EU(欧州連合)27加盟国の駐中国大使が「一帯一路」を厳しく糾弾:中国に利するように設計されている

昨年5月、中国の一帯一路国際会議にEUの一員として出席したツィプリース独経済大臣(写真:ロイター/アフロ)

EU(欧州連合)の27カ国の大使が、中国のシルクロード・プロジェクト、すなわち一帯一路政策を厳しく批判する報告書をまとめた。「自由貿易を妨げ、中国企業に利するように設計されている」と糾弾している。

ドイツのハンデルスブラット紙(Handelsblatt:ドイツの日本経済新聞に当たる)電子版が4月に伝えた。

以下は、重要な部分を翻訳・構成したものである(見出しは筆者)

中国は自国の利益しか考えていない

ハンデルスブラット紙が見た報告書では、2013年に発表されたこの一帯一路計画は、「自由貿易を推進するEUのアジェンダに反するもので、補助金を受けた中国企業に有利に働くようなパワーバランスを推進するものである」と述べた。

この普通ではないレベルで噛みついた報告書は、7月のEUと中国のサミットに向けての準備の一環である。

EU28カ国の中で、ハンガリー大使だけが署名しなかった。

欧州委員会は、中国が威信をかけたこのプロジェクトに対して、EUの一つの共通の立場を築くための戦略文書の作成に取り組んでいる。

報告書において、27人のEU大使達は、中国は自国の利益に合うようにグローバリゼーションを形作ろうと望んでいると書いている。

同時に、この中国のイニシアチブは、過剰生産能力の削減、新たな輸出市場の創出、原材料へのアクセスのセーフガードのような、中国国内の政治目的を追求するものであるとも述べた。

もし中国が、公的調達の透明性に関する欧州の原則や、環境や社会に対する欧州の原則を遵守しないのなら、欧州企業は良好な契約を締結できない可能性があると、彼らは警告している。

知的財産権の侵害と投資条件の不確かさ

あるEU外交官は、中国はWTOが定める知的財産権の保護に関するグレイなエリアにつけこむことがとても上手であり、ルールを破ることにためらいを感じていないと述べた。

「中国の交渉相手にこの点を指摘すると、彼らは常に多くの理解を示すが、現実にはほとんど変わらない」という。

中国は、中国の開発プログラムから直接的に利益を得ている外国企業の正確な情報を、今までのところまだ提供していない。

2014年に400億ドル(約4,5兆円)のシルクロード基金が設立され、ロード沿いの国々に投資することになったが、誰が投資に適格で、そしてどのような条件で資格があるのかは不明である。

ドイツ政府機関が告発

2月にドイツの調査が発表された。これはGTAI(German Trade and Invest)、つまりドイツの政府機関である対外貿易投資のマーケティング機関と、ドイツ商工会議所協会によるものである。

この調査によると、一帯一路政策は、法的枠組みが不確実である政治的に不安定な国々に集中していることが多い。GTAIのマネージング・ディレクターは、過去に中国の国営銀行に資金を供給されたプロジェクトの約80%は、中国の企業に行ってしまっていると述べた。

ハンデルスブラット紙が見たドイツの報告書は、中国は調達に関して透明性に興味がないと記している。

EUが署名を拒否

昨年の5月、ドイツのブリギッテ・ツィプリース経済・エネルギー大臣(当時)がシルクロード・イニシアティブの壮大な始動のために北京に赴いた。彼女とEU高官たちは、中国政府との共同宣言に署名するつもりだった。 しかし現実のものとはならなかった(訳注:ドイツ、フランス、英国、ギリシャ、エストニア、ハンガリー等が拒否し、EUとして署名に至らなかった)。

EU側は「交通インフラにおけるすべての投資家の平等な機会」を保証するべきである、また同様に、国際基準にあった透明性を保証するべきである、のように合意の文言の多くを変更したかった。しかし、中国は改正案を取り入れることを拒否したのだった。

中国はEUの分裂を画策している

EUの当局者は、「中国は個々のEU加盟国との関係を強化して、欧州を分裂させようとしている」と述べた。 中国の投資に依存しているハンガリーやギリシャなどの国々は、過去に、中国からの圧力を受けやすかったことを見せてきたのだ。

今日ではヨーロッパの政治家が中国に行くたびに、シルクロード計画を合同で拡大させようという合意文書に署名するよう、主催者からの圧力を受けている。 「(EUとではなくて)2カ国関係を構築しようとすることは、中国が不当に利用する力の不平等な分配につながる」と、大使たちによる報告書は伝えている。

(以上、記事翻訳はここまで)

アメリカの制裁で、中国がEUに協力を要請

近頃は周知のとおり、アメリカと中国は制裁の応酬をしている。

トランプ大統領は3月22日、「アメリカは中国に巨額の知的財産を盗まれ、過剰な対中貿易赤字を抱えている」として、中国製品に500億ドル相当の制裁関税をかけると発表した。

鉄鋼やアルミと異なり、この措置で中国が受ける影響は甚大だ。

これに対して中国は、自らを「多国間の自由貿易体制の守り手」と位置付け、国際社会にアピールしようとしていた(本気で言っているのだろうか)。

ロイター通信の報道によると、中国商務部(省)の傳自応副部長は4月12日・13日に、欧州主要国(独・仏・英・イタリア・スペイン)の大使と会談し、中国と協力して米国の保護主義に対抗することを要請したという。

ある外交筋は会談について「中国は自信を誇示しているが、内心ではかなり懸念を抱いているように見受けられる。彼らはトランプ大統領の通商問題に関する決意を見くびっていたようだ」と語った。

そして、中国は主な貿易相手が米国と連携する事態にならないか不安に思っていると付け加えた、と伝えている。

この記事はさらに、EUのある外交担当高官は「EUはどちらかの肩を持つつもりはなく、目標とするのは多国間システムを元通り機能させることだ」と強調、とある。

しかし、これは外交官ならではの社交的な方便だったのだろう。

この外交官は、ロイターの記者には中立とか多国間とか麗しいことを答えたが、実際には中国を厳しく糾弾する報告書をEUがまとめていたことを、知っていたに違いない。

中国首相の訪日で、どう出る日本

上記のことで、日本人が考えるべき点は、EUが「欧州連合」として、27カ国が一つにまとまって対処していることだと思う。

今まで日本は、著作権問題などでも中国に苦しめられてきたが、アメリカのような大国でもなく、EUのようにまとまっているわけでもないので、有効な対処ができたとは言えなかった。

アメリカに続いてEUからも、その体制を厳しく糾弾される中国。

中国が内心恐れているという「アメリカと他の主要国との連携」は実現しようとしている。各政権の政策はともかく、アメリカとヨーロッパは、根本的な価値観では一致している。

日本はどう出るのだろうか。

協力的な姿勢を見せているが、大丈夫なのか。

5月3日には、超党派の日中友好議員連盟(会長・林芳正文部科学相)の議員団が、中国共産党の序列3位の栗戦書・常務委員長と会談したという。

あさって8日には、李克強首相が訪日するが、ここで一帯一路の話は出るに違いない。

中国は、「欧米が冷たい今こそビジネスのチャンス」といった思考レベルでは太刀打ちできる相手ではない。

アメリカ、EU、ロシア、アジア各国の外交と地政学的な問題をすべて考えた上での戦略は、日本にあるのだろうか。

参考記事:北朝鮮の狙いは本当にアメリカなのか。中国・ロシアの争いとウクライナと核の傘 安全保障面で、ドイツやヨーロッパはどのように中国に危機感を抱いているかを解説。

「日米豪印戦略対話」は、軍事面だけではなくて、経済面でも動くだろうか。

ロイターの記事は、「日米豪印、一帯一路代替案を検討 米豪首脳会談で協議へ」と2月に報じているが。

ユーラシア大陸全部に、オーストラリア、アメリカ。おそらく今後は北極まで大きな注意が必要になるだろう。

繰り返すが、日本は、平和と繁栄を享受し続けたいのなら、外交大国にならなくてはいけない。

筆者は、日本の教育指針では「外交大国になること」を第一の目標と掲げ、プログラムを見直すことを心から提案したい。

※上記翻訳文は、ハンデルスブラット紙に連絡した上で掲載しています。