ギレルモ・デル・トロ、オスカー受賞後初のプロデュース作品を語る

ギレルモ・デル・トロ(右)とアンドレ・ウーヴレダル(筆者撮影)

 ギレルモ・デル・トロの原点は、ここにもあった。

 フランケンスタインからウルトラマンまで、幅広い物語に影響を受けてきたデル・トロ(54)が10代の頃に強く愛したもののひとつが、アルヴィン・シュワルツによる「Scary Stories to Tell in the Dark」。「シェイプ・オブ・ウォーター」でオスカー監督の肩書きを得た今、彼は、ついにビッグスクリーンでこのストーリーを語ることになった。それは、彼にとって待ちに待った出来事だったようだ。L.A.で行われた特別フッテージ上映会で、デル・トロは、1981年に出版された原作本との出会いを、このように振り返っている。

「僕がこの本に出会ったのは、テキサス州サンアントニオだったよ。最初に惹かれたのは、イラストだった。スティーブン・ガンメルが描いたその絵は、強烈に不気味で、心に迫るものだったからさ。本はその後、2冊出版され、自分のためにはもちろん、友達のために買ってプレゼントしたりしたよ。本に出てくる話のいくつかを、わが子に聞かせてあげたりもした」。

 そしてある日、映画スタジオとのミーティングに出かけた折、デル・トロは、偶然にも、ガンメルのオリジナルアートが売りに出されているのを目にする。だが、それはちょうど、父がメキシコで誘拐され、デル・トロが全財産を投げ売り、ジェームズ・キャメロンから100万ドルの助けももらって、身代金を払ったばかりの頃だった。

「ものすごく貧乏だったにも関わらず、僕は、重要な作品のいくつかを買ってしまったんだ。おかげで経済状況はさらに悪化し、妻との関係にも影響が出た。だけど、あれらの絵は、僕にとって必要なものだったんだよ。若い頃の自分に多大なる影響を与えてくれたものなんだから」。

 そんなデル・トロは、この本の映画化権をもつ人々から声がかかると、当然、すぐに飛びついた。まずやるべきことは、短編集である原作を、オムニバスでなく、ひとつの話として語るために、時代設定とテーマを決めること。そして、今作を任せられる監督を探すことだ。時代には、ベトナム戦争中である1968年が選ばれた。監督をオファーされたのは、「トロール・ハンター」「ジェーン・ドウの解剖」のアンドレ・ウーヴレダル。デル・トロとウーヴレダルは、以前から連絡を取り合う仲だったらしい。きっかけは、ウーヴレダルの映画についての絶賛コメントをデル・トロがツイッターに何度も投稿したことだ。

出演者は若手の新人揃い。それぞれのキャラクターがしっかり築き上げられ、その人にふさわしい恐怖の形が考えられていると、デル・トロは語る(筆者撮影)
出演者は若手の新人揃い。それぞれのキャラクターがしっかり築き上げられ、その人にふさわしい恐怖の形が考えられていると、デル・トロは語る(筆者撮影)

「ほかの監督には、いっさいアプローチをしていないよ。僕にとっては、アンドレこそ理想の人だったからね。彼は忙しいかもしれないし、受けてくれたら彼のセックスライフは最悪になるだろうが(笑)、聞いてみたら、幸いなことに、彼はやると言ってくれた」。

 一方、ウーヴレダルは、この話について「タイトルすら知らなかった」と告白。ウーヴレダルが生まれ育ったノルウェーでは、本が出版されていないせいだ。「だけど、60年代のアメリカを描けるし、怖いモンスターをたくさん出してこられるし、これはすばらしいぞと思ったんだ。何よりも、ギレルモと組ませていただけるんだからさ。今作を通じて、彼からは、本当に多くを学ばせてもらったよ。ストーリーの語り方とか、俳優の演出の仕方とか」とウーヴレダルが言うと、デル・トロは「おしゃれのテクニックもね」と茶化した。そんな彼の楽しい人柄も、この映画に明らかだ。この日披露されたフッテージの中にあった、登場人物のティーンエイジャーの少年が、鍋の中で煮立っている親指をそれと知らずに食べてしまうシーンは、まさにその象徴だろう。そのシーンでも、ほかのシーンでも、集まったジャーナリストらの間からは、キャーキャーという笑いと悲鳴の混じった歓声が起こっている。その反応に、デル・トロはとても満足したようだ。

「僕らの狙いは、観客に、ローラーコースターに乗っているような気持ちにさせること。それはつまり、楽しくて、怖くて、昔懐かしい気分だ。もともとが子供向けの本だから、映画もPG-13指定を受けられる作りにしてあるよ。今の子供たちの親世代の人にはこの本のファンもいるだろうし、その人たちはこれがかなり怖い話だと知っているはずだから」。

 映画のアメリカ公開は、8月9日。日本公開は2020年でまだかなり先だが、この日解禁になった予告編で、今からぜひ興奮を高めていただきたい。