仕事場にも住居にも使える「SOHO」は分譲タイプが新しい?

超高層マンションの最上階に設けられた分譲ソーホー。圧倒的な見晴らしだ。筆者撮影

 「SOHO(以下、ソーホー)」とは、スモールオフィス・ホームオフィスを略したもので、小さな仕事場兼住居のこと。デザイナーやコンサルタントなど一人で仕事をする人に便利な都心部に設けられる住居タイプを指す。

 これとは別に、米国ニューヨークに「ソーホー」と呼ばれる地域があり、20世紀の後半、多くのクリエーターが古い建物内のロフトと呼ばれるスペース(天井が高く、広い)を借りて、創作の場とした。

 2つの「ソーホー」が入り交じり、「ソーホーとは、大空間を仕事の場兼住居とする形態」と思われがちなのだが、日本のソーホーは大空間ではない。あくまでも、スモールオフィス・ホームオフィス(小さな仕事場兼住居)のことで、住居タイプでいうと1LDK程度の広さのものを指す。

 日本におけるソーホーは、昭和の時代から存在した。都心部で、広めのワンルームをスタジオタイプ、もしくはソーホータイプとした歴史があるからだ。

 そして、今、中央区の2つのマンションに、分譲ソーホーというジャンルが登場している。この分譲ソーホーには、「日本初」といえる要素が複数ある。

 まだ知らない人が多い分譲ソーホーの存在意義と価値についてレポートしたい。

2つの分譲ソーホーは、従来とどこが異なるのか

 2マンションのソーホータイプは約34平米〜44平米の広さがある。

 そのなかに、キッチン・トイレ・洗面所・浴室(一部のソーホーはバスタブがなく、シャワーだけ)が備えられ、2人の生活も十分に可能。子育てもできそうだ。

分譲ソーホーに設けられたキッチン。1人暮らし、2人暮らしには十分なサイズだ。筆者撮影
分譲ソーホーに設けられたキッチン。1人暮らし、2人暮らしには十分なサイズだ。筆者撮影
上の写真のキッチンは、上下のパネルを閉じて、水まわりを隠すことができる。パネルは電動式。筆者撮影
上の写真のキッチンは、上下のパネルを閉じて、水まわりを隠すことができる。パネルは電動式。筆者撮影
大きな部屋とは別に、区分けされたスペースも。ここを寝室にすることもできるだろう。筆者撮影
大きな部屋とは別に、区分けされたスペースも。ここを寝室にすることもできるだろう。筆者撮影

 このソーホーが従来のものとどこが異なるのか。それは、従来のソーホーに欠けていた要素を備えている点にある。

 たとえば、一般の分譲マンション住戸を仕事場兼住居として使おうとした場合、その住所で会社の登記(法人登記)を禁止するケースが広まっている。それは、分譲でも賃貸でも同じ。レジデンスでは会社登記はできないのが、時代の流れだ。

 そうなると、サラリーマンが起業し、会社登記しようと考えた場合、分譲マンションを買ったり、賃貸マンションを借りることがしにくい。築年数が古いマンションであれば、「会社登記不可」のしばりがないので、オフィスを構えやすいが、見栄えは劣る。

 見た目のよい建物にオフィスを構えようとすれば、オフィスビルの1室を選ぶしかない。オフィス用スペースを借りるか購入すれば、その住所で会社登記は可能。ところが、オフィス用スペースでは寝泊まりできないことが多い。宿泊禁止になっているところがあるし、泊まり込む際にはいちいち届け出が必要になることもある。他のオフィスへの盗難防止や火災防止などを考えれば、宿泊を制限するしかないのだろう。

 自分1人で起業し、会社登記でき、好きなだけ泊まって(というか、住み続けても)問題ないし、夜中にコンビニに出かけるのも自由……そんなことを実現させてくれるのが、ソーホーの強み。つまり、レジデンスとオフィスの中間に位置するのが、ソーホーという形態だった。そのことがわかり、2マンションの分譲ソーホーが生まれたのである。

 もっとも、昭和時代のマンションには、会社登記を禁止しておらず、マンションの一室が美容室やネイルサロンになったり、各種事務所になることが珍しくなかった。あえて、ソーホーと銘打たなくても居住者が勝手に事務所使用していた。

 それが、現代では制限されている。マンションにも、オフィスビルにも制限があり、仕事場兼住居を探している人には不自由な状況が生まれた。だから、分譲ソーホーが必要だろう、とそこまで考えたのは、今回の2マンションが日本初と考えられるわけだ。

 

超高層マンションの最上階にソーホー

 分譲ソーホーがあるのは、住友不動産の「DEUX TOURS CANAL&SPA(以下、ドゥ・トゥール)」と「シティタワー銀座東」。分譲ソーホーを設けた2マンションのうち、「ドゥ・トゥール」は地上52階建てのツインタワーマンション。2棟の建物のうち、分譲ソーホーが設けられているのは、EAST棟の上階。47階から52階だ。52階建てEAST棟の最上階部分はすべてソーホーになっている。

 「超高層マンションの最上階という特等席にソーホー住戸のフロアをつくる」ことは、最初から計画されていたのだという。結果、見晴らしのよいソーホーが実現している。その価格は、西向きの約42平米タイプ(48階、49階)で5900万円台などで、中央区内の50階前後に設定される住戸タイプと比べれば、割安に感じられる。

 ちなみに、分譲ソーホーがあるフロアの下、44階から46階には賃貸ソーホーがあり、その家賃設定は約42平米住戸で26万円ほど。その人気は高く、9割以上の賃貸ソーホーが入居済みだ。参考までに、約42平米・5900万円の分譲ソーホーを家賃26万円で賃貸に出した場合、単純利回りで5%を超える。

 一方、「シティタワー銀座東」のソーホーは中層部に設置され、取材時点で販売中だったのは8階から11階のもの。価格は約34平米タイプが4600万円台、44平米タイプが6000万円台などとなっている。

 2マンションともに、分譲ソーホーには専用のエントランスが設けられ、住居用エントランスとは分けられる。が、マンションの共用施設は、住宅居住者と同様に使用することができる。

投資用ローンを組んで購入も可能

 2マンションに設けられた分譲ソーホーは、ローンを組んでの購入も可能だ。投資目的で組むことができるローンも用意される。

 前述したとおり、賃貸ソーホーの人気は高い。それに比べると、分譲ソーホーの進捗具合はゆっくりしている。その理由は、馴染みのない形態で、購入検討者が決断しきれないことが大きいだろう。

 投資目的で購入しようとする人の場合、住宅用ローンを組んで購入しようと考えて、審査が通らなかったケースがあるのかもしれない。

 また、ソーホーを集めたフロアだけの仕様になじめない、という人もいそうだ。

 たとえば、「シティタワー銀座東」の場合、ソーホーを集めたフロアは各階ごみ置き場がない。そもそも、ソーホーから出るごみは事業系ごみとなるので、家庭系ごみと一緒にできず、ソーホー居住者はフロントで事業用のごみ袋を購入して、ごみ出しを行うことになる。

 ごみの問題は、マンション住戸で会社登記ができない理由にもかかわっている、と考えられる。

 昭和時代と異なり、現代のソーホーは、簡単に設定することができない。ごみの問題、ローンの問題など、住宅とは異なる区分けが生じるので、その対応が必要になるからだ。

 いろいろな問題を解決してつくり上げたソーホーは、とりあえず賃貸入居者に人気上々。そこから、投資向けとして有望という特性も生まれる。

 都心部においてソーホーは、間違いなく需要のある形態となっている。

年間200物件以上の物件取材を行い、全国の住宅事情に精通。正確な市況分析、わかりやすい解説で定評のある、住宅評論の第一人者。毎日新聞に連載コラムを持ち、テレビ出演も多い。著書多数。

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