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「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」は、前作より暗く、感情的:L.A.記者会見レポート

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
L.A.での会見に集まった「最後のジェダイ」のキャストと監督(筆者撮影)

 最新の「スター・ウォーズ」は、シリーズにこれまでなかった形で戦争の混乱が描かれる。片や、人間ドラマの部分は繊細で、豊かな感情にあふれている。そして、前の映画より、少しだけ長い。

 西海岸時間3日(日)、L.A.で記者会見に出席した「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」の出演者と監督は、今月15日に日米同時公開されるエピソード8について、そう語った。8日(金)のL.A.プレミアまで、誰も映画を見せてもらえないのだが、出演者たちの試写は、すでに組まれたのだそうだ。会見の出席者の中で、その試写に参加しなかったのは、ハックス将軍役のドーナル・グリーソンだけ。グリーソンは、「前作『フォースの覚醒』の時と同じように、大勢の一般観客に混じって映画を見たかったから」と理由を述べたが、壇上の共演者から感動コメントを聞かされて、欠席したことに、やや後悔を見せている。

 会見が開かれたのは、L.A.中心部の、とあるホテル。ファンが押しかけることを懸念してか、記者たちに対して、「SNSに写真を投稿するのは歓迎だが、場所のタグ付けはしないように」との念押しが、何度もあった。

会場にはコスチュームの展示も
会場にはコスチュームの展示も

 最初に発言したのは、今作の監督と脚本を務めるライアン・ジョンソン。「フォースの覚醒」とどのように違っているのかと聞かれた彼は、「三部作の2作目と聞くと、当然、みんな、前より少しダークなのではと思うだろう」と述べた上で、実際そうであると認めた。「だけど、僕は、J・J・エイブラムスが『フォースの覚醒』でやったことがとても好きだったし、何よりも『スター・ウォーズ』の雰囲気を失わないことを重視した。それはつまり、緊張感がありつつ、スペースオペラでもあるということ。そして、見終わった後に、庭でおもちゃのライトセーバーで遊びたくなることだ」と語っている。

 ジョンソンは、オリジナル三部作の2作目である「帝国の逆襲」がとりわけ気に入っているらしい。「帝国の逆襲」が、ストーリー面でもビジュアル面でも非常にダークであることに強い印象を受けたというが、そのまま真似ることは、あえてしなかった。そうではなく、「シリーズの過去作品にヒントを得つつ、この映画が最も楽しくなる形でこのストーリーを語ろう」との決断は、製作の早い時期に下したものだと明かしている。

パワフルだがフェミニンな女性たち

「フォースの覚醒」の最後で、デイジー・リドリー演じるレイは、ルーク・スカイウォーカーと、初めて対面する。「最後のジェダイ」で、レイはルークからジェダイとしての指導を受けるのだと広く理解されているが、その部分について聞かれると、マーク・ハミルは「僕がレイをトレーニングするストーリーだと決めつけているわけ?」とすっとぼけ、会場を笑わせた。彼はまた、「再びライトセーバーを持って戦うのはどんな気分ですか、とも聞かれたことがあるよ。それに対しても、僕は『え、僕はそれをやるの?』と答えたんだけどさ」とも語っている。

 だが、リドリーは、みんなが期待するストーリーがちゃんと存在することを示唆した。「今作で、登場人物たちは、『フォースの覚醒』とは違う相手とチームを組むことになるの。前作でレイはジョン(・ボイエガ)演じるフィンとチームを組んだけれど、今作ではそうじゃない。そしてレイは、新しいことを学ぶことになるのよ」とリドリー。 ポー役のオスカー・アイザックが「みんなが生き残ろうと必死」、ボイエガが「『スター・ウォーズ』でこれまでなかったくらい、どろどろ、ごちゃごちゃした戦争の状況が描かれる」というストーリーの中でも、レイにだけは、「疑問を感じたり、考えたりする余裕がある」とも明かした。

 おなじみのキャラクターが戻ってくる中、今作には新しい顔ぶれも登場する。ローラ・ダーン、アンディ・サーキス、そして今作でブレイクを果たす無名のアジア人女優ケリー・マリー・トランらだ。

 悪役スノーク最高指導者を演じるサーキスは、完成作を見て、「とても親密な話で、感情にあふれているのに驚かされた。もちろん、そっちの方向だというのは知っていたけれど、ここまでパワフルだとは思わなかったんだ。ライアン(・ジョンソン)はすごいよ。巨大なスケールなのに、いい具合にユーモアがあって、しかもキャラクターをしっかりと描くということをやってみせたんだから」と、監督を賞賛する。ダーンも、今作に登場する女性たちがステレオタイプに陥っておらず、「パワフルなのにフェミニン」に描かれていると、ジョンソンを褒め称えた。

 もちろん、パワフルかつフェミニンな女性のお手本は、レイア姫を演じた故キャリー・フィッシャーだ。「勇敢で恐れを知らない人というのはいるけれど、遠慮を見せずにそう振る舞う人は少ない」と指摘するダーンは、フィッシャーはまさにその数少ないひとりだったと振り返る。今作で初めて公の知る存在になったトランも、「人前で自分らしくいることがいかに勇気を要することか、最近まで知らなかったわ。彼女は、とても自分をオープンにしていた。私もそうしようと努力しているけれど、難しい」と、フィッシャーに敬意を示した。トランはまた、生前のフィッシャーに会えた自分は「とても幸運だった」と、感慨深い表情を見せている。

記者会見場の模様
記者会見場の模様

 ハミルによれば、今作と前作の違いのひとつには、「前より長い」こともある。そんな彼の発言を受けて、ジョンソンはすぐ、「ちょっとだけだよ」とあわてて付け足した。ストーリーについて、ジョンソンは、「ヒーローになっていくというより、成長して、世界における自分の居場所を見つける物語」だと語る。「スター・ウォーズ」はもともとそうで、だからこそ観客は共感するというのだ。

 一方で、「今作から私たちは何を学べるのでしょうか」と聞かれたカイロ・レン役のアダム・ドライバーは、「人によっては何も学ばないということもあると思うよ」と言って、会場を笑わせた。それはまじめな答だったようだ。「映画館に住んでいる人はいない。みんな自分の生活がある」と、ドライバー。それを持ち込んで映画館に来た人たちは、「(映画を見るという)同じ経験をしながら、みんなそれぞれに違うことを体験するんだ。同じ映画は、 観る人によって、違うことを語りかけるのさ」と言う。

 ボイエガによると、この映画では「たくさんのことが起こる」。それでも、リドリーによれば、「すべての問いはスクリーンの中で語りかけられ、答もスクリーンで与えられる。見ている前で、すべてが明らかになっていく」のだそうだ。どうやら、盛りだくさんの映画であることは、間違いなさそうである。その映画から、果たしてあなた個人は、何を感じることになるのだろうか。それは、もうすぐわかる。

「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」は、12月15日(金)、全国ロードショー。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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