御嶽山:山頂の安全対策を考える

継子岳から見た剣ヶ峰
継子岳から見た剣ヶ峰

昨年9月の噴火後、御嶽山の山頂の安全対策はどのようになっているのだろうか。現在、御嶽山は、岐阜県側が9合目まで、長野県側が8合目まで登れるようになっている。そこで、実際に登って確認してみることにした。濁河登山口から飛騨山頂までは素人の足で約4時間。森林限界を超すと急速に冷え込む。飛騨山頂の五の池のほとりに五の池小屋がある。ニュースで見る剣ヶ峰の様子とは異なり、五の池小屋の周辺には火山灰は全くみあたらない。継子岳まで登ると、乗鞍、北アルプスが一望でき、噴煙をあげる剣ヶ峰を見ることができる。自然の雄大さを感じるとともに、御嶽山が活火山であることを実感させられた。なお、三の池から山頂に向かう登山道は閉鎖されている。

山頂での安全対策

五の池小屋にあるヘルメット
五の池小屋にあるヘルメット

昨年、御嶽山が噴火したときの様子を、五の池小屋管理人の市川典司さんに聞いた。噴火後、五の池小屋に避難してきた人を下山させた。その後、二の池小屋の連絡を受け、二の池小屋から避難してきた人を受入れた。噴石による重症者には応急処置を施し、避難してきた人には食事を提供し、一晩過ごして翌日下山させたとのことだった。この間、消防・警察・DMATなどの支援があったわけではなく、山小屋のスタッフ、避難している人々が互いに助け合っていた。山小屋がなければ被害はもっと大きくなっていた可能性がある。

噴火後、五の池小屋には、ヘルメット150個、ゴーグル、AED、ストレッチャーなどが整備された。山小屋を拠点に山頂の防災対策を、という意見もあるが、その一方で、山小屋の経営は厳しい状況である。昨年の噴火では、五の池小屋には降灰がほとんどなかったにも関わらず、噴火の翌日には噴火警戒区域の設定により、山小屋を閉めなければならなかった。噴火により休業に追い込まれてもその間の補償は何もない。今年は、山開きはしたものの、登山者が減っている。登山者の命を守るうえで重要な役割を果たしている小屋であるからこそ、経営を維持する方策をも考える必要がある。

噴火警戒レベルは噴火後に引き上げられる

御嶽山の噴火以降「噴火警戒レベル」という言葉をよく耳にするようになった。「噴火警戒レベル」とは、火山活動の状況に応じて、災害関係機関・住民がどのように行動するのかを定めた基準である。火山の活動状況に応じ「レベル1(活火山であることに留意)」「レベル2(火口周辺規制)」「レベル3(入山規制)」「レベル4(避難準備)」「レベル5(避難)」の5段階となっており、「レベル5(避難)」が最も切迫性が高く危険な居住地域からの避難が必要となっている。行政が、立ち入り規制などの対応を行うのは警報に相当する「レベル2(火口周辺規制)」からである。噴火警戒レベルは、火山地元の自治体を中心に気象庁・自治体・火山防災専門家たちにより定められており、火山ごとに基準は異なる。昨年の御嶽山噴火では、噴火に先駆け火山性地震が増加していた。気象庁は、 9月11日に「火山の状況に関する解説情報」を発表したもののそのほかのデータに変化がみられなかったことから、噴火警戒レベルはレベル1のままであった。噴火警戒レベルが引き上げられなかったため、災害対応はとられていなかった。

過去の噴火における噴火警戒レベルの推移をみると、今年5月29日の口永良部の噴火では、噴火後に噴火警戒レベルが、レベル3からレベル5に引き上げられた。箱根山についても、6月29日の噴火を受け30日に噴火警戒レベルがレベル2からレベル3へと引き上げられている。噴火後に噴火警戒レベルが引き上げられている。つまり、噴火警戒レベルに基づき災害対応をしていては、噴火による被害を防ぐことは難しい。そのため、噴煙などの噴火現象を確認したらただちに逃げることが重要である。

御嶽山の噴火後、地元の役場には家族から「家族がどこかはわからないけれども山に登っています」との問い合わせが相次いだと聞く。登山届は必ず提出しておく。加えて、登山途中に山小屋に立ち寄り、スタッフと話をして山の様子を把握する。一昔前は山頂に向かう人は必ず山小屋のノートに入山の記録を残していたそうだ。自分が山に入るという情報をさまざまな情報を残すという、そういう些細なことがいざというときいに命を守ることにつながる。