高橋留美子がフランスのアングレーム国際漫画祭でグランプリを受賞

アングレーム国際漫画祭が開催中の町の様子(2013年。wikipediaより)

「めぞん一刻」「らんま1/2」「うる星やつら」などで知られる漫画家の高橋留美子さん(61)が、フランスで行われている第46回アングレーム国際漫画祭で、1月23日、グランプリを受賞した。

アングレームはフランス南西部にある町で、同市で毎年行われるフェスティバルは「漫画のカンヌ」とも呼ばれている。

高橋留美子さんの作品集(小学館のサイトより)
高橋留美子さんの作品集(小学館のサイトより)

日本人二人目の快挙

日本のマンガはフランスでは大変人気があり、大きなチェーン書店では必ず大きな一角を占めている。人口比で言えば世界で一番売れている国である。

しかし同フェスティバルでは、日本人のグランプリ受賞者は、今まで2015年の大友克洋さんだけだった。高橋さんは二人目となる。また女性も珍しく、2000年に受賞したFlorence Cestacさんに次いで、こちらも二人目である。

「漫画祭」といっても大きな位置を占めているのは、「バンド・デシネ」と呼ばれるフランスで一般的なマンガの形態である。アメコミが、オールカラーで美しく描かれているものと思って頂けると近い。

そんな中での高橋さんの受賞は、とても嬉しいニュースだ。

活躍するドロテ世代

高橋さんの作品は、マンガのみならず、アニメもフランスで放映されて有名になっていた。「めぞん一刻」は、主人公の女性の名前「音無響子」が「ジュリエット」となり、「Juliette je t’aime」(ジュリエット、愛している)というタイトルだった。

高橋さんのアニメは「ドロテ世代」に属している。

ドロテ世代というのは、「クラブ・ドロテ」(1987−97)というエンタメ番組を観て育った世代のことだ。

2月には、「シティ・ハンター」の実写版がフランスで封切りになる。これは、同じくドロテ世代に属するフィリップ・ラショーというフランス人監督が、自ら冴羽リョウに扮して実写化したものだ。

ラショーは1980年生まれの38歳で、小学生から高校生のときにこの番組を観ていたことになる。

ドロテ世代とフランス版「シティ・ハンター」の実写映画の参照記事:シティハンターの実写版がフランスで撮影中。フランスでの反応は?

ちょうど「ドロテ世代」が社会で活躍して、審査員になって賞を与える側になるような時代になったのだと思う。

そんな時代には、マンガの復刻発売も増えている。「めぞん一刻」「らんま1/2」は2017年に、フランスの大手出版社グレナが最初の発売から30年経って復刻版を発売していた。

欧米に存在するけど表現がない

いつも思うのだが、日本のマンガやアニメが、文化的に近いアジアだけではなく、欧米に広く受け入れられたのは、「欧米に現実には存在するのに、文化の違いから表現としてあまり存在しない」ことを表現しているからだと思う。

例えば「めぞん一刻」の主人公の五代裕作。とても優しくて誠実だが、グダグダの優柔不断な男である。こういう内面をもつ男は、実際には欧米にもいるのだが(たくさんいると思う)、物事を明確に言い、自己主張することが当たり前となっている社会において、このような男性にスポットがあたって主人公になることは、めったにない。グダグダ男でももっとしゃべるし、脇役のコミカルな位置づけになってしまいがちである。主人公になるなら、コメディというか、ほとんど自虐に近くなる。

いつも何か言おうとして失敗する五代裕作が主人公となることは、ある意味で奇跡であり、しかも温かい目が注がれる作品なのだから、フランス中の(というより欧米中の)「主張社会だから、わが道を行くフリをして隠しているけど、実は気弱な男性」を喜ばせたと思われる。そして高橋留美子さんの作品は、どのキャラに対しても柔らかい愛情深さで満ちている。それが国や文化を超えて、人々に愛された理由ではないかと思う。

高橋さんのマンガは、全世界トータルで2億冊以上売れている。これから高橋さんの受賞の喜びの声などを聞くのが楽しみだ。