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2017年ハリウッド:ジョニデ、メリル、ロック様…気になるスターの1年は?

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
今月L.A.の街角にメリル・ストリープを非難するこのポスターがお目見え(写真:Splash/アフロ)

 スクリーンの中でも、外でも、今年もまた話題をふりまいてくれたハリウッドスターたち。中でも気になるのが、この6人だ。彼らの1年は、どうだったのか?

ジョニー・デップ:キャリアは復活、でもトラブルは絶えず

 今年は“大スター”ジョニー・デップが復活。ここ5年ほどヒット作に恵まれていなかったが、今年は看板映画「パイレーツ・オブ・カリビアン」最新作で、久々に1位デビューを果たしたのだ。北米興収こそシリーズ5作の中で最低ではあったが、世界興収でトップ10入りを果たすなど、まだまだ強いキャプテン・ジャックの人気ぶりを見せつけた形。秋に公開された「オリエント急行殺人事件」も、まもなく北米で1億ドルの大台を達成しそうである。

 だが、私生活では未だトラブル続き。1月、デップは、長年雇ってきたマネジメント会社TMGを訴訟した。 デップ本人が知らないうちにTMGが彼のお金をほかへ貸したり、所得税申請をきちんと行なわなかったりしたというのが理由だ。これを受けてTMGは、ただちにデップを逆訴訟。お金を使いすぎていることを何度忠告しても聞いてもらえず、挙句に自分たちはデップに500万ドルを貸したのだが、それも返してくれない、自分たちの報酬にも未払い分がある、というのが彼らの言い分だ。TMGは、デップが自分たちへの借金を返せるように、担保であるL.A.の家5軒を売却するよう命令を出してほしいと裁判所に申し立ててもいる。一方で、デップは、TMGに加担していたとして、自分の弁護士に対する訴訟も起こした。

 そのほかに、トランプに関する軽い冗談として「最後に俳優が大統領を殺したのはいつだっけ?」と言ったのが一部から批判され、謝罪するはめになるという出来事も起きている。

「パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊」は全米1位デビュー(Walt Disney Studios)
「パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊」は全米1位デビュー(Walt Disney Studios)

メリル・ストリープ:ゴールデン・グローブがらみでいろいろと

 大絶賛で始まった彼女の1年は、逆の形で終わることになった。

 1月、ゴールデン・グローブ授賞式で功労賞を受賞したストリープは、受賞スピーチで、名指しこそしないものの、多様性の美しさ、報道の自由の大切さなど、誰が聞いても反トランプと思える政治的な事柄を説得力たっぷりに語り、大きな拍手を得た。トランプはこれに憤慨し、ストリープのことを「最も過大評価された女優」とツイートしている。

 しかし、10月にハーベイ・ワインスタインの長年のセクハラ、レイプ行動が暴露されると、別の年のゴールデン・グローブでストリープがワインスタインを「神」と呼んでいた映像が出回ることに。ストリープが「自分は知らなかった」と主張する声明を出したのは、ワインスタインが自分の会社ザ・ワインスタイン・カンパニーをクビになり、彼は本当にハリウッドから追放されるとわかってからだ。その前にも彼女と同年代のセレブが「噂程度では知っていた」と述べていただけに、彼女の言葉に疑問を感じた人は少なくなかった。

 さらに、来年のゴールデン・グローブで、抗議を示すために女性の出席者は全員、黒を着ようというアイデアが浮上した時、ワインスタインの被害者であるローズ・マッゴーワンは、候補者として出席予定であるストリープについて、彼女は偽善者だ、知っていたのだと批判のツイートをする。ストリープはマッゴーワンに公開状を送り、本当に知らなかったとあらためて述べた。そんな合間にも、L.A.の街角には、ストリープとワインスタインの顔の上に「She knew(彼女は知っていた)」と書かれた批判ポスターが張り出されている。

 キャリアは、あいかわらず好調。今年のオスカーには、「マダム・フローレンス! 夢見るふたり」でキャリア20回目のオスカー候補入りを果たした。また、今月北米で限定公開された最新作「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」の演技も高い評価を得ており、ナショナル・ボード・オブ・レビューの主演女優賞を受賞している。

ドウェイン・ジョンソン:ロック様、大統領になるか?

 今年はまず「ワイルド・スピード ICE BREAK」が大成功。今作は「美女と野獣」に次いで、今年の世界興収第2位という爆発的ヒットだ。だが、その次の「Baywatch」が大コケ。成績もダメだったが、多くの批評家から今年のワースト映画のひとつに挙げられもした、彼には珍しい大失敗である。だが、早くもこのクリスマスに「ジュマンジ:ウェルカム・トゥ・ジャングル」で挽回をはかってみせたのはさすがだ。

(Sony Pictures)
(Sony Pictures)

 しかし、彼に関する今年の最大ニュースは、彼が大統領選への出馬について、ジョークとも本気ともつかぬ発言をしたことだろう。もともとは 「GQ」のインタビュー記事がきっかけだったのだが、その後のテレビ出演などでも、自分が大統領になったら「More Poise, Less Noise(騒がすに、冷静に)」の姿勢で挑む、と何度か述べ、それは彼の選挙スローガンなのかと騒がれたりもした。世間の反応を喜ぶかのように、ジョンソンは、「サタデー・ナイト・ライブ」で“出馬宣言”し、副大統領はトム・ハンクスにやってもらうというジョークのパフォーマンスを行ってもいる。

 売れっ子の彼は今後もスケジュールがぎっしりで、どう考えても現実的とは思えないのだが、最近はまた2020年ではなく2024年を狙っているとの発言をし、メディアを騒がせた。

クロエ・グレース・モレッツ:今年はついに20歳!

「キックアス」のヒットガールも、なんと20歳になった。アメリカでは、選挙権を持てる18歳や、お酒を飲めるようになる21歳のほうがもっと意味があるとはいえ、大台に乗ったことは、やはり感慨深い。

 あいかわらず多忙の彼女ではあるが、今年はヒット作に恵まれなかった。しかも出演作のひとつは、セクハラ行為が暴露されたルイス・C・Kの監督作「I Love You, Daddy」だったのだ。その暴露記事が出ると知らされた頃から、モレッツは映画のプロモーション活動に参加しなくなっている。報道が出たのは映画のプレミア直前で、北米公開は中止された。

 私生活では、今もデビッド・ベッカム夫妻の長男ブルックリンと交際中。だが、望まない人からも愛されてしまう彼女は、ストーカーに悩まされ、最近、裁判所に接近禁止命令を申請することになった。その男はソーシャルメディアで彼女を“妻”と呼び、実際に彼女とブルックリンを付け回したりしたそうである。そのほかにも、彼女のファンの少年が彼女の自宅にクッキーを持って現れ、彼女が警察を呼ぶという事件も発生している。

クエンティン・タランティーノ:さよならハーベイ、後悔してます

 54歳まで独身を貫いてきたタランティーノが、今年、人生で初めて婚約した。お相手は21歳年下のイスラエル人。そんなめでたいニュースで世間を騒がせた数ヶ月後、彼を発掘してくれた恩人であるハーベイ・ワインスタインの本性が明かされる。

 ワインスタインに近かったセレブの多くが「知らなかった」「女ったらし程度だと思っていた」という姿勢を貫く中、タランティーノは知っていたと認めている。というのも、被害者のひとりであるミラ・ソルヴィーノは、ワインスタインに迫られた時、タランティーノとつきあっていたのだ。それなのにもっと堂々とした行動を取らなかったことに対して、タランティーノは後悔の意を示している。

 暴露記事が出るまで、彼の次回作は、これまでどおりワインスタインの会社で製作されるはずだったが、状況の急変を受けて競売にかけられることになった。興味を示した会社は多かったが、R指定であることや製作費が1億ドルに達することなどの理由から、実際の候補はメジャースタジオに絞られ、最終的にソニー・ピクチャーズが獲得した(R指定であることからか、ディズニーだけは最初から興味を示していない)。映画は、60年代末に起きたチャールズ・マンソン一家による殺人事件を描くもの。つい最近、マンソン本人が死亡したとあって、まさにタイムリーである。映画は来年なかばに撮影され、2019年に公開される予定。またもや多忙になりそうだが、ウエディングはどうする?

「ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命」(Fox Searchlight)
「ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命」(Fox Searchlight)

ナタリー・ポートマン:ベイビーのためならオスカーなんて

「ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命」でオスカーにノミネートされていたのに、授章式を欠席。後にわかったことに、その数日前、ふたり目が生まれていたのだ。今度は女の子。長男は今年6歳になる。

 オスカー候補入りはこれが3回目で、2回目の「ブラック・スワン」では見事受賞した。今年の主演女優部門はエマ・ストーンでほぼ決まりだったし、無理して出席するまでもなかっただろう。それよりは、家族水入らずで大切な時間を過ごしたかったのではないかと思われる。

 出産後はしばらく公に姿を見せていないが、来年は出演作が2本公開予定。ひとつは「エクス・マキナ」のアレックス・ガーランド監督による「Annihilation」、もうひとつはグザビエ・ドラン監督の「The Death and Life of John F. Donovan」だ。プライベートが充実の彼女は、スクリーンでもまた名演技を見せてくれるだろうか。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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