IKEAが、家賃99円で1年間住むことができる「Tiny Homes 小さな部屋に、アイデア広がる。」キャンペーンを実施。12月3日までオンラインで入居申し込みを受け付けている。詳細はこの動画で見ることができる。

 ワンルームの所在地は新宿区内の某所ということなので、都心立地となる。新宿区内で繁華街から離れ、単身者賃貸が多く存在する場所でのワンルーム家賃相場は7万円、8万円といったところ。それが月々99円で住むことができるのだから、破格だ。

 しかも、IKEAがコーディネートした家具付きのワンルームなので、狭くても快適に暮らせるはず……夢も広がる企画である。

 ただし、ワンルームの広さは10平米。ここで、ちょっと待ってよ、と言いたくなる。

 一般的なワンルームマンションの場合、最小限の広さは16平米ほど。約4.8坪・おおよそ9畳大の広さだ。

 9畳のうち、キッチン・トイレ・浴室・玄関に3畳程度をとられると、残りは6畳。そこにベッドとテーブルを置いて、なんとか生活することができる。

 これに対して、10平米のワンルームとなると、全体で約3坪=6畳大しかない。世の中に「6畳一間のアパート」は存在する。が、その場合、共同便所に共同の台所を利用する形態で、当たり前だが風呂なしだ。

 しかし、IKEAのワンルームは、10平米なのにキッチン・トイレ・シャワールームが付いている。

 公開されている室内写真や間取り図から、マジックのような仕組みを解読。加えて、これは極めて優良物件ではないかと推測できる理由を解説したい。

ポイントはロフト付きで、壁が多い室内

 今回、キャンペーンの舞台となるワンルームは、10平米でもキッチン・トイレ・シャワールーム付き。それを実現するのは、「ロフト」があるからだろう。

 このワンルームは天井が高く、キッチン・トイレ・シャワールームの上にスペースがあって、可動式はしごで上がることができる。

 このスペースが「ロフト」である。ロフト部分は天井が低く、建築基準法上の小屋裏物置等となる。部屋ではなく物置なのだが、そこにベッドを置いて寝ることは住む人の自由だ。

 つまり、10平米にカウントされないスペースが付いていることで、寝る場所を確保しながら、キッチン・トイレ・シャワールームを設けることができるわけだ。

 加えて、窓が高所にあり、壁面が多いことで、収納家具を置きやすくなっている。IKEAの提案を生かしやすいワンルームになっているわけだ。

 こんなに好都合な物件をよくぞ見つけたものだ、と感心しかけた。が、これは探すよりも条件を満たす建物を新たにつくったほうが早そうだ、と思い至った。

火災、地震に強く、ご近所トラブルも回避?

 都内で10平米だがロフト付き、そして壁面が多いワンルーム。加えて、室内の見栄えがよい……そのようにいくつもの条件を挙げると、物件探しに苦労する。というのか、そんな物件、ありませんといわれるのがオチだ。

 それで、探すより、自前でつくってしまえ、もしくはリノベーションで条件に合うワンルームをつくろう、との考えに至るのは自然の流れと思える。

 ここから先は、仮に、自前の物件をつくったとしたら、という推測の話だ。

 IKEAが新たに集合住宅をつくり、そのなかにキャンペーンで利用するワンルームを設けたとしたら、いくつも長所が生まれる。

 まず、防火性能や耐震性能を上げた建物にできる。

 破格の家賃で1年住むことができる、という恩恵があったとしても、1年の間に火災が起きて燃え広がったり、大地震で簡単に倒壊するような建物だったら、大変だ。そんな脆弱な住まいをキャンペーンの場として利用したことで、IKEAは企業責任が問われかねない。

 その点、ゼロから建物を建設すれば、頑丈な建物で万全の火災対策を施すことができる。

 加えて、自前の物件を新築した場合、他の住戸をIKEAの社員寮などにすることで、ご近所トラブルも回避できる。

 土地を購入し、自前の建物を建設すれば、大きな費用が発生する。しかし、それによって得られる利点も大きいわけだ。

 仮に「IKEAの99円賃貸」が、そのように新築された建物だとすれば、家賃が安いだけでなく、安心して暮らすことができる長所を数多く備えた物件ということになる。

 「家賃99円なんて安すぎる。そんなワンルームに住んでも大丈夫なの?」と心配する人もいるだろう。しかし、世界的な大企業がキャンペーンで不安のある建物を利用するとは考えにくい。

 建物の安心感が大きければ、「家賃99円」のワンルームは、さらに魅力が増す。

 このキャンペーンをきっかけに、IKEAが「狭くても魅力的で安心なワンルーム」の賃貸物件を数多くつくり、家具付き・割安家賃で貸し出してくれれば、言うことなしなのだが。