EUは「国」か国際組織か。ブレグジット後のイギリスとEUの確執、やっと決着

初の駐英EU大使となったアルメイダ氏。米国大使、国連大使を経て赴任。ポルトガル人

ロンドンでG7が開催された。この機会に行われた会合で、英国と欧州連合(EU)は、両者の確執となってきた重要な問題に、決着をつけることができた。

それは英国はEU大使に対して、国の大使と同じように完全な外交特権を与えるか、それとも国際組織の大使とみなして遇するか、という問題だった。

英国のEU離脱以降、両者の緊張を高めてきたこの問題は、5月5日やっと終止符をうった。結局、ジョンソン英首相は、EU側に大使としての完全な外交特権を与えることに合意した

英国側の抵抗?

この問題が明らかになったのは、昨年2020年11月、ドミニク・ラーブ英外相が署名した書簡だったという。後に英首相官邸の報道官は、「EUは国際組織ではあるが、それ自体は国ではない」と述べた。

EUのジョセップ・ボレル上級代表(外相に当たる)は、「ジョンソン政権の立場は、EUの具体的な性格や、将来のロンドンとの関係のあり方を反映したものではない」と説明、とても受け入れられるものではないとの立場を表明していた。

この問題は、ブレグジット合意が終わっても解決せず、両者の確執を深めていた。

143カ国にあるEUの代表部は、すべての大使館に与えられる特権と免除を享受している。それなのに、ジョンソン政権が拒否したことで、EU側の不快感はとても大きかった。

ボレルEU外相の側近は「英国がEUに加盟していたときには、一度も疑問をはさんだことがなかったくせに」と皮肉った。また別の関係者は「ロンドンがやっていることは、まったく愚かで、小さくて、馬鹿げている」とコメント。EUの「顔に唾を吐く」という言葉もすら出てきたという。要するに、ほとんど「嫌がらせ」と受けとめられたということだろう。

元首席交渉官であるミシェル・バルニエ氏は、「知的で客観的な解決策」への期待を語っていた。

ただ、この問題が決着する前に、英国政府がEU大使に対して、国の大使に与えているのと同じ特権を剥奪することはなかった。

どう違いが生じるのか

それでは、国の大使と国際組織の大使とはどう違うのか。

大変難しい話で、専門家が1冊の本で説明する必要がある内容だが、おおざっぱなことを以下にわかりやすく書いてみたい(詳細はこちらを参照)。

国の大使の「特権(と免除)」は、1964年に発効した「外交関係に関するウィーン条約」で、明確に定義されている。ほとんどすべての国が署名している。

例を挙げると、大使は逮捕されない、裁判にかけられることがない、大使の住居に入ることができない、関税や税金等を払う必要がない、などがある。

大使の特権に関しては、何百年もの歴史や起源がある。

対して、国際機関の大使に対する特権という考えは、第一次大戦後に国際連盟がうまれてから登場した、比較的新しいものだ。国の大使と異なり、条約で明確に定義されているわけではない。

何が問題かというと、国際機関の数や役職の数が多すぎて定義が難しい。国の大使は基本は二国間関係で、原則的には特権も大使として赴任している国だけだが、国際組織の外交官は世界中の国・地域で特権が生じてしまうことになる可能性がある。そのため世界レベルで特権階級をつくりかねないという批判がある、等が挙げられるという。

そのために、特権を与えるか否かは、「機能」で判断されることになっている。きちんとウイーン条約で特権が定義され保証されている国の大使に比べれば、あいまいで判断の余地を残すといえるだろう。

バッキンガム宮殿で、赴任したばかりのパナマ大使と会うエリザベス女王。パナマ国家元首からの信任状を大使から受け取ったところと思われる。2019年12月
バッキンガム宮殿で、赴任したばかりのパナマ大使と会うエリザベス女王。パナマ国家元首からの信任状を大使から受け取ったところと思われる。2019年12月写真:代表撮影/ロイター/アフロ

トランプ大統領のまね?

今までEU大使という存在に疑問をはさんだのは、トランプ大統領(当時)だけであった。EUの駐米大使であるデビッド・オサリバン氏を大使として排除しようとしていたが、結局あきらめた。

英国が同じ方法をとったことに、オサリバン氏は「驚くべきことだ」と『フィナンシャル・タイムズ』で反応したという。

今回の決着は、「親善とプラグマティズム(現実主義)に基づいている」と共同声明で説明している。

ジョンソン英首相は、トランプ大統領在任中は、(安倍前首相と同じで)ことさらに両者の友情をアピールしてきた。そして、その手法も「トランプ氏のコピー」と皮肉られてきた。

アメリカでバイデン政権が始動した今、ジョンソン首相は、できるだけトランプ氏とは距離を置くようにしているという。

結局、EUを離脱したイギリスは、「アメリカという親亀に習う」という、日本と同じ道をたどっているのかもしれない。