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ブランジェリーナ離婚:アンジー、アンバー・ハードの弁護士を雇う

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
アンジェリーナ・ジョリー最大の目的は子供たちの単独親権(写真:ロイター/アフロ)

アンジェリーナ・ジョリーが、最強のチームを結成しようとしている。

すでに、ハリウッドのトップ離婚弁護士ローラ・ワッサーを付けているジョリーは、最近、さらに、ピアース・オドネルとバート・フィールズという、超有名な法廷弁護士を雇ったのだ。オドネルは、アンバー・ハードが、ジョニー・デップとの離婚で、最後のひと押しのために追加で雇った人(http://bylines.news.yahoo.co.jp/saruwatariyuki/20160816-00061179/)。ワッサーは、デップとハードの離婚でデップ側の弁護をしており、つい1ヶ月半前には敵同士だったふたりの弁護士が、今度はジョリーのために力を合わせることになった形だ。

以前の記事でも書いたが、オドネルは、80年代末に、「星の王子ニューヨークへ行く」は自分の書いたものの盗作だとして、コラムニストのアート・バックウォールドがパラマウント・ピクチャーズを訴えた時、バックウォールドの弁護をし、見事、勝訴に持ち込んで注目されている。最近は、NBAチーム、L.A.クリッパーズのオーナーであるスターリング夫妻が、チームを売却するかどうかで大揉めした際、売却を願う妻シェリーに雇われ、夫ドナルドの意志に反して、チームは売却されることになった。この件で、オドネルは、ドナルドに、「お前を殺してやる」とまで言わしめるほど憎まれている。

そして3人目のフィールズはというと、この人自身がセレブと言ってもいいくらい、ハリウッドでは名を知られた存在だ。

ハーバードのロースクールを卒業したフィールズは、現在87歳。その長いキャリアで彼を頼った人には、マイケル・ジャクソン、ジェームズ・キャメロン、ダスティン・ホフマン、トム・クルーズ、ウォーレン・ビーティ、ジョン・トラボルタなどが含まれる。

とりわけ記憶に残るのは、ドリームワークスを創設するためにディズニーを離れたジェフリー・カッツェンバーグが、「ライオン・キング」など自分がディズニーで製作したアニメ作品の収益の一部を今後も自分は受け取れるべきだと、1999年にディズニーを訴訟したケースだろう。この時、フィールズは、当時ディズニーのCEOだったマイケル・アイズナーが、カッツェンバーグについて「俺はあの小人が嫌いなんだよな」と言ったという事実などを持ち出し、アイズナーを震わせている。その結果、カッツェンバーグは、相当なお金を手にすることになったのだが(具体的にいくらかは公表されていない)、それからまもなく、ハリウッドを騒がせたアンソニー・ペコリーノによる電話盗聴事件に、フィールズの事務所も関与していたことが明らかになる。裁判で勝つために相当汚い手を使っていた疑いがかかり、フィールズの信用は、一時、がた落ちとなるかと思われたが、腕前自体を信頼する人は、まだ十分にいたということである。

オドネルもまた、不正政治献金の容疑で、2011年、6ヶ月の営業停止処分を受けた経歴がある。一方で、ジョリーの主要弁護士であるワッサーの経歴は完璧だ。ジョリーは、2番目の夫ビリー・ボブ・ソーントンとの離婚でワッサーを雇っており、彼女とは良く知る仲。ワッサーは、アメリカ中の注目を集めたキム・カーダシアンとクリス・ハンフリーズの離婚でカーダシアンを弁護し、結果的にカーダシアンが何も払わないでいいような結果に持ち込んでいる上、ライアン・レイノルズ、アシュトン・カッチャー、クリスティーナ・アギレラなど、多数の離婚交渉を担当しては成功させている。

ジョリーがワッサーに依頼したこと自体は、まったくもって納得がいくが、これら究極に強気な行動で知られるふたりの法廷弁護士をさらに雇ったというのは、6人の子供の親権をめぐって行われるであろう裁判に、最高の状態で挑んでやるという姿勢を見せるためと思われる。ワッサーは、ハードの審問に関しても、それだけのために、刑事被告人弁護を専門とするブレア・バークを雇っており、ワッサーの助言もあったのだろうと推測される(http://bylines.news.yahoo.co.jp/saruwatariyuki/20160807-00060834/)。

一方で、先月19日、ジョリーに不意打ちで離婚申請をくらったピットは(それ以前から離婚についての話は出ていたようだが、彼女が本当に申請をしたのは驚きだったようだ)、一歩遅れて数日後に、ランス・スピーゲルを離婚弁護士に雇っている。現在70歳のスピーゲルは、エヴァ・ロンゴリア、ラッセル・シモンズ、チャーリー・シーンらの離婚を担当してきている。

2005年に関係を公にしたピットとジョリーは、結婚という形式にはこだわらないと語り続けてきたが、子供たちに押されて、2014年に結婚した。結婚に当たっては、非常に細かな部分まで決められた婚前契約(Prenup)が交わされているということで、資産配分はすんなりいくと見られている。離婚申請書類でも、ジョリーは、配偶者サポートや養育費をいっさい求めていない。それでも、ピットが養育費をいっさい払わないということは考えづらく、そういったことも離婚条件交渉に含まれると思われるが、これまでのジョリーの行動から明らかなのは、彼女が求めているのがお金ではなく、子供たちの単独親権であるということだ。アメリカでは、相手に相当な問題があると思われる場合以外、裁判所は共同親権を与えることを好む。フィールズがアイズナーの、そしてオドネルがスターリングの、知られたくない部分を露呈していったように、ジョリーはこれから、ピットの知られざる部分を法廷でさらしていくつもりでいるのだろうか。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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