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ジョニー・デップとオーストラリア副首相の確執、トーク番組がきっかけで再燃

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

1年前に始まったジョニー・デップとバーナビー・ジョイス豪副首相の確執が終わらない。米西海岸時間23日(月、)デップはテレビのトーク番組でジョイスの赤ら顔を「トマトみたいだ」とバカにし、ジョイスは、「自分はデップのことなど忘れているのに、彼は自分を忘れられないのだ」と応酬したのだ。

デップの妻アンバー・ハードは、昨年5月、デップが「パイレーツ・オブ・カリビアン」5作目を撮影中のオーストラリアに、愛犬2匹を連れて入国。しかし、ハードが法律に従った手続きを取っていなかったことが発覚し、農相バーナビー・ジョイス(ジョイスは今年2月に副首相に就任、現在も農相を兼任している)は、50時間以内にカリフォルニアに送り返さなければ犬を殺すと宣言した。「動物を持ち込む上ではルールがある。許可を取り、隔離期間を経なければいけない。たとえ『セクシーな男』に選ばれたことがある人だとしても、映画スターだからといって法律を破れるのなら、誰も法律を守らなくていいということになる」と、ジョイスは当時、オーストラリアのラジオで語っている。ハードは最長で10年の服役を命じられる可能性もあったが、先月、裁判所の要求する謝罪ビデオを提出して、実刑を逃れた。

この月曜日、デップが深夜トーク番組「Jimmy Kimmel Live!」に出演すると、番組ホストのジミー・キンメルは、いきなりこの謝罪ビデオに言及。「あれは、あなたのこれまでの演技で最高だと、多くの人が言っていますよ」とキンメルがからかうと、デップも、「ああ、僕も反対はしないね。ああいう心情に入っていくために、長い時間をかけて準備しなきゃいけなかったよ」「(撮影中、)笑っちゃって、時々やり直さなきゃいけなかった」などと、謝罪が本心からではないことを堂々と語った。さらに、「あの小さい犬は、明らかにオーストラリアでは危険なんだよね。オーストラリアの道には毒をもつ動物がたくさんいて、いつ死ぬかわからない。だから、この犬がオーストラリアでは問題になるんだよ」とも続けている。キンメルは、「バカな国はアメリカだけじゃなかったというのは、ちょっとほっとする感じですが、オーストラリアの中でもひとりの男がこれを大ごとにしたんですよね」と、話題をジョイスにふった。デップは、待っていたかのように、「彼はトマトと同系交配したみたいに見えるんだよね。いや、批判しているわけじゃないんだよ。僕はちょっと心配だったんだ。爆発するんじゃないかと思って」と、ジョイスの赤ら顔を笑いのネタにしている。

この発言を受けて、オーストラリア時間25日(水、)ジョイスは、「私は彼の頭の中に入り込んでいて、そこで紐やレバーを引っ張っているのさ。私はデップのことなんかすっかり忘れているのに、彼は私を覚えている。私は彼にとってのハンニバル・レクターになっているのだ」と笑い飛ばしたと、「The Sydney Morning Herald」紙は報道した。「私たちは正しいことをしたのだ。オーストラリアの人々は、それをわかっている」とも語ったとのことだ。

法を破ったのはハードであるにも関わらず、ジョイスが最初から「私は、ジョン・クリストファー・デップという名の51歳の紳士、別名ジャック・スパロウにメッセージがあります」とデップに挑戦状を叩きつけてきたのは、知名度の高い彼の名前を使うことで、オーストラリアの検疫の厳しさを、より効果的に世界に知らしめられると思ったからのようだ。やり玉に挙げられたデップは、以来、彼に対する怒りをあらわにしてきた。9月のヴェネツィア映画祭の記者会見では、「汗臭くて太ったオーストラリア人の男の命令で、僕は自分の犬を殺して食べてしまったよ」と発言。その数日後には、「Jimmy Kimmel Live!」で、もしもハードがオーストラリアの刑務所に入ることになったら、「僕もオーストラリアに飛んで、あの男を殺してやる。僕も刑務所に入れるように」とコメントしている。

犬のせいで敵対することになったふたりだが、実はジョイスも愛犬家。彼は、ミスティとサリーという、2匹のミニチュアダックスフンドを飼っている。デップの犬はピストルとブーという名前のヨークシャーテリアだ。別の状況で会っていたら、小型犬のかわいさについて、話をはずませることもあったかもしれない。もちろん、今のデップにしてみたら、想像もしたくないことだろうが。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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