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婚約指輪の値段と愛の寿命の関係は:ハリウッドセレブの場合

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
ジャスティン・ビーバーがヘイリー・ボールドウィンに贈った婚約指輪(写真:Splash/アフロ)

 婚約指輪は、今も給料の3ヶ月分が目安なのだろうか。だとしたら、ジャスティン・ビーバーがヘイリー・ボールドウィンにあげた指輪は、安かったことになる。

「Forbes」によると、ビーバー(24)の総資産は、2億2,500万ドル(約253億円)。2016年の1年間だけでも5,600万ドル(約63億円)を稼いでおり、これをもとに3ヶ月分を計算すると、だいたい1,400万ドルである。彼が買った指輪は、推定50万ドル(約5,600万円)だ。

 もちろん、値段が高ければいいというものではない。女性にアピールするのは、そこに注がれた思い、こだわりである。ビーバーは、ジュエリーデザイナーと密に相談をし、彼女に心から気に入ってもらえる、夢の指輪をデザインしていった。デザイナーのジャック・ソローは、「Entertainment Weekly」に対し、指輪を見たビーバーが「ヘイリーの表情が見えるようだ」と言ったと明かしている。

 何においても極端なハリウッドセレブの婚約指輪は、昔から一般人の関心を掻き立ててきた。しかし、誰よりも高価、あるいはゴージャスな指輪をもらったからといって、人よりも長く幸せな結婚生活を送ることができるとは限らない。

 最近の良い例は、マライア・キャリー。オーストラリアのビリオネア、ジェームズ・パッカーにもらった35カラットの指輪は、1,000万ドル(約11億円)と推定されている。だが、パッカーは彼女との婚約を破棄し、彼女はこの指輪をL.A.の宝石店に250万ドルで売ることになった(この報道を受けて、そもそも1,000万ドルというのは誇張だったのではないかとの憶測も出ている)。一方で、キャリーの2番目の夫ニック・キャノンが彼女に贈った17カラットのピンクダイヤモンドの指輪は、250万ドル相当だった。この結婚は8年続き、双子の子供にも恵まれている。

 ブラッド・ピットがアンジェリーナ・ジョリーにあげた指輪も、特別だ。値段こそ25万ドル相当だが(ピットの総資産は2億4,000万ドル)、デザインに強い情熱をもつピットは、ジュエリーデザイナーのロバート・プロコップと一緒に、1年をかけて作り上げていったそうである。プロコップは、当時、メディアに対し、「ブラッドは特定のビジョンを持っていて、すべてにおいて完璧を求めた。このダイヤは最高のクオリティで、アンジェリーナの手に合うようにカットされている」と語っている。2005年からカップルだったふたりが結婚したのは2014年。ジョリーは2016年秋に離婚を申請したが、まだ成立はしていない。

 おさわがせセレブの代表キム・カーダシアンは、テレビ放映もされたクリス・ハンフリーズとの結婚で、200万ドル(約2億2,300万円)の婚約指輪をもらったものの、たった72日で破局した。次の夫で現在も続いているカニエ・ウエストからはふたつも婚約指輪をもらい、最初のは130万ドル、ふたつめはなんと400万ドルもしている。それをソーシャルメディアで見せびらかしたことが災いし、この指輪は、2016年秋、カーダシアンがファッションウィークでパリに滞在している時に盗まれてしまった。

 ライアン・レイノルズが2番目の妻ブレイク・ライヴリーに買ってあげた指輪も、そのセンスの良さで、世の中の女性たちの羨望を集めている。ロレイン・シュワルツがデザインした指輪は、12カラットの楕円形のダイヤにピンクゴールドのアクセントが美しい、200万ドル相当のもの。実は、ビーバーがボールドウィンに贈った指輪も、このデザインが参考にされているとのことだ。レイノルズとライヴリーは、この9月で結婚して丸6年。ふたりの娘にも恵まれている。

意外な人の、意外に質素な指輪

 とは言っても、みんながみんなニュースになるような指輪を買っているわけではない。シンプルでも愛がこもった指輪で彼女を喜ばせたセレブも、たくさんいる。

 たとえば、ミランダ・カーが再婚相手エヴァン・スピーゲルにもらった指輪は、7万5,000ドルから10万ドルと推定されている。ハリウッドセレブではないものの、スナップチャットの創設者であるスピーゲルは、総資産41億ドルのビリオネアだ。また、ジャスティン・ティンバーレイクがジェシカ・ビールにあげた指輪も、13万ドルと、総資産2億3,000万ドルのスーパースターにしては、リーズナブルである。グウィネス・パルトロウが、やはりスーパースターの元夫クリス・マーティンにもらったのは9万ドルで、もっと安い。

 監督作「クワイエット・プレイス」(9月日本公開)の大ヒットで、最近になってハリウッドでの株を大きく上げたジョン・クラシンスキーが2009年にエミリー・ブラントに贈った指輪も、10万ドルだった。「クワイエット〜」では夫婦で初共演し、本物のパワーカップルとなったわけだが、コメディ番組「ザ・オフィス」にレギュラー出演はしていたがまだ大スターとは呼べなかった当時のクラシンスキーにしてみたら、身の丈に合った出費だったと言っていいだろう。

 その意味では、マーゴット・ロビーの夫も同じだ。ふたりが撮影現場で出会った時、アッカリーは、3寝室のアパートに5人のルームメートと住んでいる助監督だった。そんな彼が買った婚約指輪は2万ドル相当と言われている。その後ふたりはプロダクションカンパニーを共同創設、結婚式直後に撮影開始した同社のデビュー作「アイ、トーニャ 史上最大のスキャンダル」がスマッシュヒットして、今ではアッカリーの肩書きも、サクセスフルなプロデューサーとなった。

 しかし、最も意外なのは、ジュリア・ロバーツである。ハリウッドのトップ女優に君臨して四半世紀の彼女の婚約指輪は3,750ドル、およそ42万円なのだ。これを贈ったのは、現在も彼女の夫であるダニー・モダー。「ザ・メキシカン」の撮影現場で出会った時、ロバーツは主演女優、モダーは撮影監督の助手という立場だった。ふたりは今月4日、結婚16周年を迎えている。

 ロバーツはモダーの前にライル・ラヴェットと結婚していた。さらにその前にはキーファー・サザーランドとの婚約を挙式の3日前になって破談にしたことがある。彼らが彼女に贈った指輪がどんなものだったのかはわからないが、ふたりともスターとあって、それなりに豪華だったのではないだろうか。しかし、いつまでも彼女の指に収まり続けたのは、この42万円の指輪だった。昔から言われるとおり、愛は決してお金で測れないのである。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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