京浜急行本線の踏切事故で考えさせられた、現場周辺地域の2つの「複雑事情」

5日に起きた踏切事故で、京浜急行本線は一部運転見合わせに。筆者撮影

 横浜市神奈川区の京浜急行本線踏切で5日、下り快速特急電車がトラックと衝突する事故が起きた。その原因はこれから解明されることになるのだが、事故現場周辺の地域について住宅・不動産の専門家として「複雑事情」だと感じていることが2つあるので、それについて考えてみたい。

 まず、「事故現場周辺は車で通行しにくい場所」という複雑事情がある。人専用のアンダーパスや歩道橋がいくつかあるので、歩行ならばなんとかなる。しかし、車で走る場合、道幅が狭く、踏切を渡らなければならないため、支障が生じやすい。

 今回、事故が起こった京浜急行の神奈川新町駅近くは、京急の引き込み線があるし、JR東海道線、横須賀線、横浜線の線路が並行しており、横断しにくい場所。線路と線路の間に中洲のような住宅街が形成されているが、車で近づこうとすると、「開かずの踏切」になっているケースが多く、地元近くの人でも、車で走りたくないと思っている複雑な場所である。

 そもそも踏切がなければ、このような事故は起きない、との思いもある。踏切がなければ、交通渋滞も起きにくくなるし、カンカンという音もない。

 だから、近年開通した鉄道路線の多くは踏切をつくらない。首都圏でいえば東急田園都市線、小田急多摩線、相鉄いずみ野線、つくばエクスプレス、JR京葉線、横浜市営地下鉄……高架にしたり、地下に潜ったりして、踏切を設けていない。

 他の路線でも、高架や地下化を行って踏切を無くせばよいのだが、莫大な費用がかかるため、そう簡単にはいかないのである。

横浜でイチコクは国道1号線ではない

 二つ目の複雑事情は、事故現場周辺の道路事情。というか、「道路の呼び方事情」というべきものだ。

 事故現場周辺では、イチコク、ニコクと省略形で呼ばれる道路がある。イチコクと呼ばれるのは国道15号線で、ニコクが国道1号線。これが、地元の人以外には分かりにくい。

 地元の人以外に「イチコク」といえば、普通は国道1号線のことだと思うだろう。しかし、それは間違いで、イチコクは国道15号線なのである。ニコクが国道1号線だ。

 なぜ、そのような呼び方をするか。理由を説明するためには、第三京浜の話から始めたほうがわかりやすいだろう。

 東名高速道路の前につくられた高速道路が第三京浜。大磯に住む故・吉田茂首相が国会議事堂から少しでも早く家に帰りたいからつくった、ともいわれるこの道路は、東京と横浜(京浜)を結ぶ三つめの幹線道路であることを示している。

 三つめということは、一つめと二つめがある。

 それが国道15号線と国道1号線で、海側から国道15号線が第一京浜国道、国道1号線が第二京浜国道ということになっている。それぞれは省略されて一京(イチケイ)、二京(ニケイ)とも呼ばれる。ちなみに、第三京浜は三京(サンケイ)だ。

 と、ここまでは問題ない。

 複雑なのは、ここから先だ。

 一京、二京の沿線である横浜や川崎、そして大田区の蒲田あたりでは第一京浜国道のことをイチコク(一国)、第二京浜国道のことをニコク(二国)と呼ぶようになり、今もその呼び名が日常的に使われている。

 このことから、「イチコクに行って」といわれれば、地元の人は戸惑うことなく国道15号線に出る。国道1号線に出ることはない。

 もし、今回、事故の原因に「道を間違えた」ことがあれば、背後に「イチコク・ニコク」の問題があるかもしれない。というのも、事故が起きた神奈川新町駅エリアはイチコクとニコクに挟まれたように立地しているから。あくまでも推測にすぎないのだが、「分かりにくい道路の呼び名」のことも、頭に浮かんだわけだ。

 今回の事故との関連は不明だが、このような「車で通行しにくい場所」や「分かりにくい道路の呼び名」といった複雑事情は、住みやすい街づくり、安全な街づくりの観点から、できる限り解消されるべきだろう。