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コロナウイルスにかかったら飲んではいけない薬:フランスの厚生大臣が発表

今井佐緒里欧州/EU・国際関係の研究者、ジャーナリスト、編集者、作家
フランスの厚生・連帯大臣Olivier Veran。神経科医で39歳という若さだ(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

【注!】慢性疾患で、医師の処方でイブプロフェンを服用している人は、勝手に中断せずに、必ず医者に相談してください。あるいは、具合が悪くなってきているのに自己判断で飲み続けないで、必ず医者に相談してください。これはフランスでも盛んに発せられている注意です!

フランスの厚生大臣オリヴィエ・ヴェラン氏が、新型コロナウイルス感染症に関して、イブプロフェンを服用しないほうがよいと推奨した。

イブプロフェンとは、非ステロイド性の抗炎症薬(NSAID)に属する。これは、炎症や痛みなどを抑え、熱を下げるために使われるものだ。しかしこの薬は、既にかかっている感染症を悪化させ、合併症を伴わせる可能性があるのだという。(筆者注:イブプロフェンは市販の薬に使われている)

参照記事:非ステロイド性抗炎症薬 (内服薬・注射剤)の解説(日経メディカル)

厚生大臣は、自身のツイッターで、「!新型コロナウイルス:感染者が(イブプロフェンやコルチゾンなどの)抗炎症薬を服用すると、感染を悪化させる要因になる可能性があります。熱がある場合は、パラセタモール(別名:アセトアミノフェン)を服用してください」「すでに抗炎症薬を服用している場合、または疑わしい場合は、あなたの医師に助言を求めてください」とメッセージを送った。

複数の医者が、発熱のためにイブプロフェンを服用した後、併存疾患がないにもかかわらず、重篤な状態に陥ったコロナウイルスの若い患者の例を挙げているという。

フランスでは、非ステロイド性の抗炎症薬は、「フランス医薬品・保健製品安全庁(ANSM/L'Agence nationale de securite du medicament et des produits de sante)」による警告の後、1月15日以降は薬局で自由に買うことができなくなっている。

同じことは、パラセタモール(アセトアミノフェン)を含む医薬品にも当てはまる。

パラセタモール(アセトアミノフェン)はあまりにも多く服用すると、重大な肝臓障害を引き起こす可能性があるもので、時には致命症になりかねない。

上記の情報は、AFP通信が報じた記事を、ル・モンドが掲載したものである。

◎以下は筆者から

筆者は医学に関して無知なので、この情報を掲載しようかどうか大変迷った。

でも、フランスの厚生大臣がツイッターで直接発信しているし、記事はAFP通信発でル・モンドに掲載されていて、信用できる媒体であると判断した。日本では病気の対処に関して、具体的に何も指示や情報が出ないので(何をやっているのだろうか???)、少しでも役に立てばと思い紹介することにした。

誰だって、熱や咳が続いたら「ただの風邪? 普通のインフルエンザ? (ひどい花粉症?) それともコロナ?」と心配になるが、まずは手近な市販の薬を飲むと思うからだ。でも、筆者もそうなのだが、「風邪薬」「解熱剤」と普通に売られているそれぞれの薬が、実は成分や種類が違うとは、詳しくは知らないものだ。

フランス厚生大臣の発言や記事は、市販薬にも警鐘を鳴らしているのではないかと思う。確かに、一般的には、医者の処方箋がなくても買える薬には、強いものはないと言われる。それに、ただの風邪なら、通常どおりイブプロフェンを服用して問題がない。でも、やはり心配である。コロナウイルスの検査は、そう簡単に受けられそうにない。「他にあるのだから、わざわざ飲まなくても・・・」と思うのは、自然な用心ではないだろうか。

「イブプロフェン」「アセトアミノフェン、またはパラセタモール」+「市販薬」などで検索することもできるが、詳細は、薬の箱や説明書で確認したほうがよいと思う。

ちなみに、原文フランス語の記事には、イブプロフェンやアセトアミノフェン(パラセタモール)を使っている、具体的な市販薬の名前が掲載されていた。フランスでなら誰もが知っていて、家に一つや二つはある市販薬だった。日本とは違うので省略した。

あまり一般には知られていないが、フランスは製薬大国である。それでも国が、リスクの可能性がある薬の服用を警告し、入手を制御している。そしてメディアは、堂々とそういった市販薬の名前を書いているのだから、すごいと思った。日本で同じことは可能だろうか。

最終的に服用する薬の判断は、読者の信頼する医師にゆだねることにする。

【注!】慢性疾患で、医師の処方でイブプロフェンを服用している人は、勝手に中断せずに、必ず医者に相談してください。あるいは、具合が悪くなってきているのに自己判断で飲み続けないで、必ず医者に相談して下さい。これはフランスでも盛んに発せられている注意です!

【3月16日午前の追記】

記事を発表してから、24時間が過ぎました。アクセス数は100万を超え、ツイッターでは秒を上回る速さで記事が拡散されていき、反響のあまりの大きさに驚いています。私もそうですが、いかに人々が具体的な情報を必要としているか、痛感しました。

また、煽るようなリツイートは思ったよりも見られず、とても冷静な印象を受けました。

ツイッターを通じて、沢山の方から意見が出されました。その中で、複数の方が発言している気になったものがありました。真偽と理由が知りたいです。

1,この記事に書いてあることは、コロナに限らずインフルエンザ全般に言えることである。

2,イブプロフェンは、子供や妊婦には投与されないのが一般的である。アセトアミノフェン(パラセタモール)が使われる。

(3,発熱とは、体が体温を上げることで免疫力をあげて、病気に対抗しようとしている現象である。むやみに薬で解熱させるのが良いとは限らない。)

特に1と2は、日本の医療団体や関係者、厚労省、政治家に、真偽と、その理由をはっきりと説明して頂きたいです。この2点が正しいならば、人々の重要な判断材料になると思います。コロナウイルスが他の感染症とどう違うか、どう同じかは、目下世界で調査中ですが、それでも大きく参考になると思います。

既に最低でも100万人の人が、この情報を見ています。季節の変わり目ですし、体調を崩しながらも、できるだけ不要な外出を控えて不安な思いでいる国民に聞こえるように、大きな声で説明してください。それは政治家、厚労省、医療団体(関係者)、そしてメデイアの義務ではないでしょうか。

何卒よろしくお願い致します。

※余談ですが・・・。

ツイッターのコメントで、筆者が一番「むむむむむ」と思ったのは、「セカンドオピニオンが必要」というものでした。

フランスの厚生大臣の発表に対するセカンドオピニオン・・・どの国の厚生大臣に聞くのがいいでしょうか。ほとんど国の信頼度の踏み絵になるなと、感じました(国の信頼度=情報公開度=民主主義度なのかもしれません)。

また「先進国にコロナが広がって、やっとまともな議論ができるようになった」というコメントにも、うなずかせるものがありました。

激しい議論があってもいいから、情報公開をして、人間の知恵を結集して事態改善に向かうことを願っています。

【1続報】コロナウイルスにかかったら飲んではいけない薬:フランス発の詳細な説明

【2続報】コロナウイルスで飲んではいけない薬:フランスのイブプロフェンとアセトアミノフェン使用の指針

EU機関「欧州医薬品庁」(EMA)の結論(同年5月):EU機関がコロナ感染症でイブプロフェンのリスクを認める:取説書の内容変更を指示。

欧州/EU・国際関係の研究者、ジャーナリスト、編集者、作家

フランス・パリ在住。追求するテーマは異文明の出会い、平等と自由。EU、国際社会や地政学、文化、各国社会等をテーマに執筆。ソルボンヌ(Paris 3)大学院国際関係・欧州研究学院修士号取得。日本EU学会、日仏政治学会会員。駐日EU代表部公式ウェブマガジン「EU MAG」執筆。前大使のインタビュー記事も担当(〜18年)。編著「ニッポンの評判 世界17カ国レポート」新潮社、欧州の章編著「世界で広がる脱原発」宝島社、他。Association de Presse France-Japon会員。仏の某省関連で働く。出版社の編集者出身。 早大卒。ご連絡 saorit2010あっとhotmail.fr

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