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(3) 難民問題:欧州連合(EU)「一般教書(施政方針)2018」ユンケル委員長の演説 全文翻訳

今井佐緒里欧州/EU・国際関係の研究者、ジャーナリスト、編集者、作家
演説するユンケル委員長(写真:ロイター/アフロ)

これは、(1)と(2)の続きです。

欧州連合(EU)「一般教書(施政方針)2018」ユンケル欧州委員会委員長の演説 全文翻訳(1)

(2) 欧州連合(EU)「一般教書(施政方針)2018」ユンケル欧州委員会委員長の演説 全文翻訳

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<約束を守り続ける>の続き

(この部分はドイツ語演説)

私は、欧州委員会が失敗(不履行)のすべてに対して、それらが自ずとあったからといって、単独で責任を負うことには同意しません。我々の提案は知られており、提案は採択され、実施されなければなりません。私は、将来避けられずに起こることに対して、人々が委員会だけを非難することも認めません。すべての機関でスケープゴート(生贄の羊)を見つけることができますが、他よりも欧州委員会と欧州議会では確かに少ないです。

非常に幅広いテーマについて、リーダーシップを示すことは不可欠です。これは、安全保障同盟の完成に関しても、同様に当てはまります。ヨーロッパ人は、欧州連合が安全を確保することを期待しています。そのためにこそ、委員会は今にち、1時間以内にオンライン上に置かれたすべてのテロリストのコンテンツを削除するための、新しい規則を提案しています。1時間とは、最大ダメージが引き起こされる決め手になる時間の長さです。

さらに、最近設立された欧州検察庁の権限を、テロ行為への闘いを含ませるために拡大することを我々は提案します。私たちは、テロリストが境界を越えてヨーロッパ全域で訴追されることができるようにする必要があります。テロリストは境界(国境)を知りません。私たちは、協力の欠如によって、自分自身を共犯者にしてはいけないのです。

そのために今にち、同様に我々は、国境(境界)を越えたマネーロンダリングと効果的に戦うことを可能にするための新しい措置を提案しています。

我々は、欧州における自由で公正な選挙を組織することを保護するために、まったく同じように決然とした態度を見せなければなりません。そのため、欧州委員会は今にち、第三国による、さらに私的利益によるすべての工作から、私たちの民主主義の生活を守るための新しい規則も提案しています。なぜなら、私的利益とは、干渉の源泉になりうるからです。

リーダーシップと妥協の精神は、移民に関することのためには、とりわけ特に不可欠であることは明らかです。我々はこの分野でよく耳にすることよりも、もっとたくさんの進歩を成し遂げたのです。

「欧州共通の庇護制度」の改革を目指した欧州委員会の7つの提案のうち、5つが承認されました。我々の努力は実を結びました。なぜなら地中海東部の難民の到着数が97%、地中海中部ルートでは80%減少したからです。欧州連合のオペレーションは、2015年から海上において、69万人以上の命を救うことに貢献しました。

しかしながら加盟国は、各国が自国の領土において負うべき責任と、必要不可欠な相互連帯の間で、公正なバランスを依然としてみつけていません。相互の連帯は、加盟国がもし域内で国境がないシェンゲン圏を維持したいのならば、示さなければいけないものなのです。

私は域内に境界を設けるのに反対ですし、反対し続けます。境界を戻したところは取り除くべきです。もし境界があり続けるのなら、それはヨーロッパとは何か、ヨーロッパは何になりたいのかという点で、容認できない後退となるでしょう。

欧州委員会と、欧州連合理事会の複数の議長国は、たくさんの妥協案の解決策を示しました。私は議長国オーストリアに、移民に関してバランスの取れた改革で、持続可能な解決策を練り上げるために、決定的で不可欠な一歩を踏み出すように勧告しています(訳注:2018年後半はオーストリアが議長国。また現在、中道右派の国民党と、極右の自由党の連立政権)。

新しい船が私たちの海岸に到着するたびに、船上にいる人々のために、その場しのぎの解決策を探し続けることはできません。そのような解決策は不十分です。私たちは現在のために、そして将来のために、連帯が必要です。この連帯は持続可能でなければなりません。

より多くの連帯が必要な場合は、より効果的であるべきです。同じことは、強化された「市民保護メカニズム」を構築することについても当てはまります。

ある国が火事の際には、ヨーロッパ全土が火事なのです。今年の夏の特筆すべきイメージの中で、私は森林火災をあげるだけでなく、炎によって脅かされたスウェーデン人が、救助にやってきたポーランド人消防士に拍手喝采したこともあげるでしょう。Europe at its best. (この文だけ英語で発言:最高のヨーロッパです)

しかし、移民問題に戻りましょう。今にち我々は、欧州国境沿岸警備機関(訳注:FRONTEXのこと。2016年に組織は改編されたが、今でもFRONTEXと呼ばれる)を強化する提案をしています。私たちは境界の縁をより効果的に保護する必要があります。そのために我々は、欧州の予算によって資金を供給されている欧州国境沿岸警備隊の数を、2020年までに1万人に増やすことを提案しています。(訳注:原文ドイツ語からの英語翻訳は「1万人追加して増やす」となっているが、誤訳である)。

我々は同様に、欧州連合庇護機関(EU Agency for Asylum)の発展を強化するための提案をテーブルに乗せています。加盟国は、庇護申請の取り扱いのために、欧州のサポートの強化を必要としています。取り扱いはジュネーブ条約に従って行われなければなりません。

我々が行っている別の提案は、非正規の状態にある移民の帰還を早めることです。欧州委員会は、加盟国の側にいて、この任務に関わっています。

私の願いを繰り返します、緊急の勧告とさえ私は言いたいのですが、欧州連合への法的アクセスのルートを開くことを希望しております。私たちは熟練した(手に職のある、資質のある)移民が必要です。この分野でも同様に、欧州委員会は長い間、提案をテーブルの上に乗せてきました。提案は採択されるべきです。

(4)に続く

(4) 欧州連合(EU)「一般教書(施政方針)2018」ユンケル委員長演説全文翻訳:アフリカとの未来

※後日、微調整を行います。

欧州/EU・国際関係の研究者、ジャーナリスト、編集者、作家

フランス・パリ在住。追求するテーマは異文明の出会い、平等と自由。EU、国際社会や地政学、文化、各国社会等をテーマに執筆。ソルボンヌ(Paris 3)大学院国際関係・欧州研究学院修士号取得。日本EU学会、日仏政治学会会員。駐日EU代表部公式ウェブマガジン「EU MAG」執筆。前大使のインタビュー記事も担当(〜18年)。編著「ニッポンの評判 世界17カ国レポート」新潮社、欧州の章編著「世界で広がる脱原発」宝島社、他。Association de Presse France-Japon会員。仏の某省関連で働く。出版社の編集者出身。 早大卒。ご連絡 saorit2010あっとhotmail.fr

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