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これもコロナ禍の影響?1人暮らしのシニアから「コンビニメシに飽きた」の声

櫻井幸雄住宅評論家
品数豊富なコンビニの店内。小分けにされた食品も多く、シニア世帯に喜ばれているが。(写真:アフロ)

 コンビニの利用者はシニアが多い。

 これは各種調査で証明されており、コンビニ利用者は50歳以上が最も多く、中でも多いのは50代の男性だとされている。

 かくいう私も60代なので、コンビニの利用回数は多い。「なぜか、コンビニが好きなんだよね」と、上の写真を見て、はたと気づいた。

 どことなく、子供のころ通った駄菓子屋に似ているのである。入り口は引き戸(昔は手動だったが、今は自動)だし、陳列は色とりどり。麩菓子や酢イカのようなものも売っていたりする。さらに、店の一部で飲食できるところがあるのも、駄菓子屋でラムネを飲んだり、お好み焼きを食べたことを思い出させる。

 最近のことは忘れても、昔のことはよく覚えているシニアが足繁く通ってしまうのは無理もない。

シニア向けの小分け食品が充実するのも近年の傾向

 シニアの来訪が多いからだろう、現在のコンビニは個食メニューが充実している。サバの味噌煮や肉じゃがなど小分けになった食品が豊富にそろえられ、バランスを考えた食事を取りやすい。

 だから、シニアにとって、コンビニが自宅近くにあることは何より重要とされるようになった。

 そもそもシニアは量より質で、好きなものをちょっとだけ食べれば満足できる。夫婦2人暮らしで、それまで食事の支度を受け持っていた女性が「もう、私、食事の支度に飽きた」と言い出したとしても、コンビニが近くにあれば困ることはない。

 シニアのコンビニ依存度が高いことに合わせて、コンビニ業界もシニア好みで、少量パックの食品数を増やしてきた。

 住宅分譲において、「買い物便利」は大きなアピールポイントになる。大規模商業施設や大型スーパーマーケットが近ければ、得がたい長所として強調される。

 それらが近くにない場合、「コンビニが近いですよ」とアピールする。このアピールに対し、子育て中のファミリー世帯は、「コンビニが近くても、たいして助からない」と反応が薄い。生鮮食料品が少ないし、スーパーマーケットより値段が高いからだ。

 しかし、シニア世帯は調理済み食品を少しだけ買うので、「コンビニが近ければ、とりあえず十分」と反応がよい。

 だから、「コンビニ近接」は、住宅分譲において利点の1つとして取り上げられるようになった。

 ところが、この夏、コンビニメシに否定的な意見を立て続けに聞いた。いずれも、70歳以上のシニアの発言。気になる、その中身を報告したい。

品数は多いが、味付けが似ている、という大問題

 ずばり、その意見とは、「コンビニメシは飽きる」というものだ。

 品数は、もちろん豊富だ。が、ベースとなる味というか、味付けの方向性というべきものが共通しており、それに飽きてくるというのだ。別のコンビニに出かけても、なぜか、同じ味がするので、もうコンビニには行かない、というシニアもいた。

 これは、「将来は、コンビニを頼りに生きて行ける」と密かな希望を持っているシニア予備軍にも気になる意見である。

 そもそも70歳以上の男性の多くは、自分で料理をしない。私はまだ60代だが、「ときどき自分で料理をつくり、自分専用の包丁を複数持っている」というと、同世代から驚かれることが多い。60代で料理をする男性は少数派なので、70歳以上で自分で料理をする男となると、なおさら少ないと思われる。

 シニア男性の多くは料理をしたことがなく、なんらかの理由で1人暮らしになると、コンビニ依存度が高くなる。緊急事態宣言下では、コンビニで肴を仕入れ、家飲みせざるを得ない、というケースも多いはずだ。

 そのようにコンビニ依存度の高いシニア男性が、「コンビニメシに飽きた」というのだ。「妻がつくってくれた料理は飽きないのに……」とも。これは、高齢化が進む日本にあっては由々しき事態である。

外食の機会が減ったから、コンビニメシに飽きた?

 会社勤めをしている間、いろいろなレストランや割烹で会食をした経験がある人ほど、コンビニメシに飽きてしまうのかもしれない。いわゆる「舌が肥えている」ことの弊害が考えられるわけだ。

 会社をリタイアした後も、食べ歩きをしていれば、人生の楽しみが広がっただろう。しかし、コロナ禍で外食の機会が減った。昨年の春以降、コンビニメシへの依存度が高まっていたので、人によって「飽き」が訪れたのかもしれない。

 考えてみたら、外食の楽しみは、店によって味が違うことから生じる。それぞれの味を、そのときどきで選ぶことができるから楽しい。今日は、格別に辛い担々麺が食べたい。パラパラではなく、しっとりしたチャーハンを食べたい……個性的な味の外食をときどき挟み込むことで、食生活が充実する。

 だから、コンビニメシの間に適度の外食を挟み込めば、飽きるのを回避できただろう。しかし、コロナ禍で外食がしにくく、外飲みはさらにしにくい現在、コンビニメシの頻度が高まる。

 そのコンビニメシは、万人受けのする味を追求するので、同じような味付けになりがち。結果、「コンビニメシは、もう飽きた」というシニアの声をよく聞くようになったのかもしれない。

 この状況が定着すれば、「コンビニが近い」は、住宅分譲においてアピールできる要因から外れてしまう。それは、シニアにとっても、不動産業界にとっても、そしてコンビニ業界にとっても困ったことであるに違いない。

住宅評論家

年間200物件以上の物件取材を行い、全国の住宅事情に精通。正確な市況分析、わかりやすい解説で定評のある、住宅評論の第一人者。毎日新聞に連載コラムを持ち、テレビ出演も多い。著書多数。

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