新幹線で余裕の通勤・通学なら、小田原がお勧めの理由

東海道新幹線のほか複数路線が利用できる小田原駅。シンボルは巨大な提灯。筆者撮影

 「地方都市から東京の大学まで新幹線で通学するのはいかが」というテレビCMが流されたのは、今から30年以上前だったろうか。「新幹線通学とは、贅沢なこった」という八百屋だったか魚屋だったかの店主に、女子大生が説明する。「だけど、おじさん、東京で一人暮らしする場合の部屋代、光熱費などを考えると、新幹線通学のほうが安いのよ。親も安心してくれるし」……当時、多くの人が考えもしなかった提案に、なるほどと納得したことを覚えている。

自由席なら新横浜・東京間は約18分で、1360円

 現在、新幹線で通勤、通学する人は珍しくない。特に、増えているなあと感じるのは新幹線通勤族。その理由として、近距離の新幹線自由席特急料金が特別に安く設定されていることを挙げるべきだろう。

 たとえば、東海道新幹線で新横浜駅から東京駅まで自由席を利用すると、乗車券と新幹線自由席特急料金で1360円。これが、指定席利用だと新横浜駅から東京駅まで通常期の「のぞみ」で2960円。自由席は半額以下だ。所要時間は新横浜駅から東京駅まで約18分。自由席でも座れる可能性が高く、飲食でき、喫煙できるスペースもある。清潔なトイレ・洗面所を利用しやすい……時短と快適さを勘案すると、利用者が増えるのは当然と思われる。

 東海道新幹線は他の新幹線より圧倒的に本数が多く、すべての車両に自由席がついているので、通勤・通学の足として使い勝手がよい。

 実際、利用者が多いため、新横浜駅からの上り電車(停車駅は品川駅と終点・東京駅)では、平日の朝9時まで「のぞみ」と「ひかり」の普通車指定席が開放されている。新幹線自由席特急券や新幹線定期で普通車指定席の空いている席に座ってよいことになっているのだ(「こだま」は、平日のこの時間帯、すべての普通車が自由席)。それだけ、新横浜駅では通勤・通学の利用者が多いということだろう。

新横浜駅は新幹線の使い勝手がよく、平日の朝、通勤利用者も多いのだが……。筆者撮影
新横浜駅は新幹線の使い勝手がよく、平日の朝、通勤利用者も多いのだが……。筆者撮影

新横浜駅では、駅近マンションを購入しにくいのが難点

 「通勤ラッシュの苦痛から解放される新幹線通勤」を割安料金で活用したいなら、新横浜駅周辺に住むのがお勧め。が、新横浜駅周辺に住もうとすると別の問題が生じる。それは、賃貸にしろ、分譲にしろ、価格が高いこと。駅から徒歩5分以内の新築分譲マンション3LDKであれば、7000万円以上、いや8000万円を超える設定になってしまうだろう。が、実際には駅から徒歩5分以内の新築マンションは途絶えている。駅周辺がオフィスゾーンとして成長している現在、マンションよりオフィスビル、商業ビルとして開発されてしまうからだ。

 賃貸物件も新横浜駅から徒歩5分以内では見つけにくい。徒歩10分以上であればみつかるものの、マンション3LDKの家賃が13万円から15万円くらいになってしまう。

 新横浜駅周辺は、駅近の新築マンションを買いたくても買えないし、借りたくても借りることができない場所になっている。また、新横浜駅でJR横浜線から新幹線に乗り換えようとすると、朝の時間帯は通路が混雑しているため、時間がかかるという短所もある。

 では、新幹線で都心まで近く、しかも家賃や分譲価格が安いなど、好ましい条件を備えた場所はないか。探してみると、最良の場所として浮かび上がるのが新横浜駅の隣駅「小田原」だ。

小田原ならば、駅近中古マンションが3000万円台、4000万円台

 小田原駅に停車する新幹線は「こだま」と「ひかり」の一部。東京駅までの所要時間は35分程度だが、「のぞみ」を含むすべての新幹線が停まる新横浜駅よりも利用できる本数が少なく、利便性は劣る。加えて、小田原駅から東京駅までの自由席料金は3220円。新横浜駅よりも距離が離れることもあり、料金はだいぶ高くなる。

 一方で、住宅事情は圧倒的に有利。といっても、賃貸住宅は少ない。小田原駅から徒歩10分以上の2LDKならば7万円程度の月額賃料で借りることができるものの、駅近の賃貸3LDKは物件がみつからない。賃貸住宅を借りるファミリー世帯が少ないのだろう。

 小田原駅周辺は賃借ではなく、購入に有利な場所といえる。

 まず、小田原駅から徒歩5分以内で築浅の中古マンションが複数あり、駅から徒歩5分の場所でこれから販売を開始する新築マンションもある。駅近で物件を探しやすいわけだ。

 その新築マンションは価格未定なのだが、築10年ほどの中古3LDKは3000万円台、4000万円台のものが多い。

 このところ、首都圏では駅から徒歩5分以内のマンション価格が上昇。新横浜駅のように、3LDKが8000万円というような価格設定になっているところが目立つ。「駅近ならば、資産価値が落ちにくい」と盛んに言われ、駅近マンションばかりが人気になった結果だろう。その点、小田原ならば、まだ駅近マンションの価格上昇が穏やかだ。

定期券が割安なのも小田原の利点

 小田原駅から徒歩5分のマンションなら、東京駅まで5分+35分で40分の所要時間となる。しかも、小田原駅から新幹線に乗れば、座席を確保できる可能性が高まる。

 新幹線で東京駅まで通う場合、新幹線定期券は1ヶ月7万2580円(通学用ならば、5万3140円)。片道3220円・往復6440円で定期券1ヶ月が7万2580円というのは割安に感じる。1ヶ月7万2580円の新幹線定期券代を全額、もしくは大半を出してくれる勤め先であれば、「小田原移住・新幹線通勤」はわるくない計画となるだろう。

 小田原駅は、東海道新幹線のほかJR東海道本線と小田急小田原線も利用できるため、新幹線以外の通勤手段があることも利点となる。大雨などで新幹線が止まっても、東京駅や新宿駅から1時間10分~1時間30分程度で帰ることができるからだ。そして、小田原城の城下町という歴史があり、海に近く、山にも近いため、リゾート気分もある。

小田原駅東口を出ると、小田原城が見える。駅から小田原城まで歩いて10分ほどの距離だ。筆者撮影
小田原駅東口を出ると、小田原城が見える。駅から小田原城まで歩いて10分ほどの距離だ。筆者撮影

 最後に残る短所は、新幹線の終電が早いこと。新幹線の下り最終電車は東京駅を22時47分に出る「こだま」。少々飲み足りず、騒ぎ足りずに帰ることになりそうだが、小田原駅着が23時22分なので、むしろ健康的な生活ができてよいかもしれない。

 ちなみに、冒頭で紹介した30年以上前のテレビCMも、小田原を舞台にした話なら理解しやすい。現在の通学定期代5万3140円は、東京で一人暮らしをするより安上がりだし、自宅通学なら親も安心であるに違いないからだ。

年間200物件以上の物件取材を行い、全国の住宅事情に精通。正確な市況分析、わかりやすい解説で定評のある、住宅評論の第一人者。毎日新聞に連載コラムを持ち、テレビ出演も多い。著書多数。

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