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「タワマンは災害に弱い」は本当か 街中が停電でも煌々と明かりつく物件も

櫻井幸雄住宅評論家
武蔵小杉の超高層マンション高層階では圧倒的な眺望が広がるのだが……。筆者撮影

 台風19号の影響により、武蔵小杉のマンションで受変電設備に支障が出て、停電が発生。それが、タワマンという呼び名が定着しつつある超高層マンションだったため、「タワマンは、台風や地震ですぐに停電する」「停電すると、多くの機能が停止し、生活が破綻する」とされ、「タワマンは災害に弱い」というイメージが生じかねない事態となっている。

 タワマンと呼ばれる超高層マンションには偏った情報が出やすい。以前は、タワマンは大規模修繕の費用が足りず、廃墟への道をたどる、という情報が広がった。これについては、今年6月、

「将来は廃墟に」タワマン・クライシスは本当か。修繕費が足りない報道の内実

という記事で、正確なところを書かせていただいた。

 今回も、タワマンと停電の関係について、あまり知られていない事実を書かせていただきたい。

沖縄の猛烈な台風で停電しないタワマン

 日本で、以前から猛烈な台風に見舞われる場所として知られるのが沖縄県。勢力が強い状態で、しかも速度が遅い(時速7キロメートルというような自転車並みの速度になることもある)ので、台風の度に大きな被害が出る。首都圏の場合、台風は半日程度で通り過ぎることが多いが、沖縄県では3日間暴風雨になることもある。

 その結果、長時間の停電も発生する。夏の沖縄旅行で台風による停電を経験した人なら、その大変さがわかるだろう。非常用電源を持っていないホテルでは、エアコンが止まる。照明もテレビも消える。スマホも電池切れになれば、何もできない。窓も開けられず、蒸し暑い室内で、ただうちわを仰いで耐えるだけとなる。

 その沖縄県の那覇市内で、唯一停電が起きにくい場所が新街区と呼ばれる「おもろまち」のリュークスシティ。そこには2棟の超高層マンションがあり、那覇の繁華街・国際通りから見上げる高台のタワマンとなっている。

 そのタワマンが猛烈な台風でも、停電しにくいのだ。国際通りエリアが停電で真っ暗になった夜も、2棟のタワマンには煌々と明かりがつき、異様なほど。といっても、タワマンだけが停電しないわけではない。リュークスシティ全体が停電しにくくなっているのだ。

 理由は、ゼロからつくり上げた新しい街なので、電線を地下に埋設。電柱がないので、台風で電柱が倒れて断線するようなことがない。だから、エリア全体が停電しにくく、2棟のタワマンは目立つので停電しない街区の象徴になっているわけだ。

武蔵小杉も湾岸エリアも「電線を地下に埋設」

 電線を地下に埋設、といっても、単に地面に穴を掘り、電線を埋めるのではない。鉄筋コンクリート製の丈夫な共同溝のなかに、電話線、上水道などとともに収めて、地下に埋める。これで、台風、地震といった災害の影響を受けにくくしている。

 だったら、全国の電線をすべて埋設すればよさそうだが、これが簡単にはいかない。新たに共同溝を埋める場所が確保しにくいし、莫大な費用も問題になる。現在、電線を直接埋設することでコストを低減する方法も模索されているが、実現までにはまだ時間がかかりそう。今はまだリュークスシティのようにゼロから新しい街区をつくる場所、たとえば再開発エリアなどでないと実現しにくいのが、実情だ。

 この「ゼロから新しい街区をつくる」ことにより電線地中化を実現した場所は、首都圏にもある。都心湾岸エリアの一部や横浜のみなとみらい21地区、幕張新都心、そして武蔵小杉駅周辺も、そのひとつだ。

 これら「ゼロから新しい街区をつくる」場所は、超高層マンション(タワマン)の建設が許可される数少ない地でもある。つまり、タワマンは電線地中化とセットになりやすく、「停電しにくい場所のマンション」という特性をもっているわけだ。

 今回、武蔵小杉では、10数棟あるタワマンのうち1棟で受変電設備に不具合が起きた。その原因究明と対策は、すべてのマンション(タワマン以外にも)で共有されなければならない。

 一方で、タワマンすべてが災害に弱く、停電しやすいわけではない、という事実も知っておいていただきたい。

住宅評論家

年間200物件以上の物件取材を行い、全国の住宅事情に精通。正確な市況分析、わかりやすい解説で定評のある、住宅評論の第一人者。毎日新聞に連載コラムを持ち、テレビ出演も多い。著書多数。

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