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コロナウイルスでリスクのある薬【後編】:日本薬剤師会が参照としている資料の内容とは/フランスANSM

今井佐緒里欧州/EU・国際関係の研究者、ジャーナリスト、編集者、作家
(写真:アフロ)

【注!】慢性疾患で、医師の処方でイブプロフェンを服用している人は、勝手に中断せずに、必ず医者に相談してください。あるいは、具合が悪くなってきているのに自己判断で飲み続けないで、必ず医者に相談して下さい。これはフランスでも盛んに発せられている注意です!

後編は、いよいよ本丸の「フランス医薬品・保健製品安全庁」である(ANSM。以下、仏安全庁)。

前編のWHOとEMAはこちら。

もともとフランスでは、新型コロナウイルスが発生する前から、イブプロフェンやパラセタモール(別名:アセトアミノフェン)等を含む市販薬は、薬局でカウンターの後ろに起くことを提案してきた。

参照記事:【2続報】コロナウイルスで飲んではいけない薬:フランスのイブプロフェンとアセトアミノフェン使用の指針

処方箋がなくても買えるが、薬剤師を通さないと販売できない方法である。今年の1月から実施されており、そういえば年末に、薬局のレイアウトが変わったと思ったものだ。

3月17日に、仏安全庁は新しい指示を出している。日本薬剤師会が「情報源の参照」としてリンクを張っているのは、そのページである。

以下に全訳する。

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COVID-19:仏安全庁はパラセタモール(アセトアミノフェン)の適切な使用を促進するための対策を講じています。

COVID-19の状況で、仏安全庁は、痛みと発熱(またはどちらか)がある場合、患者や医療従事者は、適切な使用の規則を尊重しながらパラセタモール(アセトアミノフェン)を使うことを優先すべきであることを忘れないようにと伝えます。仏安全庁は、パラセタモール(アセトアミノフェン)が主成分の医薬品を、不必要に処方したり、調剤したり、保管したりしないように警告します。

必要なときに手に入ることを保証するために、2020年3月18日から、薬剤師は、何の症状も現れていない場合、患者一人につきパラセタモール(アセトアミノフェン)は1箱(500 mgまたは1g)のみ、または症状(痛みと熱、あるいはどちらか)が現れている場合には、2箱(500 mgまたは1g)を、処方箋がない患者に販売することができます。 パラセタモール(アセトアミノフェン)、イブプロフェン、およびアスピリンが主成分の薬のネット販売は停止されています。

発熱に対する薬の適切な使用に関する規則を忘れないこと

痛みや発熱の場合、特に感染症の状況では、仏安全庁は、患者や医療従事者にパラセタモール(アセトアミノフェン)の使用を最優先するよう呼びかけています。実際に、抗炎症薬(イブプロフェンを含む)は、感染を隠してしまい、特定の状況で悪化させる潜在的な可能性をもっています。もしあなたが、現在、抗炎症薬またはコルチコステロイドを使って治療を受けている場合、治療を中止せず、必要に応じて医師に連絡してください。

賢明に使用すれば、パラセタモール(アセトアミノフェン)は、安全で効果的な薬です。しかし、過剰服薬した場合、パラセタモール(アセトアミノフェン)は、特定の場合に、もう元に戻れない重篤な肝障害を引き起こす可能性があります。パラセタモール(アセトアミノフェン)の不適切な使用は、フランスにおいて、薬のせいである肝臓移植の一番の原因です。過剰服薬という用語は、不適切な用量の使用、1回あたり、または1日あたりの用量が多すぎること、および服薬の間の最小限の時間が守られていないことを意味します。

パラセタモール(アセトアミノフェン)の適切な使用に関する規則

・できるだけ最も短い期間、最も少ない量を服用すること。

・1回あたりの最大の服薬量、1日の最大の服薬量、開けなければいけない最短の服薬の間隔、および最長で何日間服用していいかの推奨期間(処方箋がない場合は、発熱の場合3日、痛みの場合5日)を尊重すること。

・他の薬でパラセタモール(アセトアミノフェン)が使われていないか確認すること(痛み、発熱、アレルギー、風邪の症状、またはインフルエンザのような病気に使用されています)。

・特別な集団に注意を払うこと(マイナス50kg、軽度から中度の肝不全、重度の腎不全、慢性アルコール依存症など)

薬剤師への情報

・患者が薬局のカウンターでパラセタモール(アセトアミノフェン)を求め、症状がない場合は、1箱(500 mgまたは1g)だけ渡します。 症状(痛みと発熱、あるいはどちらか)がある場合、患者一人あたり、最大2箱(500 mgまたは1g)を渡せます。

・患者がパラセタモール(アセトアミノフェン)の処方箋を渡したら、医師が処方した量を尊重してください。

・処方箋があろうとなかろうと、患者の薬剤記録に、調剤を記録してください。

(訳注:フランスでは、処方箋で薬を買った場合、薬剤師は情報をすべてオンラインで、各患者の国民保険の記録に登録する。フランス中の薬局で、薬剤師は患者の薬情報を見ることができる。ただし、通常の場合、市販の薬では記録されない。今回は、市販薬であっても「パラセタモールの販売を記録しろ」という指示が出ているという意味。また、日本のタイレノールAは1錠300mg。フランスの一般的な薬よりも少ない)。

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これで、薬そのものに関する筆者からの情報発信は、一区切りとしたい(また新たな情報が出れば、お伝えしていきたい)。少しでも役に立てることを願っている。

今後は、この問題をめぐる社会・政治の話に関して、必要に応じて書いていきたいと思っている。次回は、WHOの迷走と、欧米での波紋について書く予定である。

●EU機関「欧州医薬品庁」(EMA)の結論(同年5月):EU機関がコロナ感染症でイブプロフェンのリスクを認める:取説書の内容変更を指示。

欧州/EU・国際関係の研究者、ジャーナリスト、編集者、作家

フランス・パリ在住。追求するテーマは異文明の出会い、平等と自由。EU、国際社会や地政学、文化、各国社会等をテーマに執筆。ソルボンヌ(Paris 3)大学院国際関係・欧州研究学院修士号取得。日本EU学会、日仏政治学会会員。駐日EU代表部公式ウェブマガジン「EU MAG」執筆。前大使のインタビュー記事も担当(〜18年)。編著「ニッポンの評判 世界17カ国レポート」新潮社、欧州の章編著「世界で広がる脱原発」宝島社、他。Association de Presse France-Japon会員。仏の某省関連で働く。出版社の編集者出身。 早大卒。ご連絡 saorit2010あっとhotmail.fr

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