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逆訴訟でわかったジョニー・デップの生活ぶり:ワイン代は月339万円、ボディガード代は月1,700万円

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
(写真:REX FEATURES/アフロ)

カリブ海には島を、南フランスには村をまるごとひとつ。

ジョニー・デップの大きな買い物は世間をしばしば驚かせてきたが、彼の暮らしぶりが、米西海岸時間本日1月31日に裁判所に提出された訴状で、より明らかになった。

訴訟を起こしたのは、2週間前、デップに訴訟を起こされたビジネスマネジメント会社ザ・マネジメント・グループ(TMG)。デップは1999 年から17年間、TMGにお金の管理を任せてきたが、昨年、彼らを解雇している。彼らが無断で自分のお金を貸したり、所得税を確定申告日までに払わなかったせいで、最低でも2,500万ドル(約28億円)の損失が出たというのがデップの主張だった。それを受けて、今度はTMGが逆訴訟をしたわけだ。

31ページにわたる訴状には、過去17年間、デップがいかに贅沢な暮らしぶりをし、プロの言うことを聞かないで散財を続けてきたかが記されている。デップの収入はたしかに多いが、所得税を50%近く取られる上、エージェントに収入の10%、弁護士に5%、TMGに5%を払わなければならない。彼の使うお金は収入を超えており、計画的な貯金はほとんどしておらず、借金もあると、訴状は明かしている。

TMGによると、デップは、以下のようなお金の使い方をしている。

1ヶ月の生活費は200万ドル(約2億2,600万円)以上:これは、現在の彼の収入の域を超えるもの。手持ちの現金は6ヶ月もたせるのがせいぜいな状況。

所有する不動産は14カ所、車は45台、豪華ヨット1隻:カリブ海の島、フランスの村に加え、デップはL.Aに複数の家や、ケンタッキーに農場などを持っている。それらを購入し、改装工事をし、家具を入れるのに、合計7,500万ドル(約85億円)がかかった。当然、それらには固定資産税がかかる上、維持するためにかなりのスタッフを雇わなければいけない。デップはまた、ヨットの購入と改良に1,800万ドルを費やしている。

1ヶ月のワイン代は3万ドル(約339万円):高級ワインを好み、自分用に海外から頻繁に取り寄せている。

24時間のボディガード代は月15万ドル(約1,700万円)以上:デップは、自分と家族に、365日、24時間のボディガードをつけている。ボディガードは子供たちの学校にも、旅行にも、必ず付き添う。このほかに、デップは全世界に40人の従業員を抱えており、人件費は月に最低でも30万ドル(約3,390万円)かかる。

プライベートジェット代は月に20万ドル(約2,260万円):パパラッチの問題もあり、デップは普通の飛行機に乗ることを非常に嫌がるらしい。だが、毎回必ず誰かがそのお金を出してくれるわけではなく、低予算の映画では、プライベートジェット代がギャラを上回ったこともあるという。

母のための家の家賃は月3万5,000ドル(約395万円):L.A.に豪邸をいくつも持っているにも関わらず、昨年亡くなった母のために、デップは別に家を借りた。母に自分の生活ぶりや行動を知られたくないというのが理由とのことだ。

アートとギターの膨大なコレクション:アートのコレクションには、ウォーホル、クリムト、モジリアーニなど有名な画家の作品も多く含まれ、ギターは70台、マリリン・モンローやマーロン・ブランドなどのメモラビリアも多数所有する。それらの保管にも、相当なお金かかる。

この訴訟はまた、いくつかの謎の答を提供もしている。

ひとつは、南フランスの不動産を、2015年6月に2,600万ドル(約29億円)で売りに出したがすぐに引っ込め、昨年再びその倍の5,500万ドルで市場に出したことだ。この行動の背後にどんな動機があるのか想像しかねたが、今になって、TMGはデップと2015年5月に彼のL.A.ダウンタウンの家でミーティングを持ち、借金返済のためにこの物件を売るよう説得していたことがわかった。しかし、TMGが雇ったフランスの不動産業者は、この物件の価値を1,350万ドルと判断したのに、デップはその倍で売ると主張した上、興味をもつ人が現れても、見せることすら拒否していたらしい。デップはまた、その頃、いくつかのアートを手放してもいるのだが、それもまた経済的な理由だったのだろう。

訴状は、アンバー・ハードとの結婚で、婚前契約(Prenup)を交わさなかったことにも触れている。アメリカの金持ちは、離婚になった場合、相手にごっそりとお金をとられることにならないよう、結婚前にPrenupを結ぶのが普通で(ジョニー・デップの離婚で一番の驚きは、彼がprenup(婚前契約)を交わしていなかったこと)、TMG、デップの弁護士、デップの姉らは、当然、彼にもそうするよう説得したとのことだ。一度は納得したものの、後に気を変えて、彼は結局Prenupなしで結婚してしまったということである。Prenupがあれば、あの短い結婚はもっと簡単に解決していたはずだ。

さらにもうひとつ、今年公開の「パイレーツ・オブ・カリビアン5/最後の海賊」のギャラが、872万ドル(約9億8518万円)であることもわかった。彼はこのお金をすでにもらっている。ギャラの数字をはっきり述べてはいないのだが、TMGは自分たちへの支払いはいつも最後で、払わなければいけないところに払ってしまうと、自分たちの取り分である5%の43万6,000ドルが残らず、もらえないままになっていると記述がある。

デップはTMGにも500万ドルの借金をしており、彼に解雇された昨年、TMGは、この借金の残りを回収するための訴訟を密かに起こした。デップが支払えないとわかっているため、彼の不動産を処分して返済してもらうことを要求するものだ。デップはこの手続きを妨害する目的で訴訟を起こしたのだと、TMGは主張している。

浪費をやめるよう注意された時、デップは、「どんな状況になっても、直面する覚悟はあるよ。この穴から抜け出す方法はあるとわかっているし、そうするつもりだ」と言ったとも、TMGは述べている。そして今、彼は、こんな事態に直面してしまった。この穴を、彼はどう抜け出してみせるだろうか。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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