「スター・トレック」のアントン・イェルチンが事故死(アップデートあり)

(写真:REX FEATURES/アフロ)

アップデート:最新情報によると、イェルチンの家の玄関から道にかけては急な傾斜になっているらしい。イェルチンは、家を出て、ジープ・グランドチェロキーに乗ったが、なんらかの理由で、エンジンをかけたまま、ギアをニュートラルに入れて車を降りた。しかし車が後ろ向きに動き、イェルチンは門との間に挟まれたようだ。イェルチンの家には防犯カメラが設置してあり、事故の時の様子が録画されているかもしれないという。

「スター・トレック」「ターミネーター4」などで知られるアントン・イェルチンが、米西海岸時間19日(日)、自宅で死亡しているのが発見された。27歳だった。

発見したのは、イェルチンの友人たち。リハーサルの時間にイェルチンが現れなかったことを心配し、午前1時ごろL.A.のスタジオ・シティにあるイェルチンの自宅を訪れると、彼は、自分の車と、門に取り付けられた郵便受けの間に挟まれて死んでいた。エンジンはかかったままで、ギアはニュートラルに入っていたという。なぜそのような状況に陥ったのかはわかっていないが、彼が車を出て車の後部にいたところ、車が動いたのではないかと見られている。警察によると、誰かと争った形跡はないということだ。

イェルチンは、ソビエト連邦レニングラード(現サンクト・ペテルブルグ)生まれ。フィギュアスケート選手の両親とともに、生後6ヶ月でアメリカに政治難民として移住した。「僕が理解するところによると、ソビエト連邦には、外の世界には何があるのかを見ようとするタイプか、そうでないかの2種類しかいなかった。外に出て、西洋を見て、政府の言っていることが本当かどうかを自分の目で見極めようとするか、そうじゃないかだ。僕の両親は前者だった。彼らは、破かれた雑誌をつなぎ合わせて、そこに何が書かれていたのかを見つけようとする人たちだったよ。だから僕は、子供の頃から、いろんなものを見て、読んで、学ばなければいけないと思ってきた。そんな背景もあって、僕はずっと取り憑かれたように映画を見てきたのさ」と、筆者とのインタビューで、彼は語っている。

幼い頃に演技を始め、「アトランティスのこころ」(2001) でヤング・アーティスト・アワードを受賞。その後、「Alfa Dog(日本未公開)」(2006) 、「チャーリー・バートレットの男子トイレ相談室」(2007) などを経て、2009年、「ターミネーター4」でカイル・リース、J・J・エイブラムス監督でリブートされる「スター・トレック」でチェコフを演じ、大きなキャリアの節目を迎える。「ターミネーター4」の監督はマックGで、ジェームズ・キャメロンは関わっていないが、カイル・リースというキャラクターを創造したキャメロンに敬意を払うため、当時、イェルチンは、ニュージーランドで「アバター」を撮影していたキャメロンを訪ねている。「僕は『ターミネーター』の1作目と2作目が大好きだから、彼に感謝の気持ちを伝えたかったんだ。僕は、彼に、『このキャラクターを創造してくれて、ありがとうございました。あなたの映画は、僕の人生に多大な影響を与えてくれました。僕の子供時代にもです。僕がその一部として関わることを許していただき、ありがとうございます』と言った」と、2009年の筆者とのインタビューで、彼は振り返っている。

2001年には、フェリシティ・ジョーンズと共演した恋愛映画「Like Crazy(日本未公開)」、ジョディ・フォスター監督の「それでも、愛してる」、コリン・ファレル共演のホラー映画「フライトナイト/恐怖の夜」などに出演したほか、「スマーフ」で声の演技も務めた。2013年には「スター・トレック」の続編「スター・トレック/イントゥ・ザ・ダークネス」に、チェコフ役で再び出演。最近は、ジム・ジャームッシュ監督の「オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ」(2013)、犯罪アクション「Broken Horses(日本未公開)」(2015)、「Green Room(日本未公開)」(2015) などに出演している。来月22日には、「スター・トレック BEYOND」の北米公開が控えており、20日にサンディエゴで行われる世界プレミアにも出席する予定だった。

アコースティック・ブルース音楽のファンで、ギターを弾く。一時はパンクバンドを組んでいたこともあり、昨日のリハーサルも、音楽のためだったらしい。

おっとりとした、謙虚で礼儀正しい人だった。競争が激しいハリウッドで、小さい時からやってきたことを聞くと、「たしかに競争はあるのかもしれないが、その役に自分よりふさわしい人がいるならば、僕はむしろ、自分よりその人が演じるのを見たい。僕はきっとその人の演技を楽しませてもらうだろうから。『ゴッドファーザー』のDVDの特典映像に、オーディションの時の様子がある。その中に、ロバート・デ・ニーロがソニーを演じる映像もある。デ・ニーロは天才だが、彼が演じるソニーは、ジェームズ・カーンほどには良くない。なぜならジェームズ・カーンこそソニーだからだよ。でも、ジェームズ・カーンには、若き日のヴィトーは演じられない。あれはデ・ニーロにしか演じられないんだ。誰にとっても、この人こそ完璧、という役があるんだと思う」と答えている。

イェルチンは、彼こそ完璧という役を、短い生涯の中でいくつも演じ、私たちを楽しませてくれた。

ご冥福を心からお祈りする。