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「パイレーツ〜」最新作:ポール・マッカートニーの出演は、ジョニデが自ら携帯に連絡して決まった

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
「パイレーツ・オブ・カリビアン」最新作の監督、ローニング(左)とサンドベリ(写真:ロイター/アフロ)

キャプテン・ジャックが、今週末、ついに日本のスクリーンにも戻ってくる。

6年ぶりに公開されるシリーズ最新作「パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊」の監督に選ばれたのは、やはり海を舞台とする「コン・ティキ」でオスカー外国語映画部門にノミネートされたヨアヒム・ローニングとエスペン・サンドベリ。ノルウェーで一緒に育ったこの監督コンビにとって、今作は、初のハリウッド超大作だ。だが、彼らは十分に自由を与えてもらった様子。実際、ジャック・スパロウの痛快なギロチンのシーンは、彼らのアイデアだったそうだ。ジャックの前にギロチンで処刑された人たちの首が、このふたりのものであるのも、彼らのユーモアのセンスを示すと言えるだろう。製作にまつわる裏話を、L.A.で語ってもらった。

ジョニー・デップはジャック・スパロウ役でオスカーにもノミネートされている
ジョニー・デップはジャック・スパロウ役でオスカーにもノミネートされている

世界的に大ヒットしてきたこのシリーズの最新作を監督しないかと言われて、どう感じましたか?

ヨアヒム・ローニング(以下、ローニング):すごく興奮したね。僕とエスペンは、10歳の時から一緒に映画を撮ってきた。僕らが一番影響を受けたのは、スピルバーグ、ゼメキス、ルーカスなど。今の僕らがあるのは、そういったハリウッドの巨匠のおかげなのさ。「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズも、大好きだった。今作を引き受けるにあたり、僕らは、どうして自分たちがこのシリーズに惹かれるのかをあらためて分析したよ。このシリーズには、派手なアクション、冒険、ユーモア、ホラー、そして何よりもハートがある。それが理由だ。

エスペン・サンドベリ(以下、サンドベリ):それらのバランスを上手に取るのは、難しかったよね。中でも、僕らは、とくにユーモアを重視している。すべてのアクションシーンを、楽しいものにしたかったんだ。ジョニー(・デップ)はそういうのがお得意だが、キャラクターには感情的なドラマもないといけない。すべてのキャラクターに私的なドラマを与えるというのも、僕らが決めたことだ。

今作のストーリーは、新しく登場するカリーナ(カヤ・スコデラーリオ)とヘンリー(ブレントン・スウェイツ)が引っ張っていくような形ですよね。

サンドベリ:そう、この若いふたりには、ドラマの要素がたっぷりある。そんな中で、ジャック・スパロウは、料理のスパイス的役割だった。彼自身の物語は薄かったんだ。それで、ジャックの若き日の話を入れてくることにしたわけさ。悪役サラザール(ハビエル・バルデム)をそこに絡めてくることで、サラザールがなぜジャックを恨むのかを説明することができた。

ポール・マッカートニーが小さな役で出てくるのは驚きだったのですが、あのカメオ出演は、どんな形で決まったのですか?

ローニング:過去にはキース・リチャーズがジャックの父親役で出演しているよね。 僕らは今作でも何かすごいカメオをやりたかった。 それで僕らは、ジョニーと一緒に誰がいいだろうかと話し合い、名前を書き出してみたんだ。そして一番上に来たのが、ポール。問題はどうやって彼に話を持ちかけるかだなと思っていたら、ジョニーが、ポールの携帯番号を知っていると言うじゃないか。彼はポールにテキストメッセージを送ってくれて、ポールはすぐにジョニーに返事をくれた。そうやって決まったんだよ。

大手スタジオや大物プロデューサーを前に、シリーズ新参者であるあなたたちは、自由にアイデアを出すことができたのでしょうか?

ローニング:ああ、僕らのアイデアは、映画の中にたくさんあるよ。 たとえば、ジョニーのギロチンのコメディは、脚本になかったんだ。あそこはアクションシーンとして書かれていたが、あのギャグはなかった。僕らは、あそこに笑いを加えたかったんだよね。あのシーンは、僕が今作で最も誇りに感じるシーンのひとつだ。

“ジョニーはコメディの天才。彼との打ち合わせはマジカルな体験だった”

いろいろアイデアが浮かぶ中、どれを使ってどれを捨てるかは、このシリーズが築いてきた神話にそぐうかどうかを基準にしている。ジャックの若い頃の話にしても、15個くらいの中から、あれを選んだんだよ。これをやるぞと決めたら、数ヶ月後、僕らが思い描いたようなセットが実際に作られて目の前にあるというのは、すごい醍醐味だったな。そこでジョニー・デップが豪快な演技をやってくれるんだ。ジョニーはコメディの天才。彼のトレーラーでコメディが絡むシーンについて打ち合わせするのは、とてもマジカルな体験だった。

あなたたちは常にコンビを組んできましたが、意見が食い違うことはありますか?

サンドベリ:僕らは違う人間だから、違う意見が出ることもある。そこが良いんだ。何についても、いろんな意見を出し合って決める。そういう環境は、ほかの人々にとってもプラスだったと思うよ。誰でも、アイデアがあれば遠慮せずに言ってくれればいい。僕らはそれを歓迎する。もちろん、最終的に決めるのは、監督である僕らなんだけど。

シリーズがこの先も続くとしたら、また監督したいですか?

ローニング:ファンである僕らが望むのは、このシリーズが続いていくこと。次があるかどうかを決めるのは、観客だよ。

「パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊」は、7月1日全国公開。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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