北海道初の高級賃貸マンションが予想を覆す人気となっている理由

窓の外は原生林!ラ・トゥール札幌伊藤ガーデンのエントランスホールで、筆者撮影

 毎月の家賃が30万円以上。なかには家賃が300万円を超える住戸もある「高級賃貸マンション」が日本にも目立ってきた。

 といっても、それは東京と大阪だけのもの。地方都市には関係ない、とこれまで考えられていた。その理由として挙げられてきたのが、家賃が違いすぎること。地方都市は総じて、家賃水準が低い。札幌や福岡の中心エリアで一人暮らし向けの1DKを探すと5万円前後。中心地から少し離れれば家賃3万円台の物件がみつかる。

 ファミリー向け3LDKは家賃15万円程度のものもあるが、それは主に家賃補助がある転勤族が借りるもの。地元の人は、そんな高額の賃貸など借りない。だから、3LDKの家賃が30万円以上というような高級・高額の賃貸物件など受け入れられるはずがない、と考えられていたわけだ。

 その常識を覆す出来事が北海道の札幌で起きている。それは、今年3月から入居が始まった「ラ・トゥール札幌伊藤ガーデン」が順調に入居者を集めていることだ。

今年3月から入居が始まったラ・トゥール札幌伊藤ガーデン。筆者撮影
今年3月から入居が始まったラ・トゥール札幌伊藤ガーデン。筆者撮影

地元マスコミも最初は驚いた、家賃の高さ

 ラ・トゥールは住友不動産が展開する高級賃貸マンションのシリーズで、「ラ・トゥール札幌伊藤ガーデン」は、北海道におけるラ・トゥールの第1弾。家賃は最も高額の住戸で約156平米が月額85万円ほどと東京都心の高額賃貸に比べると控えめな金額なのだが、地元のテレビ局や新聞社は驚いた。

 そんな高い家賃、誰が払うのか。年間の賃料が1000万円を超えるので、それなら分譲マンションを買ったほうがよいではないか……東京でもよく出る反応なのだが、高級賃貸マンションが存在しなかった北海道では、多くの道民がそれこそ腰を抜かすほどびっくりしたのである。

予想を覆す人気で、部屋が埋まっている

 ところが、フタをあけてみると、今度は運営する住友不動産が「びっくりする」ほどのスピードで契約が進んでいる。

 高級賃貸マンションの場合、建物が完成してから入居者募集を始めるのが普通。入居希望者は実際の建物をみて、検討を行うわけだ。

 そのため、住戸は少しずつ埋まる。毎月、全住戸の10%ずつ契約が進み、1年程度で満室になれば、順調とされる。これに対し、「ラ・トゥール札幌伊藤ガーデン」は今年3月の入居開始から3ヶ月で、約半数の住戸が埋まってしまった。

 これまでの契約者のうち、7割ほどは道内在住者。すでに一戸建てを所有しているが、「冬の雪かきや屋根の雪下ろしをしなくてよい暮らしがしたかった」「一度、札幌の中心部に住んでみたかった」「これまでがんばって生きてきた自分へのごほうびに」という理由で、高級賃貸マンション暮らしを選んでいる。

 そして、「賃貸なので、自分に合わないと思えば解約すればよい」という声もある。まずは、高級マンションの暮らしを体験してみようという人たちが集まっているわけだ。

札幌駅から徒歩8分。北海道の森に囲まれた別天地

 人気の理由は、まず立地のよさ。「ラ・トゥール札幌伊藤ガーデン」の建設地は、JR札幌駅から徒歩8分。便利な場所で、敷地面積約1万4000平米。その大部分が保存林となっている原生林で、「ラ・トゥール札幌伊藤ガーデン」は、この原生林に囲まれたマンションとなる。

 さらに、同マンションの敷地南側は広さ約13.3ヘクタールの北海道大学植物園。つまり、札幌駅から徒歩8分の場所で、北海道の森に囲まれたような暮らしが実現するわけだ。

 さらに、札幌駅周辺の買い物施設や病院が利用できるし、駅から地下道経由で大通りやすすき野方面に行きやすい。そして、マンションの隣接地は京王プラザホテル札幌になっているので、レストラン(優待料金)や、デリバリーサービス(ラ・トゥール札幌伊藤ガーデン限定)も利用しやすい。

北海道では珍しい大型の車寄せやディスポーザー

 立地のよさに加えて、これまで北海道になかった建物の特徴が多くの人を惹きつけている。たとえば、建物入り口にキャノピー(屋根)付きの大型車寄せがある。私は札幌のマンションを20年近く見ているが、このような立派な車寄せはみたことがない。

 エントランスホールは、2層吹き抜けで、内外装に石張り部分が多い。1年365日24時間コンシェルジュが常駐する受付があり、来訪者はすべてこの受付を通らないと中に入れない仕組み。強固なセキュリティが構築されている。

 住戸内設備では、キッチンにディスポーザー(生ゴミ粉砕処理機)と食器洗い乾燥機を標準設置する。じつは、北海道ではディスポーザーの設置率が低い。まだ、珍しい設備だ。

 そのディスポーザーが利用でき、各フロアに24時間ゴミ出し室が設けられている。入居者のゴミ出しはスーパーマーケットやコンビニのレジ袋でもよい。北海道で、公共のゴミ出しは規定の黄色いゴミ袋を購入しなければならないので、この点に驚く人も多い。

 大型の車寄せにディスポーザー、レジ袋の24時間ゴミ出しOKなどがそろっているのは、北海道では「ラ・トゥール札幌伊藤ガーデン」だけ。そう考えると、高級賃貸マンションに住む価値が高まる、ということだろう。

他の地方都市にも、高級賃貸マンションが広まる可能性

 その高級な賃料だが、じつは高級賃貸としてはそれほど法外ではない。地上30階建て全330戸の同マンションには12以上の住戸タイプがあり、2LDK(約59平米)が16万2000円から。約94平米の3LDKタイプでも27万1000円といった家賃設定のものが用意される。

 これだけの立地で、このつくりであれば納得する人がいても不思議はない。

 最初は家賃の低い部屋を借りて、気に入ったら、グレードを上げて再契約という住まい方ができるのも、賃貸ならでは。北海道に初めて登場した高級賃貸マンションは、決して「場違い」でも「的外れ」でもなかったようだ。

 今後、他の地方都市でも、高級賃貸マンション建設の動きが広まるかもしれない。