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今度はミーシャ・バートン。 セックスビデオに悩まされたセレブたち

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
14年前、TVドラマ「The OC」で大ブレイクしたミーシャ・バートン(写真:REX FEATURES/アフロ)

10年ちょっと前、人は、おしゃれなミーシャ・バートンが 身につけるものを話題にした。 今、 皮肉にも、その下にあるものが、再び彼女に注目を集めさせている。彼女のセックスビデオが、ポルノ専門サイトに売り込まれているのだ。最低金額は50万ドルで、一番高い値段をオファーした会社が獲得するという。

そのニュースが出ると、バートンはすぐに弁護士を伴って記者会見を開き、「愛していると思った人が、隠しカメラを使い、私が知らないところで、最もプライベートな部分を撮影していたと知ったのは、ひどい悪夢でした」と、その人物が元恋人で、自分は撮影されていることに気づいていなかったことを明かしている。会見で、弁護士は、その人物が誰かについて語るのを拒否したが、直後にバートンが、裁判所に、ジョン・ザカリアスとアダム・ショウというふたりの男性に対する接近禁止命令を申請した。

接近禁止を命じる理由として、バートンは、このふたりが自分のセックスビデオを売ろうとしていることを挙げている。ビデオを撮影したのは、昨年10月、バートンが短い間交際したザカリアス。彼が自分とつきあっているのは単に自分がセレブリティだからだと気づいた彼女は彼と別れ、次にショウと交際を始める。ショウはザカリアスの元友人で、ザカリアスがそれらのビデオや写真を持っていることを彼女に伝えた。彼は、ザカリアスのコンピュータからそれらをコピーして、オリジナルを削除するとも言ったが、 そんなことはできないだろうと彼女は疑いを持っていたという。

自分のサインを偽造して小切手を切ろうとしたショウが逮捕され、彼もまたお金目当てだったと知ったバートンは、彼と別れる。その後に、こんな思わぬ展開が待ち受けていたというわけだ。

会見で、バートンは、「私自身だけのためでなく、すべての女性のために立ち上がります。私が今、経験している苦痛と屈辱を、他の女性に味わわせないためにも」と語っている。だが、セックスビデオに悩まされたのは、女性に限らない。 男性が被害に遭い、裁判で会社をひとつ潰すくらいの賠償金を取ってみせたケースもある。いくつかの違った例を振り返って見る。

ロブ・ロウ

セレブがらみのセックスビデオ事件で最初のケースとされるのが、これ。1989年、当時22歳だった彼は、「セント・エルモス・ファイアー」「栄光のエンブレム」「きのうの夜は…」などで人気がうなぎのぼり状態だった。だが、そんな時、彼のセックスビデオが出現し、高値で売られる。ビデオにはふたりの女性が別々のシーンで登場するが、そのうちひとりが16歳だったことが、イメージダウンを致命的なものとした。

キャリアは スランプに陥り、その間、彼は酒に溺れる。だが、逆にそのせいで、酒をきっぱりやめようと決めることになった。新しい人生をくれるきっかけとなったあの事件は、「僕の人生で起こった最高のことだったんだよ」と、ロウは、2011年のオプラ・ウィンフリーとのインタビューで語っている。 同じインタビューで、彼は、「今じゃ、 セックスビデオのおかげで有名になってキャリアアップするセレブがいるんだから、驚きだよね」ともジョークも飛ばしている。

パリス・ヒルトン

元恋人リック・ソロモンが撮影したビデオが流出したのは、2003年。このビデオは他人に見せる目的ではなかったとして、ヒルトンは2004年、ビデオを配信したフロリダのインターネット会社をプライバシー侵害で訴訟した。ヒルトンは同社に3,000万ドルの損害賠償を求めたが、棄却されている。一方、ソロモンも、ヒルトンを名誉毀損で訴訟したが、ソロモンと、ビデオの販売権を持つL.A.のポルノ制作会社が、ヒルトンに40万ドルと今後の売り上げのパーセンテージを払うということで、和解した。

ビデオ流出のタイミングは、ヒルトンとニコール・リッチーが出演するリアリティ番組「The Simple Life」の放映開始直前。それも後押ししてか、番組は好調な視聴率でスタートし、2007年まで続いている。

コリン・ファレル

遊び人でならしたファレルは、2003年 だけでも、ブリトニー・スピアーズ、アンジェリーナ・ジョリー、デミ・ムーアなどと噂が立っていた。その中のひとりはプレイボーイのモデル、ニコール・ナレイン。2005年、彼女は、当時ふたりで撮影したセックスビデオをインターネットに配信する。 ファレルは、ナレインとインターネット会社を別々に訴訟し、ビデオを自分に引き渡すことを要請。ナレインは、このビデオを公開しないという約束はしていないこと、また自分にはこのビデオの著作権があることを理由に対抗した。結局、示談で解決したが、 条件は明らかにされていない。

それから何年も経って、BBCのインタビュアーに「あの事件から教訓を学ばれたでしょうね」と聞かれたファレルは、「ああ、学んだよ。次は僕自身が素材を持ち帰るよ」とジョークで答えている。

ハルク・ホーガン

元プロレスラーのホーガンが親友の妻とセックスをする映像が、本人の知らないまま撮影されたのは、2006年のこと。2012年、何者かが、ウェブサイト会社ガウカー・メディアに、そのDVDを送りつける。ガウカーがその一部である1分40秒ほどの映像を公開すると、700万ものヒットがあった。

ホーガンは、プライバシー侵害で、ガウカーを訴訟。ガウカーは、公開したのはニュース性があるからであり、言論の自由の範疇だと主張したが、2016年3月、陪審員は、ガウカーに1億1,500万ドル(約130億円)の支払いを言い渡す。しかも、同年5月には、裁判長が、それを上回る1億4,000万を最終金額として言い渡した。

ガウカーは同年6月、会社更生法を申請し、ユニビジョン・コミュニケーションズが買収する。同年11月、ユニビジョン傘下のガウカーがホーガンに3,100万ドルを払うことで、すべて解決した。

こんなにも長い期間、ホーガンが弁護士代を払いつづけることができたのは、 ビリオネアのピーター・シールが彼に経済的援助をしたからだ。PayPalの創設者でFacebookの役員でもある彼は、ゲイであることをガウカーに書かれたことを恨みに持っており、ガウカーを潰す良い機会だと、ホーガンに1,000万ドルもの援助をしたとのことである。

ジェニファー・ロペス

3度の離婚暦を持つロペスが最初の夫オジャニ・ノアと結婚したのは、1997年。ハネムーンで撮影したセックスビデオを公開しないことは、 秘密保持条件に含まれていたが、昨年、ノアがそのビデオを売り込もうとしていることがわかり、ロペスは1,000万ドルを求める訴訟を起こす。ノアは、2007年にも告白本を執筆しようとして訴訟沙汰になっており、ロペスが勝訴した。ロペスとノアが結婚していたのはたった11 ヶ月。20年前の亡霊を、ロペスは今も振り払えないでいるのである。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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