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(5)ブレグジット問題:欧州連合(EU)「一般教書(施政方針)2018」ユンケル委員長演説の全文翻訳

今井佐緒里欧州/EU・国際関係の研究者、ジャーナリスト、編集者、作家
演説の日、ユンケル氏にプレゼントを渡す英国極右政党UKIPのファラージ議員(写真:ロイター/アフロ)

※筆者のミスで、一部の場面で、記事にアクセスできない状態になってしまっていました。申し訳ありませんでした。正しく訂正して、再度アップし直しました。何度も見ている方もいると思いますが、内容は同じです。ご不便・ご迷惑をおかけして、すみませんでした。

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この記事は、(1)(2)(3)(4)の続きです。

欧州連合(EU)「一般教書(施政方針)2018」ユンケル欧州委員会委員長の演説 全文翻訳(1)

(2) 欧州連合(EU)「一般教書(施政方針)2018」ユンケル欧州委員会委員長の演説 全文翻訳:一つのヨーロッパ

(3) 欧州連合(EU)「一般教書(施政方針)2018」ユンケル委員長の演説 全文翻訳:難民問題

(4) 欧州連合(EU)「一般教書(施政方針)2018」ユンケル委員長演説全文翻訳:アフリカとの未来

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ブレグジットについて

(この部分は英語で演説)

ミスター・プレジデント

レディース アンド ジェントルメン、

リーダーシップのためには、強い欧州連合が必要であると私が見ている別の課題は、ブレグジット(英国のEU離脱)です。

私はここで、友人のミシェル・バルニエ(交渉官)が優れた技量で担当している交渉の詳細には立ち入りません。彼は27の加盟国によって何度も繰り返し確認された全会一致の立場に基づいて働いています。しかしながら、これからの月々、ブレグジットについて我々の作業を導くべき3つの原則を、確認させてください。

まず第一に、私たちの連合を去るという英国の決断を、私たちは尊重します。しかし、私たちは深く残念に思っています(英国極右政党UKIPのファラージ議員が座っているほうに向きを変えて「あなた(方)と同じように」と付け加える。公式原稿にはない)。

しかし、英国政府には、欧州連合を離れる人が、加盟国と同じ特権的地位にいることはできないということを、理解するようにお願いします。もしあなたが欧州連合を去るのなら、もちろん、もはや私たちの単一市場の一部でいることはありませんし、あなたが選んだところだけの(訳注:公式原稿にはあるが言わなかった)単一市場の部分にいるということは、ありえません(certainly not)。<場内から拍手>

二番目に、欧州委員会、この欧州議会、そして他の26加盟国は、アイルランドの国境に関しては、常にアイルランドへの忠誠心と連帯を示すでしょう。だからこそ、北アイルランドにおける難しい国境を抑える(prevents a hard border)クリエイティブな解決策を私たちはみつけたいのです。<拍手>

しかし、万が一英国政府が聖金曜日協定(ベルファスト合意)の責任逃れをするのならば、我々は同じように遠慮なく言うでしょう(訳注:演説ではこの部分は「私たちは、聖金曜日協定のすべての要素を擁護するでしょう」と述べた)。

北アイルランドにおける国境をいっそう目に見えるものにする危機にさらしているのは、欧州連合ではありません。ブレグジットです。

三番目に、2019年3月29日の後には、英国は私たちにとって、決して普通の第三国ではありません。英国は、政治、経済、安全保障の面で、常にとても緊密な(close)隣人でありパートナーでしょう。

過去数カ月、英国は、欧州連合で統一が必要な時はいつでも私たちの側にいて、他のすべてのヨーロッパ人と同じ価値観と原則によって運転(運営)されていました。このことが、ブレグジットの後、将来のための野心的な新しいパートナーシップを開発するためのメイ首相の提案を、私が歓迎する理由です。このようなパートナーシップの出発点は、英国と欧州連合との間の自由貿易圏であるべきだというチェッカーズでの声明に、私たちは同意します。

(訳注:チェッカーズでの声明とは、今年7月6日、ロンドン北西にある首相公式別荘「チェッカーズ」に閣僚が集まり、離脱後のEUとの関係について方針を協議、まとめた閣内合意のこと。その後、ブレグジット担当相が辞任、離脱推進派のボリス・ジョンソン外相も辞任した)。

これら3つの原則に基づいて、欧州委員会の交渉担当官たち、主に私の親しい友人ミシェル・バルニエは、合意に達するために、昼夜を問わず働く用意があります。私たちの市民や企業に、英国の離脱が秩序のあるもので、その後安定していることを、私たちは確実にする義務があります。このことの障害になるのは欧州委員会ではないでしょう。私は確信をもってそう言います。(訳注:公式原稿にはあるが、演説では言わなかった)。

続く

(6) 日EU協定とユーロ通貨:欧州連合「一般教書(施政方針)2018」ユンケル委員長演説全翻訳

※ちなみに、上の写真にあるように、英国の極右政党UKIPのナイジェル・ファラージ議員が、演説の日にユンケル委員長に緑の箱のプレゼントを渡したが、中身はユニオンジャック柄のソックスだという。当日、ファラージ議員も履いていたようだ。

こちらの記事とビデオを参照。「愛国的ソックス」(euronews.)

欧州/EU・国際関係の研究者、ジャーナリスト、編集者、作家

フランス・パリ在住。追求するテーマは異文明の出会い、平等と自由。EU、国際社会や地政学、文化、各国社会等をテーマに執筆。ソルボンヌ(Paris 3)大学院国際関係・欧州研究学院修士号取得。日本EU学会、日仏政治学会会員。駐日EU代表部公式ウェブマガジン「EU MAG」執筆。前大使のインタビュー記事も担当(〜18年)。編著「ニッポンの評判 世界17カ国レポート」新潮社、欧州の章編著「世界で広がる脱原発」宝島社、他。Association de Presse France-Japon会員。仏の某省関連で働く。出版社の編集者出身。 早大卒。ご連絡 saorit2010あっとhotmail.fr

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