トランプ政策の影響、スーパーボウルのCMにも

(写真:ロイター/アフロ)

この日曜日は、スーパーサンデー。みんなが自宅や友人宅、あるいはスポーツバーでスーパーボウルを見るため、道路も店も、どこも一時的にがらがらの状態になる。ドミノピザが1年で一番忙しいのも、この日だ。

フットボールに興味がない人にとって、スーパーボウルの見どころは、コマーシャルとハーフタイムショー(今年のハーフタイムショーはレディ・ガガ)。アメリカで最高の視聴率を誇るこのスポーツ中継番組のために、大手企業は、有名広告会社を雇い、特別のCMを製作する。それらのCMの感想は即座にツイッターで飛び交い、試合後にはあらゆるところで「一番良かったCMはこれ」といったランキングがつけられたりする。

ところが、今年は、当日を待たずして、すでにいくつかのCMが論議を呼ぶという事態が発生している。トランプが大統領になってしまったことで、意図する、しないに関わらず、政治的なニュアンスが生まれてしまったのだ。

そのひとつは、バドワイザー。バドワイザーは昔からスーパーボウルの大手スポンサーで、思い出に残るCMをいくつか作ってきている。今年のCMは、アメリカでビールを醸造するという夢を追って、ドイツから移民してきた創業者アドルファス・ブッシュに焦点を当てるもの。1分間のCMには、アメリカに到着した彼が、「お前はここにいらないんだよ」「母国に帰れ」と言われるシーンが出てくる。CMがネットで公開されて以来、「リベラルのプロパガンダだ」「ボイコットしよう」など、トランプ支持者が声を上げているが、バドワイザーの広報は「政治的なメッセージはない」と主張している。

次に、メキシコ産アボカドのCM。ワカモレ(アボカドディップ)とチップスはスーパーボウルパーティの定番スナックでもあり、メキシコのアボカド生産者団体は、毎年CMを打ってきた。だが、トランプがメキシコからの輸入品に大きな関税をかけると言い出し、一般人たちが「アボカドの値段が上がってしまう」と騒ぐ今、これもまた視聴者に政治のことを考えさせてしまうことになりそうである。

あまりに直接的すぎて修正を強いられたのが、材木と建築関連用品の会社84ランバーのCMだ。メキシコの母娘が荷物をまとめて旅に出る様子を描くものなのだが、最初のバージョンには国境の壁があり、フォックスチャンネルから、その部分の削除を求められることになった。新しいバージョンの最後には「続きはjourney84.comで見られます」とある。サイトを訪ねてみると、続きを見られるのはアメリカ時間5日からとなっており、まだ見られなかったのだが、「テレビ放映には論議を呼びすぎる内容が含まれています」と書かれていた。バドワイザーと対象的に、このCMを製作した広告会社は、政治的メッセージがあると認めるコメントをしている。

エミー賞やゴールデン・グローブなど、もともとリベラルで知られるハリウッド系のイベントでは、反トランプ発言が堂々と行われてきた(激しくなる一方のハリウッドとトランプの対立。オスカーはどうなる?)。今月末のオスカーでも、トランプをバッシングするコメントは、おそらくたくさん出てくると思われる。しかし、スーパーボウルは国民的イベント。視聴者の半分はトランプに入れた人たちだ。みんなが集まって楽しむべき年に一度の祭典で、アメリカの二極化を強調するようなことはしたくないというテレビ局の意向は、わからなくもない(テレビ局のほかに、NFLもCMの内容に口を出す権利がある)。

今年のスーパーボウルの30秒スポット料金は、過去最高記録の500万ドル弱。さらに、CMの制作には、300万ドルから500万ドル、あるいはそれ以上がかかる。スポンサーにしてみたら、そこまでの大金をかけたあげくに消費者を怒らせることになっては、元も子もないだろう。もっとも、人々の印象に強く残り、自分たちがターゲットとする人々にいつまでも語り続けてもらえるのであれば、意味がある。84ランバーは、そこを狙っているのかもしれない。

ところで、スーパーボウルでは、ハリウッド映画のCMも多数放映される。今年は「ゴースト・イン・ザ・シェル」「ローガン」「ガーディアン・オブ・ザ・ギャラクシー:リミックス」「ワイルド・スピード ICE BREAK」「トランスフォーマー/最後の騎士王」などの予告編が流れる予定だ。いかにもスーパーボウルの視聴者層にアピールするアクション大作揃いだが、だからといって必ずヒットにつなげられるとは限らない。昨年は、「デッドプール」「ジャングル・ブック」「ズートピア」が大成功につながった一方、「Zoolander No.2(日本未公開)」「BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント」「アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅」は、お金の無駄遣いに終わっている。