20世紀まで、「全戸即日完売」……つまりマンションすべての住戸を一度に売り出して、一気に売り切るのは新規分譲マンションにおける「誉れ」であり、売り方の理想とされた。

 「全戸即日完売するほどの人気物件をつくった」と賞賛されたし、「よく売り切った」と褒められたのである。

 即日完売すれば、短期間に販売センターを閉め、販売チームを他の現場に移すことができる。

 20世紀の後半、首都圏では毎年8万戸以上の新築マンションを発売するのが普通だった。年間で6万戸台では「少ない」とされた。毎年3万戸前後しか発売されていない現在とは状況が大きく違っていた。

 それこそ次から次にマンションが発売されていたので、「全戸即日完売」すれば、販売スタッフのやりくりが楽になる。仕事の効率が高まるので「即日完売」が理想とされたわけだ。

 もうひとつ、販売が長引くマンションは、いずれ値下げする時代だったため、「即日完売」には「一切、値下げをしないで売り切った」という意味もあり、それも不動産業界内で喜ばれた理由だ。

 しかし、21世紀に入り、令和の時代になった現在、新築分譲マンションに「全戸即日完売」をみかけることが減った。特に総戸数が100戸を超える物件が全戸即日完売するケースはまずない。

 代わって、増えているのが「第1期即日完売」。最初の販売は完売する、というケースだ。「第1期即日完売」はするものの、全戸を売り切るのには時間がかかり、完売は1年後か2年後ということが珍しくなくなった。

 「全戸即日完売」が減り、「第1期即日完売」が増える理由と、その影響について解説したい。

いまどき、「全戸即日完売」などさせたら……