褒め称える。

「The Wall Street Journal」のジョー・モーゲンスターンは、「2016年の傑作『君の名は。』にも見たように、新海誠は若い恋を応援する。また、美しくミステリアスなビジュアルの達人でもある。今作で、彼は、日本映画の古い伝統をミックスすることもしてみせた」と、オリジナルの「ゴジラ」を引っ張り出してきた。その意味について、彼は、「1954年のあの映画で、モンスターは核兵器の危険のメタファーだった。『天気の子』で、天候は、ただ荒れているだけではない。(地球の)気候は崩壊しつつあり、日本全体とはいかなくても、少なくとも東京は、海に沈むかもしれない状態にあるのだ」と説明。“晴れ女”の陽菜が、地球のために自らを犠牲にしなければいけない悲劇的な存在であることなども含め、「テーマが多すぎてまとめきれていない」としながらも、全体的には「新鮮で、この問題に対する緊急性を感じさせる映画」であると評価する。

 ストーリーについては、「New York Times」のマノーラ・ダージスも、「複雑な上、必ずしも効果的でない形で話が行ったりきたりする」と指摘。とくにラスト近くのクライマックスは「日本のポップソングを流しつつ、運命や悲恋などいろいろ語ろうとして、ばらばらな感じ」だという。しかし、最後になって突然、気候の変化の危機が出てくることで、それまでの話に新たな、そしてはっきりした意味が出てくるとも述べている。

宮崎駿と比べるのはどちらに対しても失礼

 一方で、「Washington Post」のマーク・リーバーマンは、「君の名は。」のふたりに比べ、今作の主人公ふたりのキャラクターがやや弱いと指摘した。とくに陽菜は、「帆高の恋のお相手以上のものになっていない」し、彼女よりはしっかり描けている帆高に関しても、「なぜそこまでして故郷を出て行きたいのかを映画は説明しない」ことが、少し不満のようだ。それでも彼は、「『君の名は。』には劣るかもしれないが、とてもすばらしいことを達成した」とし、4つ星満点中、3つ星をあげている。「環境の危機をはっきりと伝えつつ、希望も感じさせる形で終わらせている」のも、彼が気に入った要素だ。

 さらに、リーバーマンは、新海氏が宮崎駿氏とたびたび比較されることについても述べ、「次のミヤザキと呼ぶのは、このふたりのどちらにとっても失礼」と警告をしている。彼に言わせれば、宮崎氏の強みは「無邪気さ、純粋さを掻き立てること」で、新海氏の場合は「内面の葛藤を描くこと」。新海氏はまだ46歳で、「その才能を我々に証明する時間が、まだまだたっぷり残っている」と、将来への期待を示して記事を終えた。

「天気の子」は、日本代表として今年のオスカーの国際長編映画部門(旧・外国語映画部門)にエントリーされたが、ノミネーション作品選考の前の段階で落選してしまっている。しかし、国際アニメーション映画協会が主催するアニー賞では、インディーズ長編映画部門にノミネートされた。この部門のほかの候補作は、「プロメア」、「若おかみは小学生!」、フランスの「失くした体」、スペインの「Bunuel in the Labyrinth of the Turtles」。受賞発表はアメリカ時間25日。