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アンジェリーナ・ジョリー、父と仲直り?ハリウッドに数ある、家族内の争い

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
一緒にいるところを目撃されたアンジェリーナ・ジョリーと父ジョン・ヴォイト(写真:Splash/アフロ)

夫を捨てたら、父が恋しくなった? アンジェリーナ・ジョリーが、長年疎遠にしてきた父ジョン・ヴォイトと、最近になって急速に関係を立て直していることが、憶測を呼んでいる。

ジョリーが父を嫌うようになったのは、彼が浮気をしては最愛の母を悲しませ、挙句に離婚に至ったからだ。ブラッド・ピットと公にカップルになる前、ジョリーは、インタビューで何度も「母が父のせいで苦しんだから、私は結婚している人とはセックスしないの」と断言していた。ジョリーが難民支援にも熱心なリベラル派であるのに対し、ヴィオトは共和党派で、選挙中からトランプを支持してきているなど、政治への視点が違っているのも、追い打ちをかけたと思われる。

しかし、最近、父娘が外で一緒にいる姿が何度か目撃されているのだ。今月初めにも、ふたりは、ジョリーとピットの6人の子供のうち4人を連れて、L.A.の寿司屋で食事をしている。再び娘と近しくなれたのが相当に嬉しかったようで、数日後、ヴォイトは、パパラッチに対してジョリーがいかにすばらしい母親かを、得意げに語っている。

皮肉なことに、ジョリーの過去の宿敵ジェニファー・アニストンも、ピットとの離婚を機に、長年嫌ってきた母と、少しずつ会話を持つようになっている。夫という存在を失うと、家族というものをあらためて考え直してしまうのかもしれない。だが、そこから必ず円満な関係に発展するとは限らないようで、アニストンと母はまたもや疎遠になり、母は、遺産がいっさい娘には渡らないように、遺言書を書き変えることまでした。親やきょうだいと不仲になったセレブたちの事情を振り返ってみる。

ジェニファー・アニストンと母

俳優の父とモデルの母のひとり娘として生まれたジェニファー・アニストンは、TV番組「フレンズ」で大ブレイクする前は、ややぽっちゃり目だった。昨年、「The Hollywood Reporter」に対し、アニストンは、「母はモデルで、とても美しかった。私はそうじゃなかった。それに、母は根に持つタイプで、私にしたらどうでもいいことも、いつまでも忘れなかったわ」と、昔から母とはうまく行っていなかったことを明かしている。

母娘の関係がさらに悪化した原因は、母が、アニストンの知らないうちに、「From Mother and Daughter to Friends: A Memoir」という回想本を出版したことだ。その本の中で、自分の過去についていろいろ書かれたことに激怒したアニストンは、母と絶縁し、ピットとの結婚式にも招待しなかった。

だが、2005年の離婚を機に、母娘は、少しずつ会話を取り戻すようになる。当時、アニストンは、テレビのインタビューで、「人生がめちゃくちゃになったせいでこういうことに繋がるなんて、面白いわよね。でも、素敵だと思っている。まあ、まだ始まったばかりだけど」とコメントした。その後、連絡は再び途絶え、母が死ぬ前の5年間、母娘はまったく会っていない。再婚相手ジャスティン・セローとの結婚式にも、母は招待されなかった。

昨年、79歳で亡くなった時、母は遺言書で、不動産などの遺産はすべてほかの親族に渡るように指示し、アニストンには何も相続させなかったと報道されている。

ジュリア・ロバーツと兄

ジュリア・ロバーツはかつて、11歳年上で俳優の兄エリック・ロバーツと仲が良く、 駆け出しの頃は同じアパートで暮らしていたこともある。だが、エリックにドラッグの問題が出てきた頃から、関係は変わった。エリックが長年の恋人ケリー・カニンガムと別れると、 彼らのひとり娘エマの親権をカニンガムが獲得できるよう、ジュリアは、弁護士代も肩代わりして闘う。以後、兄妹は疎遠になっていたが、2004年、ジュリアが双子の長男長女を生んだ病院を彼が訪れて祝福したことをきっかけに 、関係は修復に向かったようだ。

今や自らも女優として活躍するエマは、公に対して、いかに叔母ジュリアを慕っているかをしばしば語っている。

ドリュー・バリモアと母

業界一家に生まれたドリュー・バリモアは、11歳でCMデビュー。7歳で「E.T.」に出演するも、11歳でアルコール中毒、12歳でドラッグ中毒になり、13歳の時には母によって強制的に病院に入れられた。14歳で、バリモアは法的に親子絶縁を果たし、自分は成人だと宣言する。

もともと子育てに無関心だった父ジョン・ドリュー・バリモアは、2004年に死去。母とは今も連絡を取っていないが、バリモアが昨年出版したメモワール「Wildflower」によると、金銭面での面倒は見ているらしい。現在42歳で、3度目の夫との間にふたりの子供ももうけたバリモアは(その夫とも昨年離婚している)、自分を生んでくれたことについて母には感謝していると書いている。顔を見たくはなくても経済的支援をする理由は、「彼女が、どこかで、必要なものにもこと欠いている状態にあるとしたら、いてもたってもいられないでしょう」ということだ。

「バーニング・オーシャン」のケイト・ハドソン
「バーニング・オーシャン」のケイト・ハドソン

ケイト・ハドソンと実の父

ケイト・ハドソンが父と慕うのは、 カート・ラッセル。苗字が違っているのは、生みの父が、歌手ビル・ハドソンだからだ。 母ゴールディ・ホーンは、彼女が1歳の時に離婚。ホーンとラッセルは、今も正式には結婚していないが、ラッセルはホーンの連れ子であるオリバーとケイトを、わが子のように育てた。

一方で、ずっと疎遠な関係にあった実の父は、2015年、イギリスのメディアに対し、「オリバーとケイトのことは、もはや自分の子と思っていない。僕にとってふたりは死んだようなもの。僕には子供が5人生まれたが、今では自分を3人の父と思っている。(オリバーとケイトに)、お前らを自由にしてやったんだよと言いたい」と語っている。それを受けてハドソンは昨年、ラジオ番組で、「彼にとっては辛い事実なのでしょう。でも、私は、彼を許します」と語った。また、実の父と音信がとだえたままでいるのは、母のせいではないと主張。「母が彼の悪口を言ったことはない。私は、(離婚の)原因がオリバーと私にあるのではないと、小さい時からわかっていた」とも明かした。

ハドソンとラッセルは、現在日本公開中の「バーニング・オーシャン」で、初めて同じ映画に出演している。一緒にいるシーンは短いが、今作のプロモーションツアーにも、父娘は仲むつまじさを見せつけていた。

マドンナと弟

マドンナの弟クリストファー・チッコーネは、2008年、告白本「Life with My Sister Madonna」を出版。その中で、彼は、マドンナが異常なセックス好きであること、当時の夫ガイ・リッチーよりも自分のキャリアを重視したこと、レズビアン体験があること、リッチーのゲイ嫌いがゲイの友達を多数持つマドンナとの関係にダメージを与えたことなど、数多くのネガティブな事実を明かした。マドンナは激怒し、姉弟はほぼ絶縁状態になったが、近年は、メールのやりとりをしたり、彼が彼女のコンサートを見に行ったりするくらいまで、関係は修復したようだ。

マドンナはまた、兄アンソニー・チッコーネとの間にも問題を抱えているが、こちらに関しては、アンソニーが家族から孤立しているというほうが正しい。アンソニーはアルコール中毒のホームレス。逮捕歴も、何度となくある。家族は彼に人生を立て直して欲しいと願っており、本人がその気になるまで、父も、きょうだいも、厳しい姿勢を貫くつもりのようだ。マドンナも何度か更生施設の入居料を払ってあげたことがあるようだが、連絡は途絶えている。アンソニーは、「Daily Mail」に対し、「昔から妹が好きじゃなかったし、彼女も僕を好きじゃなかった。僕が生きていようが死んでいようが、彼女には関係ないだろうね」と語っている。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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