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キアヌ・リーブスが語る、バイク 、L.A.のラーメン、真田広之に学んだこと

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
(写真:Shutterstock/アフロ)

キアヌ・リーブスが、幸せそうだ。それも、当然だろう。3年前、 インディーズ映画として作ったお気に入りの1作「ジョン・ウィック」がスマッシュヒットし、またもやこの役を演じられることになったのだから。1作目も手がけたチャド・スタエルスキ監督は、「マトリックス」などで彼のスタントダブルを務めてきた長年の友達。さらに、続編では、 ローレンス・フィッシュバーンとも、久々に共演できたのである。

「 『ジョン・ウィック』は小規模な映画で、公開前には話題にも上っていなかった。でも、作った僕らは、あの映画をクールだと思っていた。そうしたら、見た人もそう思ってくれたんだよ。そして、続編を作れるところまできたんだ。 驚きだよ」 と、感慨深い表情を見せるリーブス 。プロデューサーの肩書きはもたないが、「ジョン・ウィック:チャプター2」に、リーブスはストーリー作りの段階から深く関わっている。今作に出てくる鉛筆を使ったファイトシーンも、彼が監督に「これは絶対に入れよう」と言い続けて実現したのだそうだ。

映画デビューから30年。今も活躍を続ける一方、バイク好きの彼は、カスタムバイクをデザインする副業にも情熱を注いでいる。もちろん、ラーメン好きもあいかわらずだ。ほかにも彼は、このL.A.でのインタビューで、いろいろなことを語ってくれている。

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再びジョン・ウィックを演じるのは、どんな気分でしたか?

最高だったよ。僕はこのキャラクターが大好き。これは、本当においしい役だ。それぞれのシーンも楽しくて、重くなりすぎない。ジョンが亡くなった妻の写真を見るシーンなんかでも、そこには愛があって、むしろ温かいものを感じさせる。続編のアイデアは、1作目の撮影中から、僕らの間ではなんとなく話していた。1作目はインディーズ映画として製作されて、ライオンズゲートは北米配給権を買ってくれただけだったが、公開後、「私たちがお金を出すので、続編を作りましょう」と言ってくれたんだ。 続編のストーリーを1作目の直後から始めるというのは、早い時期に決めたこと。さらに、チャドは、この世界を広げたいとも考えた。ローマのカタコンベで銃を撃ち合うなんて、究極の体験だったね。

今作にもかっこいいスタントがたくさん出てきますが、あれらのシークエンスはどうやって決めていったのでしょうか?

まずはチャドがコンセプトを決めて、次にスタント・コーディネーターやファイト・コーディネーターも加わって形が決まっていく。その後、僕も意見を言ったり、アイデアを出したりする。だが、現場でまたチャドが、「こういうのはどうかな」と、新しいことを思いついたりするんだ。リハーサルどおりに撮影することなんて、ほとんどなかったね。だから何があっても対応できるスキルを備えていないといけない。(今作に新しく出演する)コモンも、 「こんなの予定になかったよね?こんなトレーニングはしていないよ?」とびっくりしていたが、僕らはちゃんと良いものを届けてみせたよ。そういうのが、また刺激的なんだ。思いもかけなかったことが起こっているという、臨場感が生まれるから。

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「47 RONIN」では日本人俳優と共演し、刀を使ったアクションもこなしましたが、その経験は「ジョン・ウィック」にも活かされているのでしょうか?

「ジョン・ウィック」で僕がやるアクションシーンの多くは、テイクが長く、複雑なコレオグラフィーがある。それらのシーンでは、相手役との協力がとても大事になってくる。相手をどううまく見せてあげるかを考えないといけないんだ。「マトリックス」の頃、僕はそれがまだわかっていなかった。僕は自分のことをこなすのに必死で、共演者は僕に反応するだけだった。「47 RONIN」で、真田(広之)さんは、本当に僕を助けてくれたよ。ああして、こうしてとは言わないんだが、「わかった、君はそうやるんだね?じゃあ、このシーンがもっと良く見えるよう、僕はこうすることにしよう」という彼の意図が、伝わってきたんだ。それを学ばせてもらったことは、「ジョン・ウィック」の撮影に、大きく役立った。「ジョン・ウィック」の現場で、僕は自分のことだけを考えてはいなかった。僕らは一緒にこのシーンを作るんだ、という姿勢だった。

「マトリックス」といえば、ローレンス・フィッシュバーンとは、久々の共演ですね。

ローレンスは知らないかもしれないが、あの役は彼を念頭に入れて書かれたんだよ。彼は僕に「ジョン・ウィック」は良い映画だったと言ってくれていたので、僕が彼に「続編を作るんだが、読んでくれる?」と脚本を渡したのさ。そして彼は気に入ってくれた。彼とまた共演できて、すごく嬉しかったよ。彼は僕の友達でもあり、映画界の伝説的俳優でもある。今作で、僕らが演じるキャラクターの関係が「マトリックス」とは違っているのも、おもしろかった。

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ローレンスは、あなたにバイクを作ってもらうかもと言っていましたが。

彼がそう言ったの?そう決めてくれたなら嬉しいんだけど。もうデザインはあるんだよ。本当に作れることになったらいいなと思っている。僕はバイクをデザインするアーチ・モーターサイクルという会社をやっていて、ローレンスが訪ねてきてくれた時に、一緒に試運転をしたんだ。僕らの会社が作るバイクは、とても美しくて、走りも最高。音も、匂いも、ターンのしかたも、性能も、フィニッシュも、全部良い。

でも、値段もすごく高いんですよね。

ああ、高い。ものすごく高いかどうかはわからないが、高いバイクであることはたしかだ。

最近、L.A.でもちょっとしたラーメンブームが起こっています。長年のラーメン好きとして、そのことをどう思いますか?

良いことだよ。L.A.では、まだおいしいラーメンを見つけていないけどね。何軒か試したけれど、いまいちだった。でも、努力し続けるのは良いことだ。ラーメンのシェフは、ラーメンに人生のすべてを捧げるものなんだからさ。僕はいつも「すごい」と思えるラーメンに出会えることを望んでいる。

ジョン・ウィックは引退したがっていますが、あなたはいつか俳優業を引退する日のことを考えますか?

いや、それはないな。むしろ、まだキャリアを築いている段階みたいに感じているんだ。自分はいったいいつまでこれをやらせてもらえるのかなとは、考える。アル・パチーノはもう70代だけど、最近またお芝居をやったよね。僕もあそこまでできるんだろうか?わからない。先のことは、誰にもわからないよね。

「ジョン・ウィック:チャプター2」は本日、日本全国公開。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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