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ジョージ・クルーニーがクリントンの選挙資金集めパーティを主催。参加費はひとり360万円

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
クリントンの資金集めイベントを主催したクルーニー夫妻(写真:ロイター/アフロ)

ジョージ・クルーニーと妻アマルが米西海岸時間16日(土)夜にL.A.で開いたヒラリー・クリントンのための資金集めパーティが、論議を呼んでいる。

会場は、クルーニー夫妻の自宅。チケットは、ひとり3万3,400ドル(約360万円。)さらに高額な、カップルで10万ドル(約1,082万円)のチケットを買うと、良い席をもらえるほか、クルーニー夫妻、クリントンとのレセプションにも入れる。共同ホストは、スティーブン・スピルバーグ夫妻とジェフリー・カッツェンバーグ夫妻。ほかに、エレン・デジェネレス、ジェーン・フォンダ、ソニー・ピクチャーズの会長トム・ロスマンなどが出席した。同じ日の午後にはカッツェンバーグの自宅で小規模なパーティが行われたが、そこにもジェームズ・キャメロンやジョージ・ルーカスら大物が出席したという。クリントンは、その前日にあたる金曜日にもサンフランシスコで同様の資金集めパーティを行っており、そちらにもクルーニーは共同ホストとして名を連ねている。

ハリウッドのパワフルなエリートが集まる、この高額な資金集めイベントの企画が報道されて以来、クルーニーやクリントンに対する批判が数多く寄せられた。民主党の指名争いでクリントンの後追いをするバーニー・サンダースは、CNNのインタビューで、こんなお金が注ぎ込まれるのはばかばかしいと一蹴、「ジョージ・クルーニーのことは尊敬している。彼は優れた俳優だ。だが、これこそまさにアメリカの政治の問題。巨額のお金が、政治を支配している。私と私の支持者は、そこからできるだけ遠ざかろうとしているのだ」と語った。若者や一般の国民に熱狂的に支持されるサンダースは、自分に寄せられる献金は一口あたり平均27ドル(約2,900円)だとし、ウォール街や製薬会社などから巨額な献金を集めているクリントンとの違いを強調してきている。

これらの批判を受け、クルーニーは、テレビ番組「Meet the Press」に出演し、「たしかに常識外れの金額。これほどのお金が政治に注ぎ込まれるのはばかばかしい」と認めた。その上で、彼が集める資金は、クリントンを大統領にするためというより、企業が上限なしで選挙運動に献金してもいいとする法律を覆すために使われるのだと釈明。「あれは最悪の法律のひとつ」というクルーニーは、覆されれば、「自分は二度とこんな資金集めパーティをやらなくていい」と語っている。

このインタビューは事前に録画され、西海岸時間17日(日)に放映されたが、収録の直後から一部の内容が報道され、「批判されるとわかっているから言い訳をしたにすぎない」「偽善だ」などという、厳しい意見を集めることになった。クルーニーの隣人でディスカウントショップ“99 Cent Only”の創業者ハワード・ゴールドは、対抗すべく、クルーニーのイベントと同時に自宅でサンダースのための資金集めパーティを行っている。参加費はひとり27ドルだが、払えない人も入場拒否はされないとうたった。金曜日のサンフランシスコでのイベントでも、会場前にサンダース支持者が集まり、クリントンの車に1ドル札を1,000枚投げつけるという抗議運動が起こっている。

クルーニーは、政治に関心が深いことで、昔から有名。2004年には、テレビジャーナリストの父ニック・クルーニーが、ケンタッキー州から下院議員に立候補した。しかし、映画スターの息子が前面に出てきて応援したことが、“Heartland vs. Hollywood”(アメリカの伝統的な価値観をハリウッドが脅かす)として逆に反感を買うことになり、落選に終わっている。その苦い経験に学び、クルーニーは、2008年と2012年の大統領選挙で、早くからオバマを熱烈に支持しながらも、あえて表には出ず、裏でしっかり支えるという選択を行った。だが、今回は、クリントンのために堂々と名前と顔を貸そうと、また方針を改めたようだ。

クルーニー自身に出馬するつもりはないのかという質問も、長年の間に何度も投げかけられてきているが、そのたびに彼は、「オバマの仕事は大変すぎて、おいしくないよ。自分の仕事のほうがずっと良い」とユーモアで切り返してきた。映画を通じて政治を語ることにも積極的で、6部門でオスカーに候補入りした「グッドナイト&グッドラック」や、脚色部門で候補に上がった「スーパー・チューズデー〜正義を売った日〜」などを監督してきている。しかし、選挙運動の裏側をリアルに描く「Our Brand Is Crisis」は、大統領選で盛り上がる昨年秋というすばらしいタイミングで公開されたにも関わらず、全米8位デビュー、北米興収7億円弱の大失敗に終わった。2005年の同名ドキュメンタリーにもとづくこの映画は、クルーニー自身が主演するつもりで時間をかけて製作準備を行ってきたが、サンドラ・ブロックが興味を示し、主人公は女性に書き換えられ、クルーニーはプロデューサーにとどまっている。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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