「子どもに魚の骨が刺さった場合、ご飯の丸のみはさせてはいけないのですか?ネットで見るとダメという情報を見かけたのですが、どうすればいいのだろうと思いまして」と先日外来で相談されました。

 たしかに僕が小さい頃も、親から「魚の骨が刺さったらご飯を飲み込め」というアドバイスを受けた記憶があります。確かに飲み込んで事なきを得た(ような気がした)記憶もなくはないです。でも、果たしてそれは正しい処置だったのでしょうか。今回は「魚の骨が刺さった場合(魚骨異物)」についてお話ししたいと思います。

 ちなみに魚ではありませんが、最近ツイッターで「エビフライの尻尾」が話題になりました。どうやらテレビ番組でアンケート調査があり、食べる派が多い県、食べない派の多い県などの話題も出たようです。その中に魚骨と一緒で刺さったら怖い、などの意見もありました。実際にエビの尻尾の一部が扁桃に刺さって病院を受診した例も数例報告されています[1]。

魚骨で受診、10歳以下が94%というデータも

 話題がそれてしまいました。今回は魚骨のお話でしたね。

 のどの異物の中で、実は魚の骨は少なくありません。日本は豊かな海に囲まれていて、川や湖にも恵まれていることから、古くから魚をよく食べる文化が根付いています。日常的に家庭でも魚料理が出るため魚骨がのどに刺さるケースも少なくないのでしょう。具体的にどれくらいの頻度なのでしょうか。

 2006~2011年に大学の耳鼻科で処置をした小児の異物276例のうち、のどの異物は99例で、このうち魚骨が95%を占めていたとの報告があります。魚の種類としてはアジ、ウナギ、サケの順に多かったと報告されています[2]。

 ちなみに、北海道ではカレイ、ホッケが多く、東京ではウナギ、アジが、和歌山ではアジ、タイが多い傾向があるようです。これはすなわちその地域でよく食べられる魚を反映しており、よく食べられる魚ほど、魚骨が刺さるケースも増えるのだと思われます。食文化が反映されているようで興味深いですね。

 また、この研究によると魚骨の異物で受診した患者の年齢は、10歳以下が94%とほとんどを占め、特に1歳に多かったようです。1歳になると様々な食べ物を自分で食べられるようになりますが、魚骨を自分で外すことは難しいため事故が増えるのだと考えられます。

 病院を受診するのどの異物の原因はほとんどが魚の骨で、小さなお子さんが多い、というわけですね。

魚骨が刺さる場所は扁桃腺のあたりが多い

 では、魚骨はどこに刺さることが多いのでしょうか。

 成人も含めて調べたデータでは、扁桃腺のあたりが多いようです。特に子どもは大人より扁桃腺がもともと大きいため、その場所により刺さりやすいとされています[3]。

 また、長さ15mm以下の小さく細い骨(アジやウナギなど)は扁桃腺や舌の後ろ側に刺さりやすい一方、25mm以上の長く硬い骨(サケやブリ、サバなど)はさらに深い食道の入り口に刺さりやすいとの報告もあります[4]。

 その理由として、小さな骨はいったん扁桃を通過できてしまうと、あとは食道を通過して胃の中に落ちてしまうためではないかと考えられています[5]。

子どもは飲み込み困難、よだれから気づかれることも

 魚の骨が刺さると、のどの痛みや嚥下痛があります。でも小さな子の場合、うまく症状を伝えられません。子どもの場合には、魚を食べた後からよだれをだらだら流したり、飲み込みが困難、嘔吐、食欲低下などの症状が、魚骨異物を疑うきっかけになります。

たかが魚の骨ではありません

 もちろん刺さっても中には自然に脱落する場合もあります。症状がなければ数日間経過観察もできます[6]。ただし魚骨が膿瘍を起こしたり、まれに食道穿孔(食道に穴をあけること)を起こしたりすることもあるため、決して「たかが魚の骨」と思ってはいけません。

ご飯の丸のみはしてはいけない

 そこで冒頭の質問に戻ります。骨が刺さった時、どうすればいいのでしょうか。

 冒頭の私に限らず「ご飯の丸のみ」は実際に多くの方が試みられています。ある診療所の報告では、魚の骨が刺さった、と受診した方の7割が、受診前にご飯を丸呑みしていたとしています[7]

 実はこの処置、医学的にはお勧めできません。というのも、結果としてかえって魚の骨が深く刺さってしまう可能性があるためです。さらに深く刺さると、刺さった部位がさらに腫れ、医師の発見が難しくなることもありますので、原則行うべきではありません。

 実際、昔の報告で魚骨ではありませんが、のどの異物に対して、それを除去しようと嚥下動作を繰り返した結果、のどの異物がさらに深く刺さり、出血などの合併症をきたして緊急処置が必要になった症例が報告されています[8]。

 特に食道などが穿孔すると命に関わることもあります。この報告は50年近く前のものですが、既に論文の中で筆者は「丸のみは危険であり、すべきではない。すぐに専門医へ」と指摘しています。

 最近の魚骨異物87例の報告でも、骨の長さの半分くらいしか確認できなかった(半分以上埋没していた)例の多くでご飯を丸呑みしていたとのことです[1]

まずはうがいをし、耳鼻科へ

 魚骨が刺さった場合には、まずは何度もうがいをして、それで取れなければそのまま何もせず病院受診をお勧めします。

 受診する科は耳鼻科をお勧めします。というのも耳鼻科には異物を取り出すための専用の器具(鉗子や場合によっては内視鏡など)があり、耳鼻科の先生はそう言った処置に慣れているためです。なお、子どもの場合には診療に協力が得られなかったり、嘔吐反射が強かったりすることもあり、全身麻酔下で摘出せざるを得ないケースもあります。

しっかり噛むことと「骨なし魚」の活用も

 骨が刺さらないようにするにはどうすればよいのでしょうか。

 一般的に、しっかりと噛むことで骨の存在を認識できるため、誤って飲み込むリスクは減ります。30回以上咀嚼すると長さ10mm以下の破片になり、のどに刺さることもなくなるという報告があります[9]。

 つまりよく噛んで食べる、という食育はこうした事故を防ぐことにもつながります。とはいえ、小さな子どもに「よく噛んで食べる」と教える対策だけでは現実的には不十分です。

 ここ数年、日本人の魚離れが指摘されていますが、その一因として骨の存在が指摘されています。例えば名古屋市内の大学生を対象に魚の嗜好についてアンケート調査したところ、魚を嫌う理由として、魚の種類に限らず「小骨の存在」が最大の理由(イワシで34%、アジで60%など)に挙げられています[9]。

 最近は、あらかじめ手作業とエックス線で小骨を取り除き骨のない状態にした魚(「骨なし魚」「骨取り魚」)も販売されるようになりました。

 骨を気にしないで食べられるという点で人気もあり、魚の消費拡大にもつながるという点で評価されています。食文化への悪影響を懸念する専門家もいるようですが、幼児期に魚の骨が刺さった経験をきっかけに魚嫌いになってしまうことがあります。

 私の家族の話ですが、子どもの頃ウナギの骨がのどに刺さった経験があり、以来30年以上経った今でも、ウナギを見るたびにその時耳鼻科で取ってもらった時の情景を思い出すといいます。

 子どもの時は「骨なし魚」を活用するのはそういったトラウマを避けるのに有効でしょうし、根本的な事故予防にもつながるのでは、とも考えます。

 もちろん「よく噛んで食べる」食育も大切で、合わせて活用できればと思います。

参考文献

1.村上匡.「魚の骨がのどに刺さった」咽頭魚骨異物についての検討. 京都医学会雑誌, 2019. 66(1):p59-63.

2.大原卓.当科における小児異物276症例の検討(2006年〜2011年). 小児耳鼻咽喉科,2014,35(1): p1-11.

3.楢村哲,竹村孝ほか.当科における魚骨異物症例の検討.耳鼻咽喉科・頭頸部外科, 2008.80(2):p149-152.

4.高根宏.魚骨異物の診断と治療(咽頭異物・喉頭異物を中心に).JOHNS,1993, 9(3):p457-462.

5.中溝宗.【お母さんへの回答マニュアル耳鼻咽喉科Q&A 2010】気管・食道編 子どもに魚の骨が刺さったらどうしたらよいでしょうか?ご飯の丸呑みは有効ですか? JOHNS,2010,26(9):p1506-1507.

6.日本小児科学会子どもの生活環境改善委員会.Injury Alert No87.魚骨による下咽頭異物.2020

7.片橋立.診療所における口腔咽頭疾患への対応(診療所における異物症例への対応).口腔・咽頭科,2007,19(2):p161-166.

8.行木英生,et al.特異な異物2症例下咽頭腔外異物及び食道内長期嵌在異物. 日本気管食道科学会会報,1973,24(1):p53-58.

9.佐久間直美,渡邊美咲,駒田格知.口腔・咽頭の異物としての魚骨に関する研究(1).日本食生活額雑誌,2010,21(1):p36-43.