「片付け上手」の、人に言えない苦悩とは
片付け上手と片付け下手……2つのタイプがあるとしたら、どちらに憧れるだろうか。いつの世も、評判がよいのは「片付け上手」のほう。特に、家の中にモノがあふれやすい(安く買える商品が多くなったのも原因の一つか)今は、「片付け上手」「捨て上手」の地位が高い。
それどころか、片付け上手でないと幸せになれない、お金持ちになれない、とまで言われてしまう。私のような片付け下手には、肩身の狭い世の中である。
収納スペースを増やしても、ダメな人はダメ
片付けが下手な人は、クローゼットや納戸など収納スペースが多い家に住みたがる。が、私の経験から申し上げると、片付きがよくなるかどうかは収納スペースの量ではない。収納スペースを多くしても、片付け下手はそこにゴミを溜め込むだけ。室内にモノがあふれ出すのは、時間の問題だ。
片付きがよいかわるいか、は住まい手の性格による。
これまで、片付け上手・収納上手と呼ばれる人と会う機会が幾度もあり、実際に家を訪れたことも数回あるのだが、その都度感じるのは、「この人は片付けを面倒で嫌な作業と思っていない」ということ。努力して片付けているわけではないのだ。
それよりも、汚れたモノをそのままにしておくこと、ゴチャゴチャの状態のまま放置しておくことのほうが何倍も苦痛に感じる。そういう性格の持ち主が、片付け上手には多い。
片付け上手は、「そんな自分が嫌」ということも
「散らかった状態が許せない」という性格の人は、極端な話、他人の気持ちを無視しても片付けに走ってしまうことがある。例えば、友達が家に遊びに来て、ケーキとコーヒーを出したとする。時間が経って、テーブルにはあいた皿とコーヒーカップが並ぶ。こういうとき、汚れた食器を洗わなくては気が済まない。いかに話が盛り上がっていても、汚れものが目の前にあるのが許せないのである。
洗って食器棚にしまって、ようやく気持ちが落ち着く。でも、まわりの人はそろそろ帰らなくては、と思ってしまう……。
12個入りのチョコレート箱を前に数人でお茶を飲む。次々にチョコレートに手が伸び、残り6個になったところで、箱を一度壊して、6個入りの箱につくり替えた人もいた。みんながあっけにとられていると、「私も、こんな性格が嫌で嫌でしかたない」と、片付け上手が人に言えない苦悩を告白しだした。
何事も「ほどほど」が肝要か
一分の隙もないほど整理整頓をしてしまう。きちんと整理しなければ気が済まない……これは「だらしない」といわれる性格の対局だが、ときに、本人はつらいと思っていることがあるわけだ。「だらしなく暮らしても、平気」という性格なら、どんなに楽か、と。片付け上手の中には、そんな自分を嫌いながら、片づけをやめられない人もいる。やはり「過ぎたるは及ばざるがごとし」か。
何事もほどほどがよい、ということになるのだが、その「ほどほど」がむずかしい。
冒頭に掲げたのは、その「ほどほど」って、こんな感じでは、と思われる写真だ。
上は、数年前、武蔵小杉の新築マンション販売センターで公開されていたモデルルーム。生活感のないリビングダイニングではなく、現実にはこうなるよね、という姿を見せていた。モノがあふれているが、整理もされており、好感を抱いた見学者が多かった。
ちなみに、私のデスクまわりは年末もギリギリまで仕事に追われて、片付けなし。モノがあふれて、整理もされていない。「ほどほど」とはほど遠いが、まあ、いいかで年を越してしまった。
今年最初の反省点である。