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災難続きのナタリー・ポートマン主演作、新たなトラブルでまたもや公開延期に

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト

ナタリー・ポートマンの最新作「Jane Got a Gun」が、まさに踏んだり蹴ったりの目に遭遇している。さまざまなトラブルを経て、やっと9月4日に北米公開を迎えようとしていたところ、配給会社の経営破綻で、またもや公開が宙に浮いてしまったのだ。

「Jane Got a Gun」は、西部劇。ギャングの暴力を逃れて、夫と新しい生活を送っていたジェーン(ポートマン)に再び危険が訪れた時、ジェーンは、元婚約者に、自分たちの身を守ってくれるようお願いするという筋書きらしい。ポートマンが、プロデューサー兼主演女優として今作に関わったのは、2012年のこと。元婚約者役にマイケル・ファスベンダー、悪役にジュード・ロウ、監督には「少年は残酷な弓を射る」のリン・ラムジーが決まり、2013年上半期の撮影開始の予定で、準備が進められた。

しかし、ファスベンダーはスケジュールを理由に降板。そして撮影初日に、ラムジー監督が、映画の方向性をめぐる意見対立を理由に降板した。これを受けて、悪役を演じるはずだったジュード・ロウも出演を取りやめ、撮影は、一時休止状態となる(プロデューサーらはラムジーを契約違反で訴訟し、昨年、示談がなされている。)だが、プロデューサーたちは次の監督にギャヴィン・オコナーを素早く抑えることに成功。ロウの代わりには、一時、ブラッドリー・クーパーに決まったが、彼も降板して最終的にユアン・マグレガーに決まり、撮影は再開した。ファスベンダーが演じるはずだった役は、別の役で出演が決まっていたジョエル・エドガートンが演じることになっている。2013年5月には、激しい競争の結果、レラティビティ・メディアとワインスタイン・カンパニーが、合同で北米配給権を獲得した。

北米公開日は、当初、2014年8月29日に決定。だが、レラティビティは、その週末にピアス・ブロスナン主演の「スパイ・レジェンド」を公開することに決め、「Jane〜」を2015年2月20日に延期する。その後、再び延期され、最初の予定から1年遅い今年9月4日が新しい公開日に設定された。

ところが、7月末、レラティビティが経営破綻。公開を控えた数本の作品は、債権者が担保として差し押さえを要求するなど、大混乱状態に陥った。「Jane〜」は、なんとか製作側がレラティビティから取り戻したが、9月4日の公開は、もはやまったく不可能な状況。合同で配給権を買ったワインスタインは、今作について、今のところ何もコメントしていない。

あれだけの大きなトラブルを経て、ようやく完成したというのに、その矢先に配給会社が倒産とは、あまりにも不運。しかし、ここまで来た以上、プロデューサーたちは、この映画が日の目を見ないで終わることだけは、なんとしても避ける姿勢で、2016年の公開を目指していると言われる。

一方で、やはりポートマンがプロデュースする「Pride and Prejudice and Zombies」は、2009年に映画化が決まるも、監督が3度代わり、ポートマンも主演を降板、配給会社が代わるなどいくつもの波を経て、来年2月5日に、ついに北米公開となる予定だ。2016年は、ポートマンにとって、苦労がようやく実る年になるだろうか。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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