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テレワークを見据えて? 郊外で3000万円台半ばまでの新築3LDKが人気沸騰【#コロナとどう暮らす

櫻井幸雄住宅評論家
リーフィアレジデンス橋本のモデルルームは82平米と93平米の広さ。筆者撮影

 緊急事態宣言の解除を受け、6月から順次営業を再開したマンション販売センター。そのなかで、販売センターへの来場者が目に見えて増えているのが、首都圏郊外エリアのマンションだ。

 これまで、マンション市況を牽引してきた都心マンションではなく、東京駅までの所要時間が1時間程度かかる場所で3LDKが3000万円台半ばまでの価格で購入可能という、庶民派マンションが売れ行きが好調なのである。

 千葉県で、柏駅から徒歩15分の「ルピアグランデ柏」は3LDKが2400万円台からの予定価格で、6月6日から1日15組限定の事前案内会を開始。土日はほぼ予約満席の状況が続いている。

 さらに、びっくりするほどの人気になっているのが、神奈川県の橋本駅から徒歩19分(バスを利用すれば、橋本駅からバス3分徒歩3分となる)の「リーフィアレジデンス橋本」。これまで、月に10戸程度の販売を続けていたのが、この6月から売れ行きが倍増。週に5戸以上が契約成立となっている。

 駅から歩いて15分以上で、実質バス利用となるマンションの場合、月に5戸から10戸のペースでじっくり販売を行うのが、現在の一般的売り方。それが、販売担当者も驚く人気ぶりになっているわけだ。

都心から郊外に注目がシフト

 コロナ禍の影響で、「マンションが売れないだろう」と考える人は多い。たしかに、都心の高額マンションは購入検討者が減っている。が、都心マンションの売れ行きがスローダウンしていたのは、昨年から起きていた現象。かなり高額になってしまったので、購入できる人が限られるためだ。そこで、都心マンションは建物が完成した後も数年かけ、ゆっくり販売すればよい、という販売手法に変わっている。

 その一方で、コロナ禍によって売れ行きが落ちるどころか、急に売れ出したのが、郊外マンションである。

 「都心や駅近」では、「狭い」のに「高い」というマンションが目立つようになったが、「郊外」では「広い」のに「安い」マンションが残っている。特に、郊外で、駅から徒歩15分以上のマンションは安く、3LDKが3000万円台半ばまでで購入できる住戸がある。この「3LDKが3000万円台半ばまで」のマンションが人気を上げているのだ。

 購入検討する人の多くは、それまで賃貸暮らしをしていて、そろそろマイホームを買ってもいいかな、と考えていた人たち。漠然とマイホーム購入を考えていたのだが、4月、5月のステイホームでマイホーム購入の気持ちが盛り上がった。

 理由は、「小さな子供たちと一緒に、今の狭い家にいるのはキツイ」と実感したから……。今回のコロナ禍で、家の狭さを痛感し、家賃の支払いと変わらないローン返済で購入できる広いマンションを検討し始めた、という声が多かった。

もう始まった?テレワーク対応の住宅選び

 

 首都圏では、テレワークの広がりで住宅選びの基準が変わる、という予測が広まっている。都心や駅近といった「便利さ」にこだわらず、「住戸の広さ」や「マンション内の環境のよさ」も気にするようになるだろう……その動きが、早くも6月から出始めたようにもみえる。

 「リーフィアレジデンス橋本」の場合、住戸は80平米台の3LDKが中心となり、モデルルームとして公開されている間取りも「82平米の3LDK」と「93平米の4LDK」の2タイプ。このところ70平米前後の3LDKを見続けてきた目には、二回りも三回りも大きくみえる住戸だ。さらに、南南西向きと東南東向きの構成なので、日当たりもよさそうだ。

 広さにゆとりがあるため、約18.1畳というような大型リビングダイニングが実現。オープンキッチン部分を含めれば、ゆうに20畳を超える。収納スペースも多く、ほとんどの3LDKにウォークインクローゼットが2つ付く。また、天井高がリビングで2.5m以上と高く、一部のバルコニーは奥行2.5mというたっぷりサイズとなっている。

 これなら、テレワークで家にいる時間が長くなっても、ストレスなく暮らせそうだ。

 そして、価格は70平米台の3LDKで3000万円台前半、80平米以上の3LDKで3000万円台半ばといったところ。バブルが始まる前の30数年前と変わらない水準だ。

 しかも、30数年前は住宅ローンの金利が5%程度はあったので、3000万円を35年返済のローンで借りたとき、毎月返済額は15万円ほどだった(ボーナス時加算なしで)。それに対し、住宅ローンの金利が恐ろしく低い今は、同条件で、毎月の返済が8万円程度で収まる人が多くなる。管理費・修繕積立金を加えても、毎月の支出は10万円ほど。それなら、家賃より安いというファミリー世帯は多いのではないか。

 といっても、首都圏郊外で、「3LDKが3000万円半ばまで」で購入できる新築マンションは数が減っている。数少ない「郊外」「広い」「安い」マンションに人気が集中しているのだろう。

たまの出勤はリニア中央新幹線で……

 6月以降、人気が上がりだした郊外マンションには、単に「郊外」「広い」「安い」だけではないものも多い。駅から遠いが買い物は便利など、生活しやすいマンションだ。

 「ルピアグランデ柏」の場合、柏駅から徒歩15分だが、「イオンモール柏」に徒歩3分、「MEGAドンキホーテ」に徒歩1分だ。

 「リーフィアレジデンス橋本」も、駅から徒歩19分(もしくはバス3分徒歩3分)だが、マンション建設地の南側には道路を隔てて、スーパーマーケットや飲食店、各種ショップをはじめ、銀行ATMなどがそろう大型ショッピングセンターがある。最寄りの小学校まで徒歩5分だし、子どもを遊ばせる公園も豊富。なにより、マンションの敷地内に保存林がある、という贅沢さも備わっている。

 「リーフィアレジデンス橋本」の場合、最寄りの橋本駅には、リニア中央新幹線の新駅ができる、という将来の楽しみもある。リニア中央新幹線が開通したら、品川駅までの所要時間は10分程度になる見通しだ。それなら、テレワークで週に1度か2度の出勤はリニア中央新幹線で、という暮らし方もできるだろう。

 テレワークが広がれば、郊外で、広いマンションはさらに人気を高めそうだ。

住宅評論家

年間200物件以上の物件取材を行い、全国の住宅事情に精通。正確な市況分析、わかりやすい解説で定評のある、住宅評論の第一人者。毎日新聞に連載コラムを持ち、テレビ出演も多い。著書多数。

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