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「SEX AND THE CITY」から20年:あの4人は最近どうしているのか

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
サラ・ジェシカ・パーカーは靴のブランド「SJPコレクション」を手がける(写真:Shutterstock/アフロ)

 テレビドラマ「SEX AND THE CITY」がデビューして、今年で20年。番組が惜しまれつつ終了した4年後には、映画版「セックス・アンド・ザ・シティ」が公開されて大ヒットし、根強い人気を証明した。だが、その2年後の続編は、1作目より製作費をかけたのに、世界興収は前の6割程度止まりで、次への勢いをすっかり失ってしまう。それが、2010年のことだ。

 それから7年経ち、ようやく映画3作目が撮影に向けてフル稼働し始めた昨年、ファンは胸をときめかせた。しかし、この話は、撮影開始直前になって立ち消えとなる。サマンサ役のキム・キャトラルが出演を渋ったことが原因だ。

 当然のことながら、当時はキャトラルが悪者に見られた。だが、今年初めに起きたキャトラルの家族の不幸をきっかけに、長い間、キャトラルが、主演兼プロデューサーのサラ・ジェシカ・パーカーから冷たい扱いを受けていたことがわかる。たとえば、4人がアトランティック・シティに行く回のロケで、パーカーは、キャトラル以外の3人分しか宿泊を手配せず、キャトラルには自分で別のところを取らせたということだ。

 カメラの裏ではあの4人が親友でないということは、その前からちらほらと言われてはいた。それが事実として公になってしまった以上、続きは、おそらく、もうない。キャトラル(62)は、「サマンサはもう十分に演じた」と言っており、未練はないようだ。実際、彼女はすでにイギリスやカナダのテレビドラマに出て、新しいキャリアに充実を感じているようである。HBOカナダの主演作「Sensitive Skin」では、カナディアン・スクリーン・アワードの主演女優部門にもノミネートされるなど、外からの評価もしっかりもらった。

 その割り切りの良さは、なんとなくサマンサっぽくないだろうか。ほかの3人も、それぞれの道を歩んでいるが、それらは意外とも言えれば、そうでないとも言える。

 かつてはキャリーのイメージにとらわれるのを嫌がり、インタビューでも自分は決してお買い物好きではないと主張していたパーカー(53)。だが、映画2作目がいまいちの結果に終わって4年後の2014年には、吹っ切れたのか、靴のブランド「SJPコレクション」をデビューさせた。最近ではバッグやブライダルにもコレクションを広げている。映画1作目のキャリーのウエディングのシーンは絶大なインパクトをもつし、パーカーもマシュー・ブロデリックとの結婚生活を保っていることから、花嫁たちの関心は十分に引けるだろう。ほかに、「SJP ビューティ」のブランドから、彼女の香水が5種類出ている。

 だが、副業にやたら手を出しすぎるのも要注意のようで、今年は、ジュエリー会社から訴訟されるという出来事もあった。訴えているのはキャット・フローレンスというデザイナー。彼女によると、パーカーに宣伝協力をしてもらうため、750万ドル(約8億3,500万円)を支払ったのに、パーカーは責任を果たさなかったとのことだ。たとえば、パーカーが都合を教えてくれなかったことから、ショップのグランドオープニングパーティの日程が決められずキャンセルになったし、彼女とのコラボ商品の話も潰れたということである。その間にも、パーカーは、自分が主演とプロデューサーを兼任するHBOのドラマ「Divorce」の宣伝活動などは熱心にやっていたと、彼女は非難。逆にパーカー側は、フローレンス側が、最初の契約になかったことを次々に言ってきたと反論している。

 一方、4人の中で一番お堅い職業である弁護士のミランダを演じたシンシア・ニクソン(52)は、次のニューヨーク州知事の座を狙う。その件についての記事では、「『SEX AND THE CITY』のミランダことシンシア・ニクソン」としょっちゅう書かれており、番組から得られた知名度は貴重だったと言える。映画3作目が実現していたら、今年はそのプロモーション活動やらで多忙だっただろうし、彼女の場合は、やりたかったことのひとつが潰れたおかげで別の夢を追いかけることが可能になったわけだ。その上、無くなったほうは、新しいほうを手助けしてくれているのである。

 そしてクリスティン・デイヴィス(53)は、今や、シャーロット同様、二児の母になった。不妊に悩んだシャーロットの場合は上の子が養子だが、未婚の母であるデイヴィスはふたりとも養子。娘を引き取ったのは映画2作目が公開された翌年、息子を迎え入れたのは今年に入ってからだ。母になったこともあって、仕事に関してはそれほど貪欲でないのか、映画には2012年の「センター・オブ・ジ・アース2 神秘の島」以来、何も出ていない。

「SEX AND THE CITY」へのオーディションの声がかかった時、デイヴィスは主役のキャリーで受けないかと言われたのだが、自分はキャリーではないと思い、その時点では毎回出るという設定でなかったシャーロットを、わざわざ希望したそうである。自分とまったく違う人になれるのも役者の醍醐味だろうが、今の彼女らを見ると、やはり、誰がどの役を演じたのかは自然だったように思える。番組放映開始から映画2作目まで、間は空いたにしろ、12年も同じ役を演じたのだから、演じる人と役がより重なっていくのは、避けられないことなのかもしれない。

 パーカーによると、実現しなかった3作目は「すごく素敵で、ファニーで、感動をくれて、共感できる脚本だった」そうだ。そう聞くと、50代、60代を迎えたキャリー、サマンサ、ミランダ、シャーロットがどんな生活をしているのかを見られないのは、やはり残念に思えてくる。彼女らの今は、想像するしかない。せめて、彼女らを演じた4人が、それぞれに、素敵で、ファニーで、感動的で、共感できる人生を歩んでいってくれることを願うばかりだ。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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