カタールの重要な役割

9月6日の夜遅く、アメリカの外務大臣にあたるブリンケン国務長官が、カタールの首都、ドーハに到着した。8日(水)まで滞在する。

この豊かな湾岸国カタールは、タリバンとの対話の中心地であり、アフガニスタンからの脱出を希望する人々を避難させる活動の中心地でもある。

国務長官だけではなく、オースティン国防長官もドーハに到着。カタールの指導者たちと会談した。上の写真は、アル・サーニ副首相兼外相とアル・アッティヤ副首相兼国防相である。

カタールの要人は以前からタリバンとは密接な関係をもっており、アメリカとタリバンの交流において、何ヵ月にもわたって橋渡し役を務めてきたのだ。

カタールは秋田県ほどの面積。1825年よりサーニー家が支配している。立憲君主制とも絶対王制とも呼ばれる。天然ガスと石油のおかげで、一人当たりのGDPは世界3位(2020年)という豊かな国である。Wikipedia
カタールは秋田県ほどの面積。1825年よりサーニー家が支配している。立憲君主制とも絶対王制とも呼ばれる。天然ガスと石油のおかげで、一人当たりのGDPは世界3位(2020年)という豊かな国である。Wikipedia

最後のアメリカ人責任者が8月30日にアフガニスタンから撤退したあと、カブール空港に飛行機を着陸させた最初の外国便は、カタール航空だった。カタールの技術専門家チームを乗せていた。

タリバンの人たちには、空港を運営する技術がない。そのため、支援を依頼したのだった。

カタールの外務大臣の特使であるムトラク・アル・カフタニ(Mutlaq Al-Qahtani)氏は、カタールのアルジャジーラ・テレビ放送に、アフガニスタンから出演した。

そして「今から24時間から48時間のうちに、人道支援物資が、カブール空港やその他の機能している空港を経由して入ることができるよう、人道的な回廊が開かれることを期待しています」と述べた

アル・カフタニ氏。写真はトランプ政権時代の2020年9月12日、ドーハで行われたアフガン親米政府とタリバン反政府勢力(当時)との会談の開会の挨拶をしているところ。
アル・カフタニ氏。写真はトランプ政権時代の2020年9月12日、ドーハで行われたアフガン親米政府とタリバン反政府勢力(当時)との会談の開会の挨拶をしているところ。写真:ロイター/アフロ

そして、タリバンが政権を取ってから約3週間後の3日(金)、同国の航空会社であるアリアナ・アフガン・エアラインズが、国内線の運航再開を発表した。

国営航空会社の幹部であるTamim Ahmadi氏は、「タリバンと航空当局から許可を得ており、今日中にフライトを再開する予定だ」と語った。アリアナは、非常に少ない、時代遅れとも言える航空機を保有している。米国とEUでは飛行が禁止されている。実際には、5日までには再開したという

(トルコも、協力していることを前面にうち出し始めている)。

現在、アメリカや欧州は、アフガニスタンの外交官をドーハに移している。日本の外交団も、トルコのイスタンブールから移転している。

ブリンケン国務長官は、タリバンの報復の危険にさらされているアフガニスタン人や外国人を避難させる役割を果たしたカタールに対し、「深い感謝」を表明すると述べた。

国務長官によると、大規模な空輸で避難させた約12万3000人のうち、75〜80%は「危険にさらされているアフガニスタン人」だった。このうち5万5000人以上が、作戦の主要な後方基地であるドーハを通過したという。

同時に、国務長官は、まだ承認するかどうか保留中の「新政府」が「真に包括的なものであり、タリバン以外の人々が参加し、アフガニスタンのさまざまなコミュニティや利害関係者を代表するものであることを望んでいます」と述べた。しかし、この未来の政府の「行動」と「政策」が、政府の構成と同様に重要であると警告した。

9月3日、ワシントンの国務省で行われた記者会見で、アフガニスタンについて語るアントニー・ブリンケン米国務長官。
9月3日、ワシントンの国務省で行われた記者会見で、アフガニスタンについて語るアントニー・ブリンケン米国務長官。写真:代表撮影/ロイター/アフロ

国務長官が、タリバンの代表者などと直接会うことかどうかは、言及しなかった。

「国務長官が、タリバンの指導者と国益にかなう話をする必要があればそうするだろうが、今はその段階ではない」と、米政府高官は記者団に語ったという。

また、オースティン国防長官は続いてバーレーン、クウェート、サウジアラビアを訪問する予定である。

ドイツで20ヵ国の閣僚と会議

ブリンケン国務長官は、その後ドイツ南西部のラムシュタインに移動し、ドイツのハイコ・マース外務大臣と共同議長で開催する、リモート会議を行う予定だ。

ラムシュタインの米軍基地内に、別のトランジットセンターが設置されているという。

8月21日、ラムシュタイン空軍基地に着陸した米空軍のC-17輸送機から、機内で出産したアフガン人の母親が家族と一緒に降りてくるところ。医療支援員が手助けしている。
8月21日、ラムシュタイン空軍基地に着陸した米空軍のC-17輸送機から、機内で出産したアフガン人の母親が家族と一緒に降りてくるところ。医療支援員が手助けしている。提供:U.S. Air Force/ロイター/アフロ

ラムシュタインには、米軍欧州・アフリカ空軍 (USAFE-AFAFRICA)が置かれている基地がある。北大西洋条約機構(NATO)の航空司令部も、同地に存在する。

ラムシュタイン空軍基地は、ドイツ南西部ラインラント=プファルツ州にある。今後は基地内に「NATO宇宙センター」を設置することで、昨年10月に合意している。Googlemap
ラムシュタイン空軍基地は、ドイツ南西部ラインラント=プファルツ州にある。今後は基地内に「NATO宇宙センター」を設置することで、昨年10月に合意している。Googlemap

約20ヵ国の閣僚が参加するが、これはアフガン危機で生まれた「コンタクト・グループ」とでも呼べきグループであるという

国務長官によると、米国は、タリバンとの「コミュニケーション・チャンネル」を維持している。ドイツでは、今後の避難のあり方や、深刻な人道的危機にさらされている国に必要な支援について、議論する予定である。

米国とその同盟国は、タリバンに対し、国外退去を希望するすべての人々の「安全な」退去だけでなく、テロとの闘い、人権(特に女性)の尊重などの約束を思い出させるつもりであるという。

一方で、欧州連合(EU)は、米国とは異なり、カブールにプレゼンス(存在・駐留・実態)を維持したいと考えている。

EU諸国は、「安全保障上の条件が許せば」カブールに欧州のプレゼンスを維持することを決定したと、EUの外交と安保の長であるボレル上級代表が述べたのだ。

EUのボレル上級代表。バイデン大統領より4歳年下の74歳。写真は4月ブリュッセルにて。
EUのボレル上級代表。バイデン大統領より4歳年下の74歳。写真は4月ブリュッセルにて。写真:代表撮影/ロイター/アフロ

スロベニアで開催されたEU外相会議の後、報道陣に対し、「我々は、カブールでのプレゼンスを含め、タリバンとの接触を調整することにした」と言った。目的は、アフガニスタンからの脱出を希望する人々の避難を継続することだという。

EU27ヵ国は、8月30日(火)、加盟国の内相会議で、タリバンから逃れてきた難民の受け入れを支援することを約束した。同時に、自国への移民の大量流入を避けるために、アフガニスタンの近隣諸国との協力が大事だと考えている。

アフガン難民を最も多く受け入れているのは、パキスタンとイランである。

「プレゼンス」というのは、おそらく代表部や大使館のようなものだと思う。これは大変難しい問題をはらんでいる。

世界中でタリバン政権を、正式なアフガニスタンの政府であると承認した国は、まだない。ただ、承認しているか否かは、大使館が存在して外交官がいるか否かは、一つの重要なポイントとなる(決定的とまではいえないかもしれないが)。

「プレゼンス」が何を意味するのか、あいまいである。それにEUは「人道支援のためである」ことを強調している。

世界各国はタリバン政権を承認するのか、承認とはそもそも何か、そして欧州とアメリカの不協和音はどうなっているか等、これらの問題は、追って記事を書く予定である。

国連の動き

国連は「人道的大惨事」の到来を警告、続いて2日(木)にアフガニスタンの北部と南部への人道支援便を再開した。

国連の発表によると、同国ではすでに約1800万人が悲惨な状況にあり、その数はまもなく倍増する可能性があるという。

8月16日、ニューヨークの国連で、アフガニスタンについて緊急に開かれた国連安全保障理事会で演説するアントニオ・グテーレス国連事務総長。72歳。
8月16日、ニューヨークの国連で、アフガニスタンについて緊急に開かれた国連安全保障理事会で演説するアントニオ・グテーレス国連事務総長。72歳。写真:ロイター/アフロ

グテーレス国連事務総長は、人道支援を強化するため、13日(月)にジュネーブで加盟国間の会議を開催するという。

今度の会議で国連は、「救命のための人道的活動を継続できるよう、資金の急速な増加を求める」と、ドゥジャリック広報官が3日(金)に発表した。

カブールで開かれた国連の会合。左にグリフィス氏と国連側、右にバラダル氏とタリバン側が座る。UN Infoより。
カブールで開かれた国連の会合。左にグリフィス氏と国連側、右にバラダル氏とタリバン側が座る。UN Infoより。

また、国連のグリフィス事務次長(人道問題担当)は5日カブールで、タリバンの政治部門トップ、ムラー・バラダル氏や幹部たちと、人道問題について会合した。

「必要としている何百万人もの人々に、公平で独立した人道支援と保護を提供する」ことを改めて表明し、人道コミュニティの関与を改めて表明したという。

さらに、グリフィス氏は「援助物資の提供における女性の重要な役割を強調し、すべての関係者に女性の権利、安全、幸福を確保するよう求めた」とも述べた。

アフガニスタン当局は、人道支援者の安全性、人々への人道的アクセスや、男女を問わない支援者の移動の自由を約束している。また、支援物資を確実に届けるために、人道支援団体と協力することを約束した

支援の動きはすでに起きている。

例えば、アラブ首長国連邦は、「緊急医療・食料援助」を積んだ飛行機をアフガニスタンに送る予定である。ただ、どの地域に送るかは明記されていない。同国外務省によると、「アフガニスタンでの最近の出来事以来、初めての人道的フライト」とのことである。

8月28日、アラブ首長国連邦のアブダビにあるエミレーツ・ヒューマニタリアン・シティに到着したアフガニスタンからの避難者たち。
8月28日、アラブ首長国連邦のアブダビにあるエミレーツ・ヒューマニタリアン・シティに到着したアフガニスタンからの避難者たち。写真:ロイター/アフロ

アフガニスタンの「何千もの家族」を対象とした援助は、公式声明を引用して公共WAM通信が伝えたところによると、「兄弟であるアフガニスタンの人々に包括的な支援を提供する、アラブ首長国連邦が果たす人道的役割の一環である」という。

声明によると、首長国連邦は国内に「何千ものアフガン人家族」を一時的に受け入れ、彼らに「まともな生活」を保障しているという。

7日、国連人道問題調整事務所(OCHA)は、アフガニスタン支援について、年末までに総額6億600万ドル(約670億円)が必要になると、世界に呼び掛けたという。

これからのアフガニスタン

人道支援だけが、世界がタリバンに人権を守るように圧力をかけられる手段である。といって、条件がゆきすぎてタリバンが受け入れなければ、現地の人はいっそう困った事態に陥ってしまう。

実際には、それぞれの立場は異なる。国連の立場、自国に人権や民主主義が(ほとんど)ない国の立場、イスラム教(特にスンニ派)の連帯がある国とない国、そして先進国の民主主義国家。ただし厳密にいえば、米と欧でも異なるし、日本も異なるだろう。

現時点では、タリバンは外国の人道援助には異議を唱えていない。それに、アメリカはタリバンの「元栓」を握っている。資金のことだ。アメリカに存在するアフガニスタンの外貨へのアクセスは閉ざされたままであり、このお金がないと国家が運営できないほどの危機なので、ある程度は交渉はうまくいくのではないかと思われる。

物価は上がり、人々の生活は困り始めている。特に食料を必要としている人たちへの国際的な支援は、怠るべきではないだろう。

参考記事:タリバン、国際資金の枯渇の危機:米ドルで三重苦とは。アフガニスタン国の財源は。「数週間」で破綻国家?