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続報:トランプが勝ったら外国に引っ越すと言ったセレブたちが、考えを変えた言い訳は

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
マイリー・サイラスは「トランプを大統領として受け入れる」と投稿(写真:REX FEATURES/アフロ)

米大統領選から、10日がたった。「トランプが大統領になったら外国に移住する」と宣言していたセレブは(http://bylines.news.yahoo.co.jp/saruwatariyuki/20161110-00064288/)」、その後、引っ越す気配を見せていない。

そんな中、保守派のニュースサイト「Breitbart」の編集者ミノ・ヤンノポーロスは、Facebookに、「レナ・ダナムのために、来週出発の、カナダ行き片道ファーストクラスを予約してくれと、旅行会社に頼んだところさ」と投稿した。さらに、ヤンノポーロスは、「Breitbart」の記事の中で、トロントでなくても、カナダの中ならどの都市を選んでくれても良いし、お金は自分が払うとコメントしている。

ダナムはヒラリー・クリントンの絶大なる支持者で、「トランプが勝ったらバンクーバーに引っ越す。あそこには素敵なところがいっぱいあると知っているし、仕事もできるし」と語っていた。ところで、ヤンノポーロスは、この夏、「ゴーストバスターズ」のレスリー・ジョーンズに対するさまざまな人種差別、女性差別のツイートを送って、ツイッターから出入り禁止になった人物である(http://bylines.news.yahoo.co.jp/saruwatariyuki/20160723-00060283/)。ヤンノポーロスには3万人以上のフォロワーがおり、この投稿にも現段階で2万人以上が「いいね」を押している。

ほとんどのメディアがクリントン支持を表明する中、「Breitbait」は一貫してトランプ支持を貫き、今週、同社の会長でヤンノポーロスの上司にあたるスティーブ・バノンは、トランプ政権の主席戦略官に任命された。ヤンノポーロスのオファーに対し、ダナムは何もコメントをしていない。

サイラス、クランストンは「トランプを大統領として受け入れる」

一方、「万一、トランプが勝った場合のために、もうスペインに家も買っているのよ」「トランプが勝ったら海外に移住すると言っているセレブリティはたくさんいるけれど、どうせやらないでしょう。でも私は、本当にやるから」と言っていたコメディエンヌのチェルシー・ハンドラーは、Netflixの自らの番組で、涙ながらに、「ヒラリーが敗北演説をできたのだから、私もテレビ番組くらい乗り切れる。私は、あきらめないというメッセージを伝えなければいけない」と語った。さらに、「今、本当にスペインに引っ越したいの。でも私のオフィスのスタッフ全員に、『あなたの声はみんなに届くんです。あなたはここにいないとだめなんです』と言われたの」と、とどまることにした背景を述べた。

やはり「もしトランプになったら海外に引っ越す。私は本気じゃないことは言わないわ」と宣言していたマイリー・サイラスも、ツイッターに投稿したビデオで、「私はバーニー・サンダースを熱心に支持していた。そしてヒラリーも。彼女は本当にこの国を愛している。彼女はこの国を良くするために全人生を捧げてきたの」と涙を流しながら語った。そして、「私はみんなのことを受け入れる。ドナルド・トランプ、あなたのことも受け入れます。アメリカの大統領としても。私は希望をもちたいから。希望にあふれるヒッピーでありたいから」と続けた。

同様に、ブライアン・クランストンも、「ショックだし、すごくがっかりしているが、大統領に選ばれた彼が、傷ついたこの国をひとつにしようとしてくれることを願っている。心から彼の成功をお祈りします」とツイートした。彼は、選挙前、カナダのメディアのインタビューで、質問者に「もしトランプが大統領になったら、カナダで長い休暇を取りたいと思いますか」と聞かれ、「もちろん。でも休暇じゃないよ。引っ越すよ。そうなるとは思えないけど。そうならないことを願う」と答えていた。

BBCのインタビューで、「スペイン語はできないけれど、トランプが大統領になったらスペインに引っ越すわ」と語ったエイミー・シューマーは、今になって「あれはただのおふざけ」と言っている。インスタグラムへの投稿で、彼女は、「ロンドンでのインタビューだったし、ノリよ。ニュースにするようなことじゃなかったの。『さあ、荷造りして出て行ってください』という人は、あの人種差別者でゲイ差別者で女性蔑視の男に投票した人たちと同じくらい腐っているわ」と書いた。さらに、「あいつに投票した人たちへ。あなたたちは弱者よ。あなたたちは間違った情報を信じていて、正しい情報を求めようともしなかった。(中略)今、あなたたちの望みがかなったわけで、どうなるか見えてくるわよ。文字通りにね。私は怒りに燃えている」と、投票者を非難するコメントを続けている。

トランプ派は彼らの発言を物笑いの種に

結果が出た今、トランプの支持者は、クリントンが勝つという自信のもとにこのような発言をしていたセレブを、物笑いの種にしている。ツイッターには「マイリー・サイラスとレナ・ダナム、カナダはいかがですか?」「エイミー・シューマー、マイリー・サイラス、もう飛行機のチケットは押さえましたか?荷造りのお手伝いをしましょうか?」「エイミー・シューマー、ウーピー・ゴールドバーグ、レナ・ダナムら『トランプは私の大統領じゃない』人たちがやって来るのが嫌で、カナダが壁を作ろうとしているという噂があるそう」などのコメントが見られる。

今のところ、カナダが壁を作る必要は、なさそうだ。ハリウッドの業界人はハリウッドにとどまり、これからも仕事を続けていくだろう。それでも、あからさまにクリントンを支持してきたハリウッドは、これからどうなるのかの不安に揺れている。今の段階では憶測にすぎないが、この後は、政治をテーマにした暗いインディーズ映画や、逆に不安を払拭すべく、エスケープを与えてくれる娯楽映画が増えるのではないかという声が聞かれる。しかしそれはあまりにも曖昧で大雑把。ひとつだけ明らかなのは、これからの4年間、ホワイトハウスでのパーティが、ハリウッドスターで満たされることはないだろうということだろうか。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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