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トランプ当選:ジェニファー・ローレンス「今日、安全で権利を認められているのは白人の男だけ」 

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
ジェニファー・ローレンスはトランプ大統領誕生のショックをエッセイに綴った(写真:ロイター/アフロ)

「これが事実なの?どんなに一生懸命努力をしても、どんなに有能でも、男じゃなかったら、結局のところダメなの?私たちは、今、それを学んだの?」

トランプ大統領誕生のショックがハリウッドを揺さぶる中、ジェニファー・ローレンスが、ウェブサイトViceにエッセイを寄稿した(https://broadly.vice.com/en_us/article/dont-be-afraid-be-loud-jennifer-lawrence-on-what-we-do-now?utm_source=broadlyfbus)。

「この国は移民で成り立ってきた。なのに、今、安全で、権利を認められていて、尊敬されていると感じられるのは、白人の男だけ」というローレンスは、「あなたが女性で、どんなにがんばっても限界があるのだと感じているのだとしたら、なんと言ってあげていいかわからない。もし私があなただったとしたら、自分の娘になんと教えるのか、わからない。希望を持ちましょう、将来のためにがんばりましょうと言うしかない」と続けている。さらに、「フェアじゃないとわかったのだから、隣にいる男の2倍がんばらないと。職場はフェアじゃないの。だから、負けることが不可能な状態にしないと。それでも、ヒラリーみたいに失敗するかもしれない。だけど、ヒラリーみたいに他人にインスピレーションを与え、大事なことをやり遂げてみせられるかもしれない」と述べた。最後は、「移民の人、有色人種の人、LGBTQ+の人、女性、恐れちゃダメよ。声を上げましょう」という呼びかけで締めくくっている。

熱心なクリントン支持者だったレナ・ダナムは、米西海岸時間11日(金)、自身のウェブサイトLennyLetterで(http://www.lennyletter.com/politics/a608/dont-agonize-organize/)、選挙の朝は、「まるで花嫁のような気持ちで起きた」と振り返っている。クリントンが負けるなどと思いもしなかった彼女は、この夜はシャンペンで祝福し、この日のことを、将来生まれてくるわが子に語るのだと想像を膨らませていた。しかし、開票作業が始まってしばらくすると、嫌な予感がし始める。「フロリダの数字を見ながら、自分の顔を触って、自分が泣いていることに気づいた」というダナムは、ボーイフレンドに、「家に帰りたい」と言ったのだという。家に帰ると、ふたりは激しく泣いた。

18か月、クリントンの選挙運動に積極的に関わってきた中で、さまざまな嫌がらせを受けたとダナムは告白している。「私たちは女性の大統領を望んでいた。自分たちの肉体を自分たちでコントロールしたかった。賃金の平等を望んでいた。そんな私たちは嫌な人と見られてしまった。ターゲットにされてしまった」。誰よりも多く攻撃を受けたクリントンに対し、ダナムは「私たちの娘たちのお手本になってくれてありがとう」「30年も人々のために尽くしてくれてありがとう」「今、私たちを見捨てないでくれてありがとう」と感謝の気持ちを述べている。

やはりクリントン支持を公言していたエレン・デジェネレスは、コメディアンヌらしく、もっと明るいアプローチを取った。

自らのトーク番組で、デジェネレスは、「がっかりしている人はたくさんいるわよね。でも私の仕事は、人を楽しませること。私はできるかぎりそれをやるわ。あなたたちのことが大好きだし、高級車も好きだし」と言って笑いを取った。しかし、その直後、「エレノア・ルーズルトも、『暗闇を呪うよりもキャンドルを灯したほうがいい』と言ったわ」と述べて、拍手を受けている。最後は、海辺で蛇に襲われたイグアナがうまく逃げ出す映像を見せ、「私たちもこうするべき。私たちにとっての蛇が何であるにしろ、赤ちゃんのイグアナが逃げ出せる方法はあるの」と、前向きな言葉で締めくくった。

しかし、彼女らのような確固たるクリントン信奉者は、実際のところ、少数派だったようだ。トランプは絶対に嫌だと思う人の中には、あくまで消去法でクリントンを選ぶ人が多く、その「情熱のなさ」が選挙結果に影響を与えることは、4ヶ月も前にマイケル・ムーアが予測していた(http://bylines.news.yahoo.co.jp/saruwatariyuki/20161110-00064275/)。トランプが驚きの勝利を手にした今、バーニー・サンダース対ドナルド・トランプだったら結果は違っていたのではないかという声も、ちらほら聞かれる。「USA TODAY」紙にその質問をされたサンダースは、「試合の翌日に偉そうなことを言うのは簡単だ」とフットボールを引き合いに出し、「私にはわからない。誰にもわからないだろう。ただ、その努力をさせてもらえるチャンスをもらえなかったことを、私は残念に思っている」と語った。クリントンに敗れた後、サンダースはクリントンのために積極的にスピーチを行っている。それでも、大勢の熱狂的な支持者に囲まれていたサンダースだけに、興奮の足りなさを実感はしていたようだ。「USA TODAY」に対し、サンダースは、「私たちが願ったほど、彼女という候補者に強い情熱と興奮を感じた人の数は、多くなかった。また、民主党に投票すべきである白人の労働者階級の人たちの多くが、トランプに票を入れてしまった」と、クリントンの敗因を分析している。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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